第18話
勘の鋭いエリカは、
平助の締まりのない顔が
更に緩み切っている変化に気づかない筈はない。
今までの経緯から考えると、
カエデとの仲に何か進展があったのか?
と考えるのが普通である。
そうに違いない
当然暫く様子を見ながら
その原因が何処にあるか探ろう。
そういう結論に達すると
エリカの行動は早い。
ウジウジ考え、
いたずらに時を浪費するのは
エリカの性分には合わないから。
早速、直接確かめることにした。
(あれ?しばらく様子を見るんじゃなかったっけ?
勘の鋭いエリカは、
平助の締まりのない顔が
更に緩み切っている変化に気づかない筈はない。
今までの経緯から考えると、
カエデとの仲に何か進展があったのか?
と考えるのが普通である。
そうに違いない
当然暫く様子を見ながら
その原因が何処にあるか探ろう。
そういう結論に達すると
エリカの行動は早い。
ウジウジ考え、
いたずらに時を浪費するのは
エリカの性分には合わないから。
早速、直接確かめることにした。
(あれ?しばらく様子を見るんじゃなかったっけ?
舌の乾かぬうちに。
まあ、エリカだもんね。
じっとしていられる訳がないか)
現在官邸では
重要な閣僚会議が開かれている。
樋口復興環境大臣が発言している最中なのに、
首相秘書であるエリカが平助の元に歩み寄り
何かのメモを渡した。
そのメモを何気に開く平助。
そこには
『コラ!平助!!
アンタ、カエデと何かあったの?
下心がダダ洩れ!!
垂れ流しまくっているぞ!
何があったか白状しなさい!!
このスケベ!』
と書かれている。
隣の席の田之上官房長官が
「何かあった?」
と小声で聞いてくる。
こんな重要な閣僚会議の最中に
秘書がメモを渡してくるなんて、
余程緊急且つ、
重要な案件が生じたに違いない。
平助は真顔のまま、田之上に小声で返す。
「私の身に一大事が起きたよ。
どうやら最高機密情報が漏れたらしい。」
会議が終わると田之上は
最近様子がおかしい平助にではなく、
エリカに近づき直接聞く。
「エリカさん、総理が最高機密が漏れたって、
とても深刻な顔をして言ってたけど、
あのメモには何が書いてあったの?
総理に何かあったの?
知っている事を教えてください。」
「最高機密?
そう、彼にとっては最高機密よね?
田之上さん、今後の平助総理の
行動と言動に注意を払って。
今の彼は要注意人物よ。」
「???・・・・」
「それから総理の身の回りに何かあったら、
どんな些細な事でも私に知らせてくださいな。
これは私と田之上さんだけの秘密よ。」
妙に色っぽい目で言った。
近い。
田之上は背中にゾクゾクするものを感じた。
エリカは平助の今後のスケジュールを調べた。
5日後、平助は2日間の休暇を予定している。
カエデは・・・・、やはり同日、2日間の休暇。
確信犯だ。
しかし、ふたりが何処でどう過ごすのかまでは
調べられなかった。
普通、首相の休暇は、
関係者の間では公開される。
首相は公人であり、
その動向は総て管理されているべきなのだ。
しかしその日は白紙のまま。
エリカになす術はなかった。
田之上も役務上は女房役なのに
何も嗅ぎつけられなかった。
頻繁に情報交換するエリカと田之上。
しかし無情にも時は流れた。
カエデの誕生日の前日。
平助はエリカに
「明日はドレスアップ用の着替えだけ持って
蓬莱軒の前に集合な。
ドレスはちゃんとリュックの中に入れてくるんだぞ。」
「ドレスなんて、そんな気の利いた服、
持ってないわよ。」
「じゃあ、何でも良いよ。
よそ行きの服な。
でも来るときはジーパンとかジャージとか、
動きやすい服装で来るんだぞ。」
「何、企(たくら)んでいるの?」
「あぁ、それから
来るときは靴もスニーカーとか
カジュアルなやつな。
でも替えのヒールを忘れずに。」
「何か分からないけど、分かった。」
そしてとうとう誕生日当日。
カエデが蓬莱軒に着くと、
既に平助が待っていた。
平助の横には見慣れない自転車。
それも珍しい二人乗りだった。
「おはよう!カエデ。
さあ、これに乗ってサイクリングだ。」
「なによ、このチャリ、二人乗りジャン?
サイクリング?高級ホテルでディナーじゃなかったの?」
「もちろんそうさ。
ホテルまでの道のりを、二人でこのチャリに乗って
ゆっくり過ごそうと思ってね。
いいだろ?」
「えぇ~!
私自転車漕ぐの嫌だ~。
だって疲れるし。
平助が漕ぐんだったらいいけど。」
「そう言うと思った。
根性無しでヘタレのカエデの事だから
その辺は計算済みさ!」
「誰がヘタレよ!
ヘタレはアンタでしょ?
失礼しちゃう!!」
「よく見ろよ。
このチャリは、ただの二人乗りじゃないぞ。
特注の強力電動アシストつきだ!
例えカエデが全く漕がなくとも
快適スイスイだぞ!!」
カエデは唖然として声もでない。
「このチャリ、どうしたの?」
「某自転車メーカーの試作品を借りてきた。
最先端の試作機だってよ。
僕が借りたいって言ったら
『竹藪平助首相が乗るのだったら喜んで』
と言って貸してくれたよ。
これに乗ってホテルまでレッツラGO!!だ!!」
「あんたって・・・(‐‐;
そんな事で職権を使ったの?
まあいいわ。
ちゃんとレンタル料金払うんでしょうね?」
「もちろんさ。
1泊2日で5000円だって。」
「なんか微妙ね。
でもそれなら職権乱用にはならないでしょう。
もちろん総てポケットマネーよね?」
「もちろんさ!このクリーン平助様に任せなさい。
今日のような雲一つない青天の日は、
絶好のサイクリング日和だしな。
それじゃぁ、出発進行ダァ~!」
リュックを背負ったふたりが
滑るように出発した。
それを少し離れたところに停めてあった
あの見慣れた懐かしい
送迎用改造軽自動車の中から
田之上とエリカが見ていた。
実はいくら調査しても埒が明かないコトに
痺れを切らした田之上が、
何と!内閣情報調査室に調査を依頼したのだ。
それってどうなの?
そっちも職権乱用じゃね?
知らね。
颯爽と走るふたりのチャリ。
その後ろをつけてくる軽。
何故かどちらも楽し気だった。
それにしても、エリカはともかく、
田之上官房長官までが
首相の休暇に合わせて休んで良いの?
それも知らね。
途中、昼食など
何度か休みながら夕方前には
横浜の高級ベイホテルに到着した。
一休みした後、
ドレスアップした平助とカエデ。
ホテルの最上階のレストランに入る。
ボーイに誘(いざな)われついた席。
どうした訳か隣の席には
田之上とエリカが居た。
凍り付く平助とカエデ。
「なんで?」
「どういたしまして。」
「・・・・・・。」
声が出ない二人。
でも、ここで「どういたしまして」って何?
「調査に手間取りましたよ。
後程、残りの仲間も到着します。
盛大にやりましょう!」
もう田之上の手にはワイングラスがあった。
「夜景がきれいね。」
エリカが二人を見つめ、
抜け駆けと置いてけぼりにされた恨みから、
皮肉気味にポツリと云う。
「残りの仲間?
何で君たちが合流する?
今日は僕とカエデのプライベート誕生会だぞ?」
「それだけ?
その後は?
それだけでは済まないでしょ?」
「皆で二人の将来を祝うために集まるのよ」
「でもエリカは・・・・」
「私は良いの。
私、考えちゃった。
平助は善良だし真面目だけど、
スケベだし、短足だし、サルマタケだし。
それに比べ、田之上さんは
男臭いけど足が長いし
仕事早いし、厳(いか)つい顔の割に意外と優しいし。
だから田之上さんと付き合おうかと思っているの。」
それを聞いた田之上が
「えっ!ホント?」
嬉しそうな、素っ頓狂な声を出した。
かくして平助・カエデ、
田之上・エリカのカップルが誕生した。
間もなく官邸メンバーズが集結し
カエデの誕生会が、
突如カップルが二人誕生した
『カップル誕生会』に変更された。
これで良いのか?
これで良いのだ。
最終回
アメリカが貿易不均衡問題で
全面的に非を認めTPPに加盟する準備に入った。
それはTPP加盟条件を総て満たし、
国内産業を条約批准に適合できる構造に
変革する事を意味する。
アメリカでは建国以来、
最大の産業革命が起き始めていた。
それと同時に、
それまでアメリカのみならず、
全世界を陰で操り支配し続けていた
FRB(連邦準備制度理事会=アメリカ中央銀行)
をはじめとするアメリカユダヤ資本や、
フリーメーソンの支配層が
急速に力を失い始めるキッカケとなった。
日本の直接民主制の動向に刺激を受け、
アメリカ民主党も共和党も、無党派層までの間で
政治見直し運動が活発化された。
それにより、不正や無駄、
理に適わない政策が見直され、
それらを執行してきた機関が粛清される。
まず手始めに、
世界中の外交工作に(常に)失敗し続けてきた
CIAが解体され、
支配層の意向が反映される手段が失われる。
それにより民意が
ストレートに生かされるようになった。
それにより対立していた白人と有色人種、
それぞれの融和が図られ、
次々と問題解決の糸口が見いだされ
実行に移された。
ただ、アメリカにはイギリスに次ぐ
議会制民主主義の原点としての自負があり、
ネット直接民主制への移行は考えられない。
それがアメリカのプライドだった。
アメリカのTPP加入は、
全世界の行く末を大きく変え得る大事(おおごと)である。
TPPそのものの出発点は
単なるブロック貿易圏の構築に過ぎなかったが、
その組織を活かし、発展させることにより、
EUを凌駕する一大経済圏となり、
しかもEUに匹敵する強固な国家融合組織へと
発展させる可能性が見えてきた。
現に今、インドとイギリスを加盟させ、
将来的にはEUとも連携を目指し
機能不全になった国連に取って代わる
国際連合組織になりつつある。
前回少し触れているが
中国、ロシアは蚊帳の外にいたままでいた。
それは当然の措置であり、
彼らが変わることが無い限り、
永遠に加盟はあり得ない。
傲慢で自分勝手で
悪行の限りを尽くし、
旧共産社会を目指す国でありながら、
常に全世界に不平等と理不尽を
まき散らした国と民族。
あれから6年以上経過した今でも、
世界中から嫌われ、
襲撃や暴行のターゲットにされ続けている。
そんな彼らに世界は
冷ややかな目を向け、
「自業自得でしょ」
としか思われていない。
動物以下の欲に支配された彼らを
尊敬し、交流を深めようとは
誰も思わなかった。
可哀そうだが仕方ない。
国を治めるのも
国と国が交流するのも
信用と徳と親愛が無ければ
成立しない。
そんな簡単な事を見落としてきた人々には
今後明るい未来は存在しないのだ。
では何故竹藪平助内閣が成功したのか?
それは官邸チームがまとまり、
お互いを信用し、連携し、
共通の目標に一丸となったから。
誰か秀でた一部の人が
目を見張るような仕事をしたからではない。
6年前の政変以前は
政界も財界も官僚も、
お互いがライバルであり、敵であり、
足を引っ張るのが当たり前の世界だった。
自分の事しか考えない人間しか
上へ上ることができず、
従って『ろくでもない』悪党しか
支配層に登れなかったのだ。
後日談
平助とカエデ、
田之上とエリカがめでたく結ばれ、
一年の任期を全うした。
日本のネット直接民主制は
全世界に好意的に認知され、
平助は双肩にかかっていた責任を
何とか果たすことができた。
あの時平助とカエデが乗った
二人乗りの電動アシスト自転車は
その後、大いに気にいられ、
レンタルから買い取りに移行した。
11万円とこちらも微妙な値段だったが、
二人の大切な思い出には違いない。
そして平助は総理大臣満了後、
元のメンマ製造会社に戻り、
パートの準社員から
功績を買われ、正社員に昇格となった。
田之上はそれまで勤めていた宅配会社から独立、
自ら新たに配送会社を設立し。
カエデと二人、二人三脚で
会社経営に邁進した。
その他の官邸チームのメンバーたちは、
今でも定期的に集まり
親交を温め合っている。
因みに平助とカエデ。
今でも蓬莱軒の2階に住み、
≪スーパー激安≫まで
ふたりで仲良く買い物に出かける姿が見られる。
あの二人乗り用改造電動ママチャリ
【流星号 2号機】で。
おわり
現在官邸では
重要な閣僚会議が開かれている。
樋口復興環境大臣が発言している最中なのに、
首相秘書であるエリカが平助の元に歩み寄り
何かのメモを渡した。
そのメモを何気に開く平助。
そこには
『コラ!平助!!
アンタ、カエデと何かあったの?
下心がダダ洩れ!!
垂れ流しまくっているぞ!
何があったか白状しなさい!!
このスケベ!』
と書かれている。
隣の席の田之上官房長官が
「何かあった?」
と小声で聞いてくる。
こんな重要な閣僚会議の最中に
秘書がメモを渡してくるなんて、
余程緊急且つ、
重要な案件が生じたに違いない。
平助は真顔のまま、田之上に小声で返す。
「私の身に一大事が起きたよ。
どうやら最高機密情報が漏れたらしい。」
会議が終わると田之上は
最近様子がおかしい平助にではなく、
エリカに近づき直接聞く。
「エリカさん、総理が最高機密が漏れたって、
とても深刻な顔をして言ってたけど、
あのメモには何が書いてあったの?
総理に何かあったの?
知っている事を教えてください。」
「最高機密?
そう、彼にとっては最高機密よね?
田之上さん、今後の平助総理の
行動と言動に注意を払って。
今の彼は要注意人物よ。」
「???・・・・」
「それから総理の身の回りに何かあったら、
どんな些細な事でも私に知らせてくださいな。
これは私と田之上さんだけの秘密よ。」
妙に色っぽい目で言った。
近い。
田之上は背中にゾクゾクするものを感じた。
エリカは平助の今後のスケジュールを調べた。
5日後、平助は2日間の休暇を予定している。
カエデは・・・・、やはり同日、2日間の休暇。
確信犯だ。
しかし、ふたりが何処でどう過ごすのかまでは
調べられなかった。
普通、首相の休暇は、
関係者の間では公開される。
首相は公人であり、
その動向は総て管理されているべきなのだ。
しかしその日は白紙のまま。
エリカになす術はなかった。
田之上も役務上は女房役なのに
何も嗅ぎつけられなかった。
頻繁に情報交換するエリカと田之上。
しかし無情にも時は流れた。
カエデの誕生日の前日。
平助はエリカに
「明日はドレスアップ用の着替えだけ持って
蓬莱軒の前に集合な。
ドレスはちゃんとリュックの中に入れてくるんだぞ。」
「ドレスなんて、そんな気の利いた服、
持ってないわよ。」
「じゃあ、何でも良いよ。
よそ行きの服な。
でも来るときはジーパンとかジャージとか、
動きやすい服装で来るんだぞ。」
「何、企(たくら)んでいるの?」
「あぁ、それから
来るときは靴もスニーカーとか
カジュアルなやつな。
でも替えのヒールを忘れずに。」
「何か分からないけど、分かった。」
そしてとうとう誕生日当日。
カエデが蓬莱軒に着くと、
既に平助が待っていた。
平助の横には見慣れない自転車。
それも珍しい二人乗りだった。
「おはよう!カエデ。
さあ、これに乗ってサイクリングだ。」
「なによ、このチャリ、二人乗りジャン?
サイクリング?高級ホテルでディナーじゃなかったの?」
「もちろんそうさ。
ホテルまでの道のりを、二人でこのチャリに乗って
ゆっくり過ごそうと思ってね。
いいだろ?」
「えぇ~!
私自転車漕ぐの嫌だ~。
だって疲れるし。
平助が漕ぐんだったらいいけど。」
「そう言うと思った。
根性無しでヘタレのカエデの事だから
その辺は計算済みさ!」
「誰がヘタレよ!
ヘタレはアンタでしょ?
失礼しちゃう!!」
「よく見ろよ。
このチャリは、ただの二人乗りじゃないぞ。
特注の強力電動アシストつきだ!
例えカエデが全く漕がなくとも
快適スイスイだぞ!!」
カエデは唖然として声もでない。
「このチャリ、どうしたの?」
「某自転車メーカーの試作品を借りてきた。
最先端の試作機だってよ。
僕が借りたいって言ったら
『竹藪平助首相が乗るのだったら喜んで』
と言って貸してくれたよ。
これに乗ってホテルまでレッツラGO!!だ!!」
「あんたって・・・(‐‐;
そんな事で職権を使ったの?
まあいいわ。
ちゃんとレンタル料金払うんでしょうね?」
「もちろんさ。
1泊2日で5000円だって。」
「なんか微妙ね。
でもそれなら職権乱用にはならないでしょう。
もちろん総てポケットマネーよね?」
「もちろんさ!このクリーン平助様に任せなさい。
今日のような雲一つない青天の日は、
絶好のサイクリング日和だしな。
それじゃぁ、出発進行ダァ~!」
リュックを背負ったふたりが
滑るように出発した。
それを少し離れたところに停めてあった
あの見慣れた懐かしい
送迎用改造軽自動車の中から
田之上とエリカが見ていた。
実はいくら調査しても埒が明かないコトに
痺れを切らした田之上が、
何と!内閣情報調査室に調査を依頼したのだ。
それってどうなの?
そっちも職権乱用じゃね?
知らね。
颯爽と走るふたりのチャリ。
その後ろをつけてくる軽。
何故かどちらも楽し気だった。
それにしても、エリカはともかく、
田之上官房長官までが
首相の休暇に合わせて休んで良いの?
それも知らね。
途中、昼食など
何度か休みながら夕方前には
横浜の高級ベイホテルに到着した。
一休みした後、
ドレスアップした平助とカエデ。
ホテルの最上階のレストランに入る。
ボーイに誘(いざな)われついた席。
どうした訳か隣の席には
田之上とエリカが居た。
凍り付く平助とカエデ。
「なんで?」
「どういたしまして。」
「・・・・・・。」
声が出ない二人。
でも、ここで「どういたしまして」って何?
「調査に手間取りましたよ。
後程、残りの仲間も到着します。
盛大にやりましょう!」
もう田之上の手にはワイングラスがあった。
「夜景がきれいね。」
エリカが二人を見つめ、
抜け駆けと置いてけぼりにされた恨みから、
皮肉気味にポツリと云う。
「残りの仲間?
何で君たちが合流する?
今日は僕とカエデのプライベート誕生会だぞ?」
「それだけ?
その後は?
それだけでは済まないでしょ?」
「皆で二人の将来を祝うために集まるのよ」
「でもエリカは・・・・」
「私は良いの。
私、考えちゃった。
平助は善良だし真面目だけど、
スケベだし、短足だし、サルマタケだし。
それに比べ、田之上さんは
男臭いけど足が長いし
仕事早いし、厳(いか)つい顔の割に意外と優しいし。
だから田之上さんと付き合おうかと思っているの。」
それを聞いた田之上が
「えっ!ホント?」
嬉しそうな、素っ頓狂な声を出した。
かくして平助・カエデ、
田之上・エリカのカップルが誕生した。
間もなく官邸メンバーズが集結し
カエデの誕生会が、
突如カップルが二人誕生した
『カップル誕生会』に変更された。
これで良いのか?
これで良いのだ。
最終回
アメリカが貿易不均衡問題で
全面的に非を認めTPPに加盟する準備に入った。
それはTPP加盟条件を総て満たし、
国内産業を条約批准に適合できる構造に
変革する事を意味する。
アメリカでは建国以来、
最大の産業革命が起き始めていた。
それと同時に、
それまでアメリカのみならず、
全世界を陰で操り支配し続けていた
FRB(連邦準備制度理事会=アメリカ中央銀行)
をはじめとするアメリカユダヤ資本や、
フリーメーソンの支配層が
急速に力を失い始めるキッカケとなった。
日本の直接民主制の動向に刺激を受け、
アメリカ民主党も共和党も、無党派層までの間で
政治見直し運動が活発化された。
それにより、不正や無駄、
理に適わない政策が見直され、
それらを執行してきた機関が粛清される。
まず手始めに、
世界中の外交工作に(常に)失敗し続けてきた
CIAが解体され、
支配層の意向が反映される手段が失われる。
それにより民意が
ストレートに生かされるようになった。
それにより対立していた白人と有色人種、
それぞれの融和が図られ、
次々と問題解決の糸口が見いだされ
実行に移された。
ただ、アメリカにはイギリスに次ぐ
議会制民主主義の原点としての自負があり、
ネット直接民主制への移行は考えられない。
それがアメリカのプライドだった。
アメリカのTPP加入は、
全世界の行く末を大きく変え得る大事(おおごと)である。
TPPそのものの出発点は
単なるブロック貿易圏の構築に過ぎなかったが、
その組織を活かし、発展させることにより、
EUを凌駕する一大経済圏となり、
しかもEUに匹敵する強固な国家融合組織へと
発展させる可能性が見えてきた。
現に今、インドとイギリスを加盟させ、
将来的にはEUとも連携を目指し
機能不全になった国連に取って代わる
国際連合組織になりつつある。
前回少し触れているが
中国、ロシアは蚊帳の外にいたままでいた。
それは当然の措置であり、
彼らが変わることが無い限り、
永遠に加盟はあり得ない。
傲慢で自分勝手で
悪行の限りを尽くし、
旧共産社会を目指す国でありながら、
常に全世界に不平等と理不尽を
まき散らした国と民族。
あれから6年以上経過した今でも、
世界中から嫌われ、
襲撃や暴行のターゲットにされ続けている。
そんな彼らに世界は
冷ややかな目を向け、
「自業自得でしょ」
としか思われていない。
動物以下の欲に支配された彼らを
尊敬し、交流を深めようとは
誰も思わなかった。
可哀そうだが仕方ない。
国を治めるのも
国と国が交流するのも
信用と徳と親愛が無ければ
成立しない。
そんな簡単な事を見落としてきた人々には
今後明るい未来は存在しないのだ。
では何故竹藪平助内閣が成功したのか?
それは官邸チームがまとまり、
お互いを信用し、連携し、
共通の目標に一丸となったから。
誰か秀でた一部の人が
目を見張るような仕事をしたからではない。
6年前の政変以前は
政界も財界も官僚も、
お互いがライバルであり、敵であり、
足を引っ張るのが当たり前の世界だった。
自分の事しか考えない人間しか
上へ上ることができず、
従って『ろくでもない』悪党しか
支配層に登れなかったのだ。
後日談
平助とカエデ、
田之上とエリカがめでたく結ばれ、
一年の任期を全うした。
日本のネット直接民主制は
全世界に好意的に認知され、
平助は双肩にかかっていた責任を
何とか果たすことができた。
あの時平助とカエデが乗った
二人乗りの電動アシスト自転車は
その後、大いに気にいられ、
レンタルから買い取りに移行した。
11万円とこちらも微妙な値段だったが、
二人の大切な思い出には違いない。
そして平助は総理大臣満了後、
元のメンマ製造会社に戻り、
パートの準社員から
功績を買われ、正社員に昇格となった。
田之上はそれまで勤めていた宅配会社から独立、
自ら新たに配送会社を設立し。
カエデと二人、二人三脚で
会社経営に邁進した。
その他の官邸チームのメンバーたちは、
今でも定期的に集まり
親交を温め合っている。
因みに平助とカエデ。
今でも蓬莱軒の2階に住み、
≪スーパー激安≫まで
ふたりで仲良く買い物に出かける姿が見られる。
あの二人乗り用改造電動ママチャリ
【流星号 2号機】で。
おわり