堀込泰行 - エイリアンズ @ ONE PARK FESTIVAL 2021
Norah Jones - Let It Be (Live At The Empire State Building)
GRAPEVINE - さみだれ (Live at Zepp DiverCity 2021.07.08)
スティング:«HELP UKRAINE»(2022)ウクライナのニュース
Gotye - Out Here In The Cold (Official Music Video)
(ちんちくりんNo,76)
かほると別れてから、何ものかの二つの掌が僕の背中に絶えず密着しているような違和感が続いた。その掌は時に僕の背中に沈み込み、僕の心臓が後ろから圧迫されるような辛い悔恨の念を生んだ。あのとき「好き」の二文字を言えなかった。口にしていれば果たしてかほるとは別れずに済んだのだろうか。でも、そうであっても……。そう煩悶していっても、結局は想いを告げられなかった自分の情けなさに嫌気がさすばかりであった。
あるとき、それを解決するには「手術後、かほるが何処でどうしているのか」を確かめれば良いことに気が付いた。龍生書房の七瀬社長か、かほるの実家へ行って彼女の母親である薫りいこか「アルムのおんじ」に直接確かめればいい、どうしてこんな単純なことを、と思ったがそれもまた問題があることに気づき、再び悩みの底に沈んだ。もしかほるがどこにいるにしても元気でいるのなら、それで吹っ切ることは出来よう。しかし、かほるとはもう永遠に会うことが出来ないという、非常に酷な現実が待っているとしたら?僕は一生悔根の念に苛まれ、一生かほるの幻影に向かい合わなければならない。そもそも、僕は「かほるの病気」が、本当は相当悪いものではないかという疑念を抱いていた。だからこそ、真実を知ることに恐怖し、どうしても七瀬社長等に「手術後のかほる」について訊くことができなかったのだった。
龍生書房の新人賞を僕は獲った。それによって仕事も徐々に忙しくなり、結局それを言い訳に僕はその問題から逃げた。裕子にかほるの死を告げられるまで逃げていた。卑怯者の俺。
しかし僕はもう逃げるわけにはいかなかった。裕子と人生を共にしたいと決めたからだ。裕子を好きになって、プロポーズをして、その裕子から彼女がかほるの実の姉であることとかほるの死までも告げられ、果たして過去の幻影が現れるというまるで何かのシニカルジョークの寸劇を演じさせられているような複雑な感情が沸き上がったが、それでも僕は裕子と二人で二人の世界を創り上げていきたかった。
例えるなら、僕は裕子とかほるの幻影との間に立っていた。僕は手を取って裕子と前に進みたいのだが、そうするとかほるの幻影が僕の背中に引き寄せられるように付いて来る。止まれば一定の距離をとってそのままでいるが、それでもその存在が僕を大いに苦しめる。それにそれだといつまでたっても裕子と人生を共にしたいという夢は叶えられなくなるということになる。つまりは最悪の状況に陥ってしまう危険性を孕んでいるということだった。
僕は考えた。時間があれば考え、どうすればその問題を解決できるのかを検討した。そうしている間にも、日に日に濃くなってくるかほるの幻影は「悔恨」を生み出し僕を苦しめた。かほるの幻影はただそこに居るだけなのに、まるで重い荷物を背負わされているように僕は感じた。これなら本当に背負ったまま裕子と手を取り前に進んだ方がずっとましなのではないか?きっとそうであるに違いない……。僕はいつのまにかそう心の中で自問自答していたのであった。
Norah Jones - Let It Be (Live At The Empire State Building)
GRAPEVINE - さみだれ (Live at Zepp DiverCity 2021.07.08)
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Gotye - Out Here In The Cold (Official Music Video)
(ちんちくりんNo,76)
かほると別れてから、何ものかの二つの掌が僕の背中に絶えず密着しているような違和感が続いた。その掌は時に僕の背中に沈み込み、僕の心臓が後ろから圧迫されるような辛い悔恨の念を生んだ。あのとき「好き」の二文字を言えなかった。口にしていれば果たしてかほるとは別れずに済んだのだろうか。でも、そうであっても……。そう煩悶していっても、結局は想いを告げられなかった自分の情けなさに嫌気がさすばかりであった。
あるとき、それを解決するには「手術後、かほるが何処でどうしているのか」を確かめれば良いことに気が付いた。龍生書房の七瀬社長か、かほるの実家へ行って彼女の母親である薫りいこか「アルムのおんじ」に直接確かめればいい、どうしてこんな単純なことを、と思ったがそれもまた問題があることに気づき、再び悩みの底に沈んだ。もしかほるがどこにいるにしても元気でいるのなら、それで吹っ切ることは出来よう。しかし、かほるとはもう永遠に会うことが出来ないという、非常に酷な現実が待っているとしたら?僕は一生悔根の念に苛まれ、一生かほるの幻影に向かい合わなければならない。そもそも、僕は「かほるの病気」が、本当は相当悪いものではないかという疑念を抱いていた。だからこそ、真実を知ることに恐怖し、どうしても七瀬社長等に「手術後のかほる」について訊くことができなかったのだった。
龍生書房の新人賞を僕は獲った。それによって仕事も徐々に忙しくなり、結局それを言い訳に僕はその問題から逃げた。裕子にかほるの死を告げられるまで逃げていた。卑怯者の俺。
しかし僕はもう逃げるわけにはいかなかった。裕子と人生を共にしたいと決めたからだ。裕子を好きになって、プロポーズをして、その裕子から彼女がかほるの実の姉であることとかほるの死までも告げられ、果たして過去の幻影が現れるというまるで何かのシニカルジョークの寸劇を演じさせられているような複雑な感情が沸き上がったが、それでも僕は裕子と二人で二人の世界を創り上げていきたかった。
例えるなら、僕は裕子とかほるの幻影との間に立っていた。僕は手を取って裕子と前に進みたいのだが、そうするとかほるの幻影が僕の背中に引き寄せられるように付いて来る。止まれば一定の距離をとってそのままでいるが、それでもその存在が僕を大いに苦しめる。それにそれだといつまでたっても裕子と人生を共にしたいという夢は叶えられなくなるということになる。つまりは最悪の状況に陥ってしまう危険性を孕んでいるということだった。
僕は考えた。時間があれば考え、どうすればその問題を解決できるのかを検討した。そうしている間にも、日に日に濃くなってくるかほるの幻影は「悔恨」を生み出し僕を苦しめた。かほるの幻影はただそこに居るだけなのに、まるで重い荷物を背負わされているように僕は感じた。これなら本当に背負ったまま裕子と手を取り前に進んだ方がずっとましなのではないか?きっとそうであるに違いない……。僕はいつのまにかそう心の中で自問自答していたのであった。
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