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浜街道は双葉の手前までしか南下できない、その先は「帰還困難区域」。
浪江町の6号線と114号線が交差する辺りは、数年前に町役場や道の駅が新設されて随分にぎやかになってきた。でも、家の土台だけが取り残されていたり、建物はあっても屋根が崩れて人気のない家があったり、まだまだ以前の街の姿は取り戻せていない。
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常福寺
道の駅近くの大きなお寺、浄土真宗本願寺派。
本堂は震災時に柱が割れ、壁が落ち、全体が右に傾いてしまったという。今は修復され、境内もきれいに清掃されているが、本堂には杭が打ち付けられ庫裏にもひと気はない。
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浪江神社
境内に見事な桜の木、つぼみが大きく膨らんでいる。きれいに掃除されているが、ひと気はない。参拝はできるが本殿は封鎖中。
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浄土真宗大谷派 正西寺
袈裟を纏った御住職の姿を見かける。14時46分、街中にサイレンが鳴ると同時に鐘の音が響いた。黙祷。
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苕野神社(くさのじんじゃ)
津波で本殿が流出。2022年8月に再建が決定、今年2月に完成して「安波祭(あんばまつり)」が奉納された。
周辺の土地はきれいにならされているが、民家も林も何もない。近くには請戸小学校が震災遺構として公開されている。
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初發神社(しょはつじんじゃ)
浜街道から浪江中心街に向かう道路脇に真っ赤な鳥居が立っている。内陣の天井には竜が、板壁には唐獅子等が色鮮やかに描かれているという。
参道のまだ小さい桜の木が蕾をふくらませていた。
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真言宗 室生寺派 平出山 摩尼院 大聖寺
胴鐘は国認定重要美術品、アカガシ樹群は県指定天然記念物。他にも境内には数多くの文化財がある。
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白梅が満開。大聖寺の境内は梅の香に包まれ、静かな時間が流れていた。
まだ復興半ばだけれど、浪江町には少しずつ以前の生活が戻ってきている。
震災で私たちは多くの大切なものを失った。でも一方で「あたりまえに」生活できることのありがたさを感じることができた。人は人に支えられて生きているということを知ることができた。がんばりや勇気は「安心」という土台があって初めて生まれるということに気づくことができた。
毎日を安全に過ごせることに感謝し、震災で亡くなられた方々のご冥福を祈り、被害に遭われた地域の一日も早い復興を心から願う。