uparupapapa 日記

今の日本の政治が嫌いです。
だからblogで訴えます。


ママチャリ総理大臣~時給1800円~【改】第26話 地震とゴキブリ

2023-12-30 07:16:37 | 日記

 ある休日の朝、平助が身もだえしている。

 

 インディアンの踊りのような奇妙な動作の場面に、偶然のタイミングでアパートのドアを開けたカエデ。 

 驚いた平助は動作の一瞬の場面のまま固まり、カエデの方へ振り向く。

 

 

 見つめ合うふたり・・・・。

 

 

 って違うだろ!

 

 

「何やってんの?」

「な、な、何って・・・・、ノックもせずいきなり入ってくんな!」

「頭おかしくなった?元々おかしいけど。」

「だから!ノックぐらいしろ!って言ってるだろ!」

 その抗議を無視し、

「その奇妙な平助踊りは一体何?

世をはかなんで救済を求める踊り?

でも平助の日頃の行状じゃ、神様も助けてくれないでしょ。うぅん、残念な平助。」

「勝手に人を残念がるな!今は別に神様に助けを求めている訳じゃないし。」

ここで平助はハタと思い出した。

朝寝坊し微睡まどろんでいるとパジャマの首の袖から何かが侵入し、違和感を感じてパニック状態になり、もがいているところだった事を。

「ア~!ヤバい!ヤバい!」

 思い出すと同時にいきなりもがき乍ら、パジャマの上を脱ぎだす。

 もどかしく何とか脱ぐと、次は下着のシャツ。上半身裸になり、背中を見ようと何度も振り向く平助。

 その姿はまるで子猫が自分の尻尾を捕まえようとクルクル回る動作に似ている。

「キャッ!麗しい乙女の前で何するの?早く服を着て!!

 この変態オヤジ!!」

 背中に異常が無い事を確認した平助は、カエデの罵声にかまわず着ていたシャツを振り、中から何か落ちてくるのを目撃する。

 落ちて来た物体はゴキブリ。

 

 二人揃って「ギャー!」と叫ぶ。

 

 その惨劇から事態が収束したのは、その二分後であった。

 そしてその時使われた哀れなスリッパは、無情にも捨てられた。

 

 ようやく事情を理解したカエデは落ち着きを取り戻し、

「いつも部屋の中を不潔にしているからよ。私が見かねて掃除をしてあげなければ、いつまで経ってもゴミ屋敷なんだから。

 今度から(愛新覚羅)溥傑ふけつって呼ぶよ!」

 

㊟ 愛新覚羅溥傑あいしんかくらふけつ

 満州帝国最後の皇帝、愛新覚羅溥儀あいしんかくらふぎの弟。

 昔、何かの映画をふたりで見た時、溥儀と溥傑が登場。

カエデが面白がり、不敬にも溥傑を『ふけつ』という読みの《おん》を聴いて反応、それ以来平助を不潔男と揶揄する時、『ふけつ』のイントネーションの『ふ』のおんをワザと変え強調し、『ふけつ』と発音するようになった。

昔の人とは云え、外国の王族の名前を平気で汚すカエデ。

罰が当たると思うぞ。

 

 

 

 そんなドタバタがひと段落した直後、地震の揺れを感じた。

 直ぐにテレビのスイッチを入れ、状況を確認するふたり。

 

 東京23区震度3~4。

 震源地千葉県沖。震源の深さ20㎞。

 津波の恐れあり、警報発令。

 

 平助はアパートを飛び出し、愛車のママチャリを全力で立ち漕ぎしだした。

 行き先はもちろん震源地、じゃなくて首相官邸。

 

「あら、チャリの割に早かったのね。」とエリカ。

 その言葉に反応するのももどかしく、先に到着していた面々に、詳しい状況の報告を受ける。

 

 ネット政変以降、地震対策も着々と進め、被害を最小限に留めるよう避難誘導も盤石な体制を確立していたため、今のところ被害は軽微だとの事。

 ホッと胸を撫で下ろす。

 

 改めて説明するが、ネット政府が発足すると同時に、地震対策も優先事項として推し進めていた。

 すべては将来確実にやって来る『南海トラフ大地震』に対応するため。

 

 具体的には・・・

 

 大きな被害が想定される地域を北海道ブロック、東北ブロック、関東・島嶼しょブロック(小笠原諸島など)、東海ブロック、近畿ブロック、中国・四国ブロック、九州・沖縄ブロック。以上七つの地域別に緊急災害対処本部を設置した。

 消防・警察は勿論の事、広く有志を募り自警団を組織、一般市民を巻き込み、大掛かりな総力戦の防災体制を敷いた。

 それは地域別に全人口をカバーし、漏れの無い救出を可能にする組織である。

 そしてそれらを束ねるのが、東京の首相官邸に設置した災害対策総合統括本部。

 大型スクリーンで各地の状況を一目で確認でき、指揮できる体制である。

 

 

 後からカエデが電車で到着、こちらも急ぎ状況把握に努めた。

 

 この頃カエデと平助の仲が気になるエリカ。

 内閣府から今後の対策を協議するためやってきた田野上と目が合い、二人の仲を怪しんだ。

 

 だってカエデが到着早々、平助にゴキブリ騒動の後、慌てて着た服装が乱れていることを指摘したから。

 どうして今来たカエデが、平助のゴキブリ騒動の顛末を知ってるの?

 別々に住んでいるのなら、今日の朝の出来事をカエデは知らない筈。

 怪しい・・・。

 もしかして、もう同棲してる?

 エリカは直球で探りを入れた。

「へぇ~、ゴキブリの事、カエデさんは知ってるんだ。どうしてだろ?今朝の事の筈なのにね?」

「え?だってほら、偶然平助のアパートに行ったら、平助が身もだえしてるから。」

「ソ~ォ?偶然ね~。そんな偶然、いつも有るのかしら?」

ジト~ォっとした目でカエデの目の奥を探る。

 何も悪い事をしていないのに、痛くも無い腹の中を探られているようで、不快に思うカエデであった。

 

 でもね、うら若き女性が独身男のアパートをノックもせず、当たり前のように部屋の中へ入るのは、やはり疑われても仕方ないと思うぞ。

 

 この日、エリカの胸の奥で、何かの企てが浮かんだ。

 波瀾万丈の予感。

 

 

 

 

 

 

    つづく

 


ママチャリ総理大臣~時給1800円~【改】第25話 第三秘書 エリカ

2023-12-28 06:55:10 | 日記

 ネット内閣組織に副大臣や副長官という『副』とつくポストは基本無い。

 それは旧組織のようなお飾りのポストで、議員たちの出世欲や名誉欲を満たす必要が無いためである。

 議員当選一回目だの二回目、三回目だのという選挙の度に生まれる長期にわたる特権制を廃し、一律任期一年限り、一度だけポストを経験すれば充分だからという理由もあるから。

 

 但し例外もある。

 ある一定の部署に業務が輻輳ふくそうする事が予想される場合や、新設の業務を省内に設ける場合などがこれにあたる。

 そんな時どうするか?

 

 急な業務増に大臣ひとりでは対応できない場合などに、副大臣や副長官を設けるような仕組みを作っているのだ。

 だがネット政府応募組の人員はそれぞれ決まっていて、1年の養成期間を要する。

 だから急な補充に対応し、宛てられるのが公設秘書たちである。

 秘書というが、政変以降の組織では大臣の小間使いではない。

 全員参加の総力戦であり、誰もが活躍する事を求められる立派な控え要員なのである。

 

 また全く別の起用パターンもある。

 

旧体制と違い応募制行政ポストなら、適任の人材を必ずしも配置できるのか?という懸念の場合がそう。

 例えば平助が任期1年の間に、何かやらかして総理大臣失格のレッテルを貼られたらどうする?

 例えばカエデと一緒のプライベートな時同様に場をわきまえず、そのまま公的な場所でも変わらず恥ずかしいお馬鹿な会話を晒し続けていたら?

 助平で変態で軽薄で、[いけず]な本性丸出しのままだったら?

(誰が『助平で変態で軽薄で[いけず]な本性丸出し』じゃい!!と平助が聞いたら抗議するだろう。例えだから!あくまで【た・と・え】・・・ね。)

 

 そんな時はどうするの?

 

 平助が不適任と判断され辞任する時、代わりは?

 

 そんな時のリリーフとして秘書が居る。

 平助や田之上官房長官たちには第三秘書まで宛がわれているが、前述通り彼らはタダの秘書ではない。

 主役ポストがコケた時、直ちに代替人事で埋められるよう、同じだけ研修を受け、いつでも配置できるよう措置された仕組みなのだ。

 第一秘書がコケたら第二秘書の出番、それもダメなら第三秘書。

 幾重にもリスク管理が成され、一年間の任期を全うさせる。それがネット政府運営委員会の考えであり、組織運営の考え方であるから。

 

 ただ、その順番が第一、第二、第三とは限らない。

 その時おかれた政治的状況に於ける適材が誰なのか?とか、ネットアンケートでの意見による推薦が影響する場合もある。

 だから平助が辞任させられたら、第一、第二秘書を差し置いて、第三秘書のエリカが首相に選任されるケースも考えられるのだ。

 

 

 

 そのエリカ(28)だが、彼女も壮絶な生い立ちを潜り抜けて来た強者つわものである。

 

 小学校に入学して直ぐ、両親が離婚。

 母方に引き取られたが、エリカには三歳年下の妹カオリがいる。その妹は当初父方に引き取られていたが、育児放棄のためエリカと一緒の母方に。

 その母もネグレクトで他の男に走り、見かねた親戚が姉妹を引き取る。

 やがてエリカが小学3年の時、カオリが病死した。

 「お姉ちゃん・・・・。」

 最後に姉のカエデの名を弱々しく呼ぶカオリ。

 涙が止めどもなく溢れ、はらはらと泣き続けた。

 その情景が大人になってもエリカの脳裏から離れない。

 

 天蓋孤独になったエリカは、妹の病死の責任が姉の自分にあると思い込んでいた。

 養育してくれる親戚に遠慮し続けた結果、妹を死に追いやってしまったのだと。

 エリカは親戚に負担をかけまいとして、高校生活はできる限りのバイト三昧。

 それでも高校での成績は優秀で、有名な大学に推薦入学する。

 大学に進学しても奨学金とバイトで何とか自力で卒業できた。

 

 妹の死の影を終生胸に抱きながら。

 

 エリカの容姿は、よく目立つ美人である。

 その特性を生かし、大学在学中からクラブのホステスとして生活費を稼いでいた。

 卒業後も大手有名企業への就職を蹴って、引き続きホステスとして身を立てる。

 やがて銀座の超高級クラブにスカウトされ、議員や高級官僚の対応を任されるようになった。

 元々エリカは頭が切れ、プライドが高いだけの高慢オジサンの手玉をとるのは簡単。

 政治の世界の話題の勉強も完璧で、オジサンの話について行けないなんて事は全くない。

 むしろ彼女なりの身の程をわきまえた、可愛げのあるアドバイスがさりげなくできる程。

 そのスキルの高さを当時政府高官公設秘書だった板倉に見初められ、平助政権の第三秘書として抜擢されたのだった。

 苦労人の板倉は、苦労人のエリカに同じ匂いを感じたのだろう。

 そんな経緯でボーっと生きる平助には、気が置けないけど油断ならない存在となったのは言うまでもない。

 

 

 エリカは要所々々でさりげなく平助にアドバイスを送る。

 特に政策発表や演説、記者会見の場でのコメントについての注意点などには。

 平助は首相としてその場の空気を読み、発言を忖度する力と、全体を見渡す能力を備えている。

 だが、まだ政治の世界での問題点を正確に把握し、適切に対処するには未熟であった。

 その欠点を補完したのがエリカ。

 失言などの致命的失点を防ぐ役割をこなしていた。

 

 だから平助にとって秘書エリカは、カエデや鯖江さばえと並び、頭の上がらない存在である。

 

 ある会見の際、平助が返答に困った時も、エリカが人知れず助け舟を出した。

 記者たちの目に触れないよう工夫したディスプレイに、素早く模範解答を送りその場を切り抜けてきた。

 平助はその都度、

りぃ!」と目で合図する。

 

 その息の合った連係プレイを横目で見ていたひとりの男がいた。

 田之上官房長官である。

 彼は平助を羨ましく思っていた。何故なら田之上の秘書立ちは皆、男であったから。

 学生時代からの友人であり、確かに人間関係は良好であった。だが無骨な男同士。

 それに対し、平助の秘書エリカは人目を引く美人であり、いつも凛としている。

 官房長官という職務は首相を助ける、いわば女房役。平助とは行動を共にする機会が公私供に多いのだ。

 田之上はいつしか一方的にエリカに恋心を抱くようになる。

 だが田之上は平助と同じ角刈り三人衆のひとり。

 女性の受けはすこぶる悪い。

 

 その現実を感じないわけがない田之上。いつまでも片思いのままだった。

 

 一方平助にとってエリカは恋愛の対象にはなっていない。

 カエデの厳しい目があるし、いつも助けられているばかりでは立つ瀬が無いから。

 でも最近のエリカは平助が業績を挙げる度、好感度も上がっているみたいな目で見てくる。気のせいか、好意を持ってくれている?なんて不敵にも己惚れ心が芽生えた。

 まんざらでもない平助。

 

 この事が平助・田之上とエリカの奇妙な三角関係、いや、カエデを交えた四角関係に発展しそうな不穏な雰囲気を産む。

 

 

「ねぇ平助首相、昨夜の会見で私に助け舟を求めて何度も目で合図してくるの、止めてくれる?あれじゃぁ、取材の記者たちにバレバレじゃない!」とエリカ。

「そうですよ!平助さん、いくらエリカさんが有能な美人秘書だからと云って、頼り過ぎ。

 過重な他力本願は良くないですよ!少しは自分で調べておくとか、勉強してください!」と嫉妬交じりの田之上。

「勉強?それは僕の一番嫌いな言葉!

それに(田之上)憲治さんがいつもボクを飲みに誘うから、勉強の暇なんてないじゃないか!」

「アッ!またそうやって人のせいにする!良くないなぁ~。ねぇエリカさん。」

 田之上がエリカに同調を求めた。

 そこにカエデがシャシャリ込む。

「平助!いつまで人に頼ってんの?いい加減、自立しなさい、バカ!!」とカエデ。

 この頃はエリカの他、カエデも平助の傍から離れようとしない。

 そして平助に対した時だけのカエデの口癖の「バカ!」は、その部分だけ囁くような妙な色気がある。

「バカバカ言うな!傷つくだろ!」

 カエデの前では特にいつも自立できない平助。段々二人のおバカな世界に入ってゆく。

「大体平助は感謝が足りないのよ。忙しい中私が晩御飯を作ってあげても、『美味しい』とか、『世界一だね、』とか『ありがとうございます、カエデ様』とかの言葉が足りないのよ。」

「カエデ様ぁ?カエデはカエデだろ?

 味は美味しいけど、世界一かどうかと云ったら、それはねぇ~どうかと思うぞ!

 (蚊の鳴くような小さな声で)でも、感謝はしてるサ。」

「エッ?聞こえない!なんだって?」

「感謝はしてるって言ったんだよ!」ヤケクソの平助。

「それじゃぁ、その気持ちを態度で見せなきゃ。平助は冷た過ぎるのよ!そんな事じゃ人の上に立つ総理大臣なんて務まらないからね!」

「別に人の上になんて立ってないし!今までも何とかやってこれたし。」

「そんな風に突っ張ってると、もうご飯作ってあげないよ。」

「お、お代官様、それだけはお許しください。もうしませんから。」

 

「あなたたち、お熱いことね。そんなに当てつけないでくれる?」

 呆れ果てたエリカが言う。

 「そうだぞ!平助さん、カエデさん!ボクとエリカさんの前でイチャつくのは、どうかと思うぞ!目や耳のやり場に困るだろ? ね、エリカさん?」

 

 この人、何で私にいつも同調を求めてくるんだろ?そう訝しく思うエリカであった。

 

 もう間もなく任期が終わろうとしているのに、この不穏(?)な予感は何だろ?

 その場に居た四人は、無意識に今後の波乱を感じた。

 

 

 

 

 

       つづく


ママチャリ総理大臣~時給1800円~【改】第24話 生成 AI

2023-12-26 06:23:50 | 日記

 ネット政変以前に政権を担っていたある人物の談話がテレビ番組に登場。

「減税?やってみろ!って感じですかね。

 大体この方、国を舵取りする経験もキャリアも無いし、首相になるこころざしとか持ってんですかね?

 確固たる信念のない人が首相になったら、この国の将来は終わりですよ。

ハハハハハ!」

 

どの口で言う?

テレビ画面の向こうで、昔懐かしいオジサンの顔。

平助が首相に就任した際の、増税メガネの談話であった。

 

政変以前の政界は、議員も高級官僚も二世・三世でなければその地位に就く事は不可能。

それは目に見えない 身分制度であり、『武士でなければ人でない』に等しい階級の断絶であった。

 

そして不可思議なことに国民はその事実に関心を持たず、全く問題だと思っていない。

それは身分制度だけではなく、どれだけ増税されても、購買力が低下し貧困が増しても、潜在的不満を持つだけで、自分たちの生活をどのように維持するか?問題解決の必要性に迫られた時、思考が停止した。

そして現実逃避に走り趣味や楽しみに没頭する。

だから上級国民たちは増長し、やりたい放題の愚政を敷く。

国民は家畜化し、狭い飼育小屋の中で最低限の生存しか許されない状況に追い込まれた。

牛や豚や鶏のように。

 

生存が許される条件。

それは社会や企業などの飼育小屋の中で、従順に生産に従事する事。

 

責任世代と呼ばれる労働力から外れた(外された)者は、世間体と人道的観点から国際批判を浴びない程度の最低限の培養状態に転落し、社会的弱者となる。

それが脆弱で貧相な社会福祉制度の実態である。

その結果、国民はただ生かされている状態から脱せず、未来に希望を見いだせないまま結婚・出産を忌避し、出生率は国の存亡を脅かすほど低下した。

また、アメリカの貿易摩擦解消圧力や、日本の国力削減を画策した策動等により、日本の国力自体著しい国力低下を招き、外国との相対的購買力も地に落ちた状態となる。

そして国民の不満が限界点を超えた時、ネット政変を迎えたのだ。

 

ただ、それまで権力を握っていた旧勢力は、その事態の深刻さを理解していない。

だから平助たち庶民の素人集団を舐めてかかり小馬鹿にした。

未だに現政府を揶揄するのも、現状分析が甘すぎるから。

 

 

 

でも国全体がそんな八方ふさがりの状態にあっても、一筋の光明があった。

それは日本が未だに保っている資産。

と云っても対外資産の事ではない。

日本固有の文化資産の事である。

 

外国人に人気を誇る日本文化は、落ちぶれた経済力をカバーし、リスペクトの対象として信用力・潜在的リーダーシップの立場を保持していた。

それ等は先人の努力の賜物であり、最後の財産と言える。

 

逆にいえばこれらプラスの資産を生かすことが、復活の最後のチャンスなのだ。

 

国際進出を広げるたび信用を落とすどこぞの国と、信頼と尊敬をかち得る国。

その差がかけがえのない財産なのだと、ネット政府は理解していた。

その資産を最大限生かし、国を富まし、国民生活を豊かにする。

そんな政策を一年単位で代々受け継ぐのが平助たちの使命。

 

平助の代も、アメリカ・中国との外交交渉で、何とか一定の成果を出すことに成功した。

但し、国を富ます事も、国民生活の向上も未だ道半ば。

社会インフラの整備と、製品開発力・生産力の向上が至上命題なのは変わらない。

矢継ぎ早に発せられるネット国民アンケートの要求に追われる平助たちであった。

 

 

 

そんな時、生成AIによるフェイク事件が起きる。

平助の偽談話がネット上で拡散されたのだ。

 

卑猥で低俗、且つ軽薄な話題を放つ平助。

(元々卑猥で低俗、且つ軽薄な本性を持っているが)

これは全くのでっち上げであった。

 

その情報を真に受けたカエデが、来るなり平助にいきなり平手打ちを喰らわす。

「平助!何てことやらかした!普段からこんな恥ずかしい会話をしてるから拡散しちゃっただろう。恥を知れ!バカ平助!!」

「え、何のこと?

 いきなり暴力を振うカエデはホントに狂暴なんだから。

 何で僕の事ぶつんだよ!」

 カエデが携帯の録画画面を見せ、

「こんな事言ってたら、国民は何と思うか分からない?

 根が卑猥だからいつかはこんな事になるんじゃないかと心配してお目付け役になったのに、これじゃ意味ないじゃん!」

「へ?

 僕はこんな事言ってないぞ!

 何だ?この映像は?

 大体いつボクが卑猥な事言った?

 一度も無いだろ!

 この映像もカエデも失敬な!」

 最近の平助の口癖は「失敬な」であった。

「何、シラを切ってる!現にこうして喋っているジャン!こんな明瞭な動かぬ証拠を前にして堂々と否定してんじゃないよ!」

「だから言ってないって!!

 これは何かの間違いか罠だろ?

 よく見ろ!口の動きや背景や動作が不自然に荒いじゃないか!

 これって作り物じゃないかな?

 僕はこんな卑猥な人間じゃないし。」

「平助は十分卑猥だよ!

 人間性の本質を良く捕らえているじゃない?

 でも平助の言う通り、チョットこの動画って変ね。

 これってフェイク動画?」

「だから言ってんだろ?フェイク動画だって!

 それに卑猥、卑猥って・・・僕はこんな卑猥じゃないし。」

 平助の訴えを無視し、

「これが作り物なら問題ね。女性に敵が多い平助だから誰が作ったか分からないけど、何か対策を立てなきゃ。

 科学分析をして、これはフェイクだと発表しなきゃね。」

「僕に女性の敵が多い?んな訳無いだろ!

 支持率だってそんな悪くないし。」

「支持率と好みは違うでしょ?自覚無いの?おバカさんね。」

「人を哀れんだ目で見るんじゃねぇ!犯人が女性とは限らないし・・・。」

 段々自信を失う可哀想な総理大臣。

 

 早速AI生成ガイドライン作成と法制化を急ぐ内閣であった。

 

 

 

 

 

   つづく


ママチャリ総理大臣~時給1800円~【改】第23話 危険な賭け

2023-12-24 05:08:22 | 日記

 コロナ明け以降、日本は空前のインバウンド効果で沸き上がり、地方観光地の景気を左右するほどに成長した。

 何処に行っても外国人を多く見かけるようになり、微笑ましい光景や、拙いながらも身振り手振りを交えたコミュニケーションなどで交流する場面も珍しくなくない。

 だがそんな現象に漠然とした不安を訴える者も多い。

 右肩上がりの外国人の増加は、たとえ個々の観光客が短期滞在だったとしても、治安や環境の悪化を招く事例が増えるから。

 事実、外国人の集団がバカ騒ぎして警察沙汰になったり、大型商業施設に於いてトイレ以外の一般共用施設の場所にて、堂々と大便をする様な信じられない程モラルが欠如した観光客が多数見られたりと、問題行動を起こす者がインバウンドの増加に比例した。

 ネット政治掲示板にてその問題が提起されると、瞬く間に多数の意見がだされる。

 その多くが放置することなく、政府が適切に対応する事を求めた内容だった。

 当然政府として重く受け止め、具体的な対処・対策に乗り出す。

 だが、何をどうすれば良いのか指標など行動基準が無く、まずガイドラインの設定から始めなければならない。

 

 

 そもそも日本は対外セキュリティーの分野でも、アメリカなどから厳しい意見を喰らい、高度な機密を含む国際共同行動にも支障をきたす場面が数多く出て来たくらいだから、そろそろ本腰を挙げて取り組む必要に迫られていた。

 スパイ天国日本。

 これが国際社会での日本の評価であり、その分野での信用度が低い原因でもある。

 またその事で、それは日本の国際的地位向上を著しく阻害する要因になり、対外交渉でリーダーシップのマウントを獲れない要因でもあった。

 

 インバウンドとセキュリティー問題。

 これらを上手く解決する妙案など、誰も持ち合わせてはいないだろう。

 

 例えるなら、人間の居住するエリアに、多数の熊が出没する状態をどうするか?に似ている。

 駆除するか?共存するか?である。

 駆除すれば危険は去る。

 でも国際社会の批判は免れないだろう。

「人間の都合でそう簡単に尊い命を奪って良いのか?」という、重いテーマを突き付けられるから。

 では、危険を承知で熊を生かし、共存の道を選ぶのか?

 どれだけ犠牲者が出ても良いのか?

 自分の身内が食い殺されても、共存を主張するのか?

 

 誰も適切な答えを出せないが、次善の策として駆除を含む適切な頭数管理を徹底し、出没した際の緊急アラートを発出する仕組みを作るくらいしか案が浮かばない。

 

 同様の問題をインバウンドやセキュリティーは抱えているのだ。

 

 特に要注意なのが中国人。

 彼らに日本の常識やモラルは通用しない。

 しかも国家機密や産業を盗み出すスパイ行為案件は群を抜いて多い。

 

 人を熊などの害獣に喩えるのは、少々思い上がった発想だが仕方ない。

 実際に無視できない被害が出ているのだから。

 

 苦肉の策というか、もうこの対策をとらないと立ち行かない程追い詰められた政府は、国家管理の危険な兆候と見なされても実行すべき方針を国民に示した。

 『対中侵攻防御要綱』である。

 

 その具体的内容は、

 ・外国人留学生(特に中国人)の人数制限と、怪しい人物の身辺調査。

 ・スパイ防止法の制定。

 ・ビザ発給の制限

 ・対外国人向け(別班のような)公安組織設立と、組織人員の大幅な人的強化による外国人犯罪への強権を付与した治安維持。

 

 を骨子とした内容であった。

 

 これは確かに非常に危険な劇薬であり、諸刃の剣である。

 何故なら、一旦治安維持やスパイ防止を打ち出せば、限りなく暴走し始め、ブレーキが効かなくなる恐れがあるから。

 それは抗争と抑圧の歴史が証明している。

 だから国民がどういう結論を出すか、重い判断と信を問われる内容と云え、慎重な決断が求められた。

 

 その結果、国民は条件付きでGoサインをだす。

 つまり一方的に敵対行為を通告するのではなく、平行して外交努力もする事。

 一連の外国人対処法律を制定した後も、公安組織や法解釈などを暴走させないよう(審問委員会などを作り)国民の監視下に置き、管理する事。

などである。

 

 一切名指しはしていないが、これらは明らかに中国をターゲットにした対応であり、もちろん中国は激しく反発した。

 自分たちも日本人に対して同様の行為をしているのに。

 

 日本と中国の交易は急速にしぼむ。

 その損害は計り知れないが、そんな痛みを以てしても、危険な状態にあるのだから覚悟の上の決断だった。

 

 平助が内閣を総動員して対中国外交に取り組んだのは言うまでもない。

 以前(第16話)でも描いたが、急遽策定した『対中侵攻防御要綱』にのっとり、

 対象の法整備を急ぎ、公安組織人員も現存の組織とは切り離した独立部署を設け、自衛隊や警察出身者から募るというより、全くの異彩な経験を持つ一般の者に(例えば語学堪能とか、優秀なエンジニアや科学者、秀でた身体能力を持つ者等)焦点を宛て幅広く募集した。

 そしてその者たちに一定の諜報技能や防御・自衛能力の他、高度で強固な責任感とモラルを植え付け備える訓練・研修を行う研修部署を設立した。

 

 そうした政策を行いつつ、中国と対峙したのだ。

 

 その中国は今、大変な苦境に居た。

 

 第16話と重複するが、その内容をより細かく具体的に描写したい。

(おさらいに第16話も参照してくれるとより理解が深まると思います。)

 

 土地バブルが大手企業の相次ぐ倒産がキッカケとなり金融不安が高まり、あらゆる産業に不況の波が襲いかかる。

 中国国内全体の目を覆う惨状に、成す術を持たないで立ち尽くす状態にあった。

 更に悪い事に、金融不安が不良債権を産み、為替にまで影響する。

 中国通貨の元建て債券インデックス(為替ヘッジ)が底値を付け、国際市場にまで悪影響を広げたのだ。

 それまで一帯一路構想推進のため、湯水の如くばら撒いた中国通貨『元』。

 だが、高圧的外交態度や、国際援助と称し、質の低い高速鉄道建設、港湾・空港設備や橋梁・道路建設で契約以上の代金を請求し相手国を財政破綻させ、その代償として従属させるなど、悪徳業者のような政策を推し進め国際信用を一気に失う。

その結果、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)から参加国が次々と脱落、巨額の負債を残し解散。

一帯一路構想も完全に頓挫した。

 失敗続きがたたり、立ち直れない程の負債を残し国内外で孤立した中国は、一党独裁政権を維持するのが困難な状況に陥る、まさに崩壊寸前の状態にあった。

その状況を一気に挽回するため台湾侵攻を企て、戦争準備を着々と進める最中の最も危険な情勢にあるのだ。

 

だから対する日本は、戦争回避と国内防衛のためにも、前述の対策を何としても推し進めなければならない。

平助は悲愴な決意を胸に習〇平と交渉した。

 もちろん、平助だけではない。

 内閣挙げての総力戦であり、経済界、民間交流組織までも巻き込み、幾度も波状攻撃で交渉する。

 更に日本の人気・有力コンテンツであるアニメやスポーツ交流等を最大限有効利用し、一般中国人に友好をアピール。

 中国国内のインターネットは独裁政権下では言論の自由は封じられているため、これらのコンテンツを絡めた日本の話題を故意に拡散させ、政権を揺さぶり内部崩壊させる戦法を続けた。

 

ここまでが前号で描いた通り。

 

 

 平助は持ち前のコミカル(本人は全く自覚無し)で人懐っこい性格を駆使し、一般国民との交流を故意に数多く発信した。

 元々典型的な庶民であり、総理としての威厳が皆無の平助は、中国にアピールするには最適な人材でもある。

 どういうことか?

 

 中国人は往々にして日本と日本人を良く思わず、けなす傾向にある。

 だからそれを逆手にとって、コミカルな宰相が笑われる演出を全面に出す。

 狙い通りそれらの様子を見た中国国民は、日本の首相をあざ笑い、自国に持つ不満やコンプレックスを解消するため、好んで注目するようになった。

 

 でも平助が一般人と気軽に談笑したり自然に触れ合う姿を見るうちに、自国の偉大な(尊大な)指導者の何と物々しい事か。

 無意識に比べるようになる。

 そして次第に感じ方に変化が現れ始めた。

 

 このところ、失敗続きの偉大な指導者。

 かたやお世辞にも頼り甲斐がありそうもない、庶民出身、平凡な容貌の宰相。でも彼は着実に国民のために実績を残しているようだ。

 

 この差は一体何だろう?

 疑問から自国の指導者に対する不信に変わる。

 

 その潜在的不満が充満した国内の雰囲気を、人民解放軍が汲み取り各地で立った。

 まず中央の政治体制に一番大きな戦力を有し、不満を持つ北部戦区(旧満州を中心にした中国東北部)が反旗を掲げ、次に新疆ウイグル地区を担当する西部戦区が後に続く。

 こうしてそれら各戦区を束ねる中央軍事委員会が崩壊、政権が倒れ群雄割拠した。

 

 もちろん台湾侵略など、何処かに吹き飛び、ひとまず危機から脱することに成功した日本。

 

 まだまだ情勢は流動的なので胸を撫で下ろすには早いが、久々に平助の宴会癖が戻り、角刈り3人衆プラス、ダンディー井口(外相)、板倉、カエデ、エリカの不動の宴会メンバーが近隣の居酒屋に集った。

 

「他国の不幸を祝うのは決してやってはいけない事だけど、今回の日本の危機からの脱出を喜ぶのは罰当たりとは言えないよね?

 乾杯しても怒らないよね?」

「次は仲違いした中国の各勢力を仲直りさせる努力もしなきゃね。

 平助に責任があるんだから。」

「エェ?何で僕に責任が?」

「だって平助がヒョットコみたいなみっともない姿を中国人の前に晒したから、中国の独裁政権が倒れたんでしょ?だったら平助の責任ジャン?」

「誰がヒョットコじゃい!誰がみっともない姿じゃい!いつもあんなに真摯な姿をアピールしたのに。

 こんな真面目な男前、他に居るか?失敬な!!」

「全世界の男の中で平助は男前ランキングで、ダントツ世界第一位の最下位だよ!自覚は無いのかい?」

「世界第一位の最下位?何じゃそりゃ?それって日本語か?

 そんな自覚あるかい!大体カエデなんかに言われたくないし!」

「まあまあ、今後の中国の動向にも不安は有るけど、日中両国の幸せを祈るってことで。」と、いつも調整役の田之上(官房長官)がとり成す。

「そうだよ、今後の日中友好の道筋をつける第一歩を築いたのだから、そこは喜んでも良いんじゃない?」とエリカ。

「これが真に仲良くなるキッカケになるといいな。」

(そしてお前たちもな。と心で平助とエリカの仲を心配する杉本。)

「それではそう云う事で!乾杯ァ~ィ!!」

 

「これからが正念場。根性見せてよ、平助総理!」

 どさくさに紛れ、さりげなくプレッシャーをかけるスポーツ根性路線の板倉であった。

「ヒエェ~!」と前途を嘆く平助。

 

 

 

 

 

     つづく


ママチャリ総理大臣~時給1800円~【改】第22話 ネガティブキャンペーン

2023-12-22 07:51:13 | 日記

 官邸管理人と掃除のおばちゃん日帰り合同慰安バスツアーがあった一月後、マスコミによって批判記事キャンペーンが張られた。

 曰く、【公費を使って管理人や掃除人まで豪華旅行三昧】という見出しで平助内閣を攻撃するもの。

 税金を何だと思っている!

 旅行ぐらい自分の金で行け!

 平助内閣は自分の身近な者にもへつらい、人気取りのばら撒きか!

 官邸・公邸の私物化!

 

 などである。

 

 批判したマスコミのバックに、旧体制の巻き返し派が存在していたのは明らかであった。

 

 重箱の隅をつつく

 

 まさに彼らの揚げ足取りの典型的な手段である。

 

 その記事が登場した途端、真に受けた国民が反応し、内閣支持率がいきなり10ポイント以上下落した。

 

 だが平助はこの件で弁明しようと思わない。

 言いたい奴に言わせておけ。

 どうせ一年限り、短期間の任期だし、自分が弁明する必要のある案件は、政策上重要な説明不足が生じた場合だけだ、との信念からだった。

 国民の誤解など、平助にとって取るに足らない小事でしかない。

 平助が支持率を気にするのは、女性にどう見られているか?その一点にあったから。

 

(そっち?)

 

 だから田之上官房長官たち他の側近にも、〘いちいち対応する必要なし〙とのお達しを出す。

 音無しの構えの政府対応に業を煮やした旧体制巻き返し派は、口車に乗って政府批判する国民を焚き付けるように、執拗な事実を歪曲したゴシップ記事を追加し扇動した。

 

 だが、この趨勢に当の掃除のおばちゃん達が、いつまでも黙っている訳はない。

 

 旅費の捻出先は全額、官邸・公邸に従事する有志たちのカンパであり、官邸公費からは一切出されていない事。

 それら官邸関係者たちは、アメリカとの外交交渉で大きな成果を挙げた時の祝勝会を開催しているが、その際におばちゃん、管理人さんまでを招くことができなかったので、その代替の対応である事。

 しかも先般の祝勝に使った会場は、一般シティホテル内の安い宴会場であり、その会費4000円も総て参加者の自腹である実情を、カエデがバスツアーに参加した掃除のおばちゃんや管理人にリークしたから。

 

 それまで旅費の出どころなど、詳しい事は何も知らないおばちゃん達は『自分たちは悪い事をしたの?』と戸惑い、自分を責めていた。

 けれど詳細な事実を知らされ、あなたたちは悪い事など何もしていない、とカエデに言われ心から安堵した。

 

 そう、私たちは日曜の休日に公費を使わず参加しただけであり、どこからも批判を受ける筋合いなど無い!

 

 段々怒りがこみ上げ、マスコミからの執拗なインタビューの場を利用し、言いたい事をぶつけた。

 

 当初マスコミはそれらおばちゃん達の発言をカットし、世論操作しようとする。

 彼女たちの発言はそれまでの報道を覆す新事実であり、自分たちにとって不都合な内容だったし、ネガティブキャンペーンによる扇動を指示した旧体制側から真実の報道による暴露を許してくれる筈もなかったから。

 だが、いくらマスコミが都合の悪い真実に蓋をしても、必ず何処からか漏れてくるもの。

 真実がネットにより露見し、次々にSNS上等に拡散、炎上した。

 

 日本のマスコミは歴史的観点から1925(大正14)年の治安維持法制定以降、一度も自主独立、公正、自由な立場での報道姿勢を成していない。

 政府の圧力に屈し、忖度と歪曲にまみれた報道をすることに、何のためらいも持たない権力の犬と化し、戦時中はおろか戦後もGHQの占領支配体制、更にその後はマスコミ各社の経営陣がK国系総会屋の脅しに屈し、K国の監視という支配を受け、K国にとって不都合な事件や情報など報道しないなど、常に誰かの飼い犬としてご主人様に尻尾を振り続けてきた 。

情けない事に彼らはそんな体質を受け継ぎ、現在に至っている 。

 だから彼らに報道人としてのプライドは残念ながら無い。

 世論の形勢が自分達に不利になると、てのひらを返し、旧体制を思い切り裏切った。

 今度は官邸関係者擁護の報道を次々と始め、ついには旧体制の過去のスキャンダルに関係した報道キャンペーンを張り出す。

 ネット政変移行前の旧体制政権末期、高度に発達したインターネット情報伝達能力の結果、政府要人の悪事が次々と暴露され、ネット政変の直接的な原因となった時の事例を蒸し返した。

 

 例えば

 当時の首相が財務省に取り込まれ増税を連発、国民の反感を買った結果、その後やる事なす事連日批判される。

・首相の関連団体が公費を使って懐石90万円、中華50万円の支出

・元外相が海外の高級シルクやワイン等、政治資金を使いお土産とする

・首相が医師会から1400万円もの政治献金受領し、賄賂メガネと批判される

・財務相が当時高高騰していたガソリン価格の引き下げ対策として、トリガー条項の初

 動には1.5兆円必要と難を示すが、石油元売り各社に対し補助金6兆円出す矛盾

 

 など、色々とやらかしている。

権力者の驕りに国民が反発し、その結果招いたのがネット政変なのだ。

その事を改めて思い出した国民が、再び旧体制の偽民主主義に自ら戻そうなど、考える訳がない。

 

旧体制とマスコミによるネガティブキャンペーンは完全に失敗し、終息した。

 

 

珍しくカエデが平助に詫びた。

「平助、ゴメン!せっかく平助がかん口令を敷いたのに、私がおばちゃん達に言っちゃった。」

「なんだ、犯人はカエデかよ!

 ナンチャッテね。そんな事は気にしてないサ。

 それよりせっかく企画したバスツアーがこんなくだらない事で台無しにしてしまい、おばちゃん達に申し訳ないよ。

 あれから皆、ションボリしていたしね。よく言ってくれたと思っているよ。

 ありがとう、カエデ。」

「何よ、平助!妙に素直ね。

 何か変なもの拾い食いしなかった?それとも良からぬ事企んでいる?」

「人を犬や猫みたいに言うな!

 誰が拾い食いするんだよ!

 (鯖江など人に)食べ物を安く恵んで貰う事はあっても、この平助、物を拾って喰った事は無いぞ。」と胸を張りながら、

「それに僕は企みや企てなど、悪い事を考えた事は生涯一度も無いし。」

「嘘つけ!平助はいつもこの私に隠れて悪事を働こうとしてんじゃない!

 私が知らないとでも思っているの?バッカじゃない?」

「別にカエデに隠れてなんかいないし、隠れる必要もないし。」

「私は平助のお目付け役なんだからね!その事を忘れちゃダメよ。

 私に隠れて悪い事したら、『百叩き』だからね!覚悟しておきなさい。」

「・・・・・・。」

 

 

 

 どうしてお詫びと感謝から、百叩きの話になるんだろう?

 よく解らない平助であった。

 

 

 

 

 

      つづく