アメリカ帰国者が日々の出来事・人生・世の中などを語るブログ

日本に帰国して矛盾だと感じたこと、人生における発見や日常のことなど色々語ります

安倍首相の失態 -エジプトでのスピーチについて

2015年02月01日 | 政治・国際情勢について

とうとうこの日が来てしまった....。イスラエル国に拘束されていた後藤健二さんが、ついに殺害されてしまった。ヨルダンが、パイロットの解放を訴え始めてから事態がややこしくなり、これも相手側が既に計算済みで行ったものと考えられるが、相手の思惑通り、ヨルダンを混乱の中に入れてしまった。

しかし、ヨルダン側としては、外国人である日本人を救出するよりも、自分の国の人質を救うのがまず第一である。当然のことである。ヨルダンの人質よりも、日本の人質が先に開放されてしまった場合、ヨルダン国王は避難を浴び、国内は混乱、ひいては弱体化を引き起こしかねない。

日本のトップを非難したくないが、なぜ日本が標的にされてしまったのか、今回は安倍首相のエジプトでの英語スピーチがきっかけになったとしか思えない。先に私はテレビで安倍首相のスピーチを英語で聞いたのだが、どう考えても、日本は敵になった、としか受け取れない発言であり、後にニュースでそのスピーチの日本語を見た時、英語とのニュアンスが全く違って驚き、この日本政府の曖昧な態度に腹立たしい思いを感じた。

これは、国会議員の松田議員も指摘していたが、安倍首相の回答は「全く問題ない」であった。問題あったと認めれば、首相に非難が来るのは目に見えているので、本人が否定するのは当然であろう。しかし、この問題がテレビで大っぴらに指摘されず、議論にならないことに危惧を感じている。(インターネット上でも注意して検索しないと、この問題が書かれている記事にヒットしない。)

以下が、安倍首相がエジプトでおこなった英語のスピーチであるが、問題とされているところを抜粋してみた。

We are also going to support Turkey and Lebanon. All that, we shall do to help curb the threat ISIL poses. I will pledge assistance of a total of about 200 million U.S. dollars for those countries contending with ISIL, to help build their human capacities, infrastructure, and so on.

これをこのまま直訳すると、このようになる。

「我々は、トルコとレバノンを支援します。これらはみな、ISILの脅威を抑制する為に支援します。私は、ISILと戦う国々に対して、人材開発、インフラ整備を支援する為に総額約2億ドルの支援をします。」

このスピーチを聞いて、これのどこに日本がイスラムの敵ではない、ということを推測できるのであろうか?実は、このスピーチで使われた"curb"という言葉、この言葉の意味は「拘束」「歯止めをかける」といった、かなりきつい意味合いがある。翻訳者が英語の言葉のニュアンスを知らないで翻訳したのか、意図的に入れたのかは分からない。また、「戦う」という意味の"contend"の言葉も使っている。

一方で、日本語の原文はこうなっている。

「イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、ISILがもたらす脅威を少しでも食い止めるためです。地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します」

”ISILと戦う国々”という言葉が原文にはなく、英語には入れてあるのは何故なのか。日本語の原文と比べると、英語の方がかなり挑発的に聞こえる。英語では、明らかにイスラムと戦う国々に対して支援する、と断言しているのだ。日本語の、”少しでも食い止める”、というこれまた曖昧な表現だが、英語の"curb"の意味合いとは全く違う。

私は、仕事の中で普段英語を使っているので、翻訳・通訳を頼まれることが時々あるが、日本語の英語のニュアンスをよく知らないと、とんでもない誤訳になることは、経験上良く知っている。特に日本語は曖昧な表現が多い為、通訳をする時に困ることも沢山あった。英語の表現ははっきりしているので、英語から日本語に訳す場合はそれほど苦労はないが、逆の場合が難しい。英語圏にそれこそ10年以上住まないと、このニュアンスの違いは、日本人にはなかなか分からないだろう。

当教室でも英語を教えているが、時々、生徒さんからちぐはぐな翻訳を見ることがある。辞書を見てそのまま訳している為、単語の持つ本来の意味合いまでは分からないのだから仕方がない。なので、こちらが言葉の持つ意味合いを教えるのだが、そう説明されると生徒さんも納得する。そういうことも教えてこそ、本来の英語の学習であると思うのだが、英語を教えている先生方がそういうことをあまり理解していない為、日本人はいつまでたっても英語が得意にならない。

国際社会の波の中で、英語は今後、ますます重要になると思うが、そいうことも踏まえ、心して英語を学ばなくてはならない。一歩間違えると会社で大きな問題、政治においては国際問題に発展するからだ。

今回は、このようにあまりにも英語の翻訳に注意を怠った為、このような悲惨な事件を起こしてしまったとしか思えない。最近の日本の政治家は、たとえ金銭不祥事を起こしても選挙で再当選したり、政治家の器でないものが議員になったりするケースが多いが、政治家の質が下がっている兆候だろうか...

安倍首相のこのスピーチがそもそもこの事件を引き起こしているとネット上で書かれている個所が幾つかあるにも関わらず、テレビであまり取り上げられないのは、政府が裏で報道規制をしているのではないかと勘ぐらざるを得ない。戦前のような状態に日本は徐々に弾きこまれていくのではないかと、非常に危惧している。