小学唱歌「青葉の笛」の一番は、
この「敦盛最期」を歌にしたものである。
♪青葉の笛 作詞 大和田建樹
一谷の軍(いくさ)破れ
討たれし平家の
公達(きんだち)あわれ
暁 寒き 須磨の嵐に
聞こえしはこれか
青葉の笛
平家物語・敦盛最期
一谷のいくさに敗れた平家は
海へと敗走する。
源氏軍の熊谷次郎直実
(くまがえのじろう なおざね)は、
波打ち際で、豪華な装束の敵武者を組み伏せる。
そして首を切ろうとしてよく見ると、
わが子と同じ年頃の美しい若者であった。
助けたくとも源氏軍がそばまで迫っており、
直実は、覚悟を決めている若武者の首を
泣く泣く切り落とす。
後にわかったのは、
討たれた若者は
平経盛の子息の敦盛(あつもり)、
弱冠十七歳。
錦の袋に入れた笛を腰に差していた。
それを見て、
暁に敵陣から聞こえたのは
この笛の音だったと直実は知る。
小枝(さえだ)という名のその笛は、
鳥羽の院から笛の名手の平忠盛へ、
その後、同じく名手である孫の敦盛へと
受け継がれたものであった。
平家物語・敦盛最期
敦盛の装束、武具、騎馬の立派さや、
直実との今わの際の一問一答が
哀れを誘う。
坂東から来た歴戦の荒武者と
いくさに慣れない若者とでは
所詮、勝負にならない。
敦盛は、逃げられたかもしれないのに、
わざわざ引き返してきた・・・
この後、
直実は武家に生まれたことに
無常感を持つようになり、
遂には仏門に入った。