電子コミック販売サイト「漫画onWeb」や
電子書籍取次サービス「電書バト」などを運営する漫画家の佐藤秀峰さんは、
2月に伝書バトが実施した、
電子コミック131冊を各11円で販売するセールの効果で、
2月の売り上げ総額が3億円を超えたことを明らかにした。
売り上げトップだった佐藤さん本人には、
1億3000万円以上の印税が入ったという。
出版不況の中、
この結果が「すべての漫画家の希望となることを願っている」としている。
セールは、「楽天Kobo電子書籍ストア」で2月2日から1カ月間実施。
「海猿」(佐藤秀峰作)、「禍々しき獣の逝く果ては」(楠本弘樹作)、
「あいこのまーちゃん」(やまもとありさ作)など
42タイトル・合計131冊を各11円で販売した。
2月の売り上げ総額は3億円を超え、各作家が受け取るロイヤリティ額は、
トップの佐藤さんが1億3388万円、2位が佐藤智美さんが1896万円、
3位が716万円(匿名作家)、4位が595万円(同)、
5位の楠本弘樹さんが230万円――にのぼったという。
佐藤さんは、1億3388万円という額について
「1カ月間のロイヤリティ金額としては、控えめに言っても、
これまでの電子書籍の常識を打ち破る数字」とみている。
紙の書籍の印税で同額を稼ぐには、
単行本を約300万部を売り上げる必要があるという。
販売したタイトルは新作ではなかったが、
「大幅な値引きを行なった上で、
取り扱い全作品を一気にセールに投入する」という作戦が奏功し、
大きな売り上げにつながったとみている。
参加した作家からは「紙の本ではほとんど利益を産まなかった作品が、
電子書籍として売り上げを計上したことは新鮮な驚きでした。
読みたい、買いたいと思っている読者に正規に届けられた、
ということに電子書籍の役割、
可能性を大いに感じています」と感想が寄せられたという。
佐藤さんは
「この結果がすべての漫画家にとって希望となることを願っています」
とコメントしている。
電書バトは、簡単なクオリティチェックを通れば
プロ・アマ問わず電子書籍を販売できる取次サービスで、
2014年にスタート。
国内主要電子書籍ストア約50店舗に対応しているという。
-ITmedia ニュース 5月27日(金)15時56分配信-
テレビドラマ『重版出来』(じゅうはんしゅったい)を観る前なら
この種の記事は、もろ手を挙げて歓迎しただろう。
(今日の夜にも第8話が放映される)
しかしあのドラマを観た後にこの記事を読んだ感想は、
電子書籍の持つ、メリットとデメリットがハッキリ見えてくる。
『重版出来』は、いつも観ている人には説明がいらないが、
一度も観たことが無い人には簡単な説明が必要だろう。
黒木華主演のドラマで、主人公は出版社の週刊漫画部門の新人編集者。
『重版出来』とは、初版が販売好調で第2版、第3版と増刷されること。
編集者と漫画家たちは皆『重版出来』を目指して
それぞれの仕事を一生懸命に頑張っている。
漫画家の苦悩や編集者たちが如何にサポートするかが
感動的に描かれている、最近では実に面白く、
見応えがあるドラマに仕上がっている。
そうした漫画家・編集者の二人三脚で
より高いクォリティーの漫画を生み出そうとするシステムが、
日本の漫画の質の高さを支えているのだと思う。
その漫画を発表する機会が、今までの出版社による漫画雑誌の出版。
漫画に限らず、本の出版には、多くの人の手を渡り出版にこぎ着ける。
著者、編集者、印刷、流通、販促。
読者の手に渡るまでには、
紙や印刷などの他にもたくさんのコストが掛かっているのだ。
しかも売れ残った本は更に、償却処分のコストも。
それらの余計なコストを最小限に削減した電子書籍や
その取次サービスは、確かに画期的だ。
それまで出版社が恐れていたのは、
売れなかった時のリスク。
だから漫画家になりたい人の登竜門である
新人発掘と連載には、極めて慎重になる。
その狭き門を突破できる人はほんのひと握りで、
多くの人材は日の目を見ずに消えてしまうのが現状だ。
その厳しい世界だからこそ、
優秀な作品が注目を集め、日本漫画界の水準を保つ役割を果たしている。
その反面、日の目を見なかった作品の中にも
金の卵は確かに存在し、
人気読者アンケートでバッサリ切られた作品の中にも
読む人に多大な影響を与えるような作品が多く存在する。
それらの決して恵まれることのなかった作者にも、
簡単なクオリティチェックを通れば、との条件があるが
発表されるチャンスが格段に広がり、
収入増につながる機会も増えるというものだ。
それによる漫画界のすそ野の広がりは、計り知れないものとなろう。
それがメリット。
しかし、デメリットも確かに存在する。
その一つに、先に述べた編集者との二人三脚による
質の向上が見込めないのだ。
独りよがりの作品は、どうしても質の停滞・低下を招く。
それが昂じて漫画界全体の質的低下を招く恐れが出てくる。
二つ目のデメリットは、電子書籍が増えることにより
多くの漫画に発表の機会が与えられ、
そのひとつひとつが埋もれてしまいがちになる懸念があることだ。
一冊数百円を払い、雑誌を購入し、
その中からリスペクトされた作品のみが、更に単体でコミック化され
作者の収入増につながる。
そうしたシステムが崩れる事による損失効果も
無視できないと云えるのではないか。
出版された紙による本と、電子書籍。
その両方がお互いをつぶし合うのではなく、
共存と相互補完の役割をうまく担えるよう、
調整する機関や仕組みの早期構築が望まれると思う。
とっくの昔に漫画を読むのは卒業しているが、
今でも新しい作品、有望な作品に対し、
心の中で応援しているオヤジが一句。
昔にも こんな仕組みが あったらなぁ
(元漫画好きの金欠少年)
お粗末。
電子書籍取次サービス「電書バト」などを運営する漫画家の佐藤秀峰さんは、
2月に伝書バトが実施した、
電子コミック131冊を各11円で販売するセールの効果で、
2月の売り上げ総額が3億円を超えたことを明らかにした。
売り上げトップだった佐藤さん本人には、
1億3000万円以上の印税が入ったという。
出版不況の中、
この結果が「すべての漫画家の希望となることを願っている」としている。
セールは、「楽天Kobo電子書籍ストア」で2月2日から1カ月間実施。
「海猿」(佐藤秀峰作)、「禍々しき獣の逝く果ては」(楠本弘樹作)、
「あいこのまーちゃん」(やまもとありさ作)など
42タイトル・合計131冊を各11円で販売した。
2月の売り上げ総額は3億円を超え、各作家が受け取るロイヤリティ額は、
トップの佐藤さんが1億3388万円、2位が佐藤智美さんが1896万円、
3位が716万円(匿名作家)、4位が595万円(同)、
5位の楠本弘樹さんが230万円――にのぼったという。
佐藤さんは、1億3388万円という額について
「1カ月間のロイヤリティ金額としては、控えめに言っても、
これまでの電子書籍の常識を打ち破る数字」とみている。
紙の書籍の印税で同額を稼ぐには、
単行本を約300万部を売り上げる必要があるという。
販売したタイトルは新作ではなかったが、
「大幅な値引きを行なった上で、
取り扱い全作品を一気にセールに投入する」という作戦が奏功し、
大きな売り上げにつながったとみている。
参加した作家からは「紙の本ではほとんど利益を産まなかった作品が、
電子書籍として売り上げを計上したことは新鮮な驚きでした。
読みたい、買いたいと思っている読者に正規に届けられた、
ということに電子書籍の役割、
可能性を大いに感じています」と感想が寄せられたという。
佐藤さんは
「この結果がすべての漫画家にとって希望となることを願っています」
とコメントしている。
電書バトは、簡単なクオリティチェックを通れば
プロ・アマ問わず電子書籍を販売できる取次サービスで、
2014年にスタート。
国内主要電子書籍ストア約50店舗に対応しているという。
-ITmedia ニュース 5月27日(金)15時56分配信-
テレビドラマ『重版出来』(じゅうはんしゅったい)を観る前なら
この種の記事は、もろ手を挙げて歓迎しただろう。
(今日の夜にも第8話が放映される)
しかしあのドラマを観た後にこの記事を読んだ感想は、
電子書籍の持つ、メリットとデメリットがハッキリ見えてくる。
『重版出来』は、いつも観ている人には説明がいらないが、
一度も観たことが無い人には簡単な説明が必要だろう。
黒木華主演のドラマで、主人公は出版社の週刊漫画部門の新人編集者。
『重版出来』とは、初版が販売好調で第2版、第3版と増刷されること。
編集者と漫画家たちは皆『重版出来』を目指して
それぞれの仕事を一生懸命に頑張っている。
漫画家の苦悩や編集者たちが如何にサポートするかが
感動的に描かれている、最近では実に面白く、
見応えがあるドラマに仕上がっている。
そうした漫画家・編集者の二人三脚で
より高いクォリティーの漫画を生み出そうとするシステムが、
日本の漫画の質の高さを支えているのだと思う。
その漫画を発表する機会が、今までの出版社による漫画雑誌の出版。
漫画に限らず、本の出版には、多くの人の手を渡り出版にこぎ着ける。
著者、編集者、印刷、流通、販促。
読者の手に渡るまでには、
紙や印刷などの他にもたくさんのコストが掛かっているのだ。
しかも売れ残った本は更に、償却処分のコストも。
それらの余計なコストを最小限に削減した電子書籍や
その取次サービスは、確かに画期的だ。
それまで出版社が恐れていたのは、
売れなかった時のリスク。
だから漫画家になりたい人の登竜門である
新人発掘と連載には、極めて慎重になる。
その狭き門を突破できる人はほんのひと握りで、
多くの人材は日の目を見ずに消えてしまうのが現状だ。
その厳しい世界だからこそ、
優秀な作品が注目を集め、日本漫画界の水準を保つ役割を果たしている。
その反面、日の目を見なかった作品の中にも
金の卵は確かに存在し、
人気読者アンケートでバッサリ切られた作品の中にも
読む人に多大な影響を与えるような作品が多く存在する。
それらの決して恵まれることのなかった作者にも、
簡単なクオリティチェックを通れば、との条件があるが
発表されるチャンスが格段に広がり、
収入増につながる機会も増えるというものだ。
それによる漫画界のすそ野の広がりは、計り知れないものとなろう。
それがメリット。
しかし、デメリットも確かに存在する。
その一つに、先に述べた編集者との二人三脚による
質の向上が見込めないのだ。
独りよがりの作品は、どうしても質の停滞・低下を招く。
それが昂じて漫画界全体の質的低下を招く恐れが出てくる。
二つ目のデメリットは、電子書籍が増えることにより
多くの漫画に発表の機会が与えられ、
そのひとつひとつが埋もれてしまいがちになる懸念があることだ。
一冊数百円を払い、雑誌を購入し、
その中からリスペクトされた作品のみが、更に単体でコミック化され
作者の収入増につながる。
そうしたシステムが崩れる事による損失効果も
無視できないと云えるのではないか。
出版された紙による本と、電子書籍。
その両方がお互いをつぶし合うのではなく、
共存と相互補完の役割をうまく担えるよう、
調整する機関や仕組みの早期構築が望まれると思う。
とっくの昔に漫画を読むのは卒業しているが、
今でも新しい作品、有望な作品に対し、
心の中で応援しているオヤジが一句。
昔にも こんな仕組みが あったらなぁ
(元漫画好きの金欠少年)
お粗末。