アメリカ帰国者が日々の出来事・人生・世の中などを語るブログ

日本に帰国して矛盾だと感じたこと、人生における発見や日常のことなど色々語ります

考えの偏ったリーダーが組織・国家を滅ぼす~1列王記12章からの考察~

2017年06月08日 | 政治・国際情勢について

アジアでは北朝鮮問題、中東ではISの問題、そしてアメリカではトランプ大統領が国内に限らず、国際社会をもひっかき回しており、世界各国でテロが発生、世界は今、大混乱の渦の中にいる。そして、そんな中で各国で保護主義や極右政党が誕生し、日本もその例外にあらず、世界中で極端な思想や考え方が横行するのが当たり前になってしまった。

旧約聖書の1列王記12章はそのような極端な考え方を持った人がリーダーになった場合、どういう結末になるかが示されている。

12章では、ダビデの息子、ソロモン王の死後、息子のレハブアムが王になったが、祖父のダビデの様に様々な苦労を重ねて王になったわけではなく、また、ソロモンの様に父ダビデの苦労を見て育ったわけでも全くないので、何の苦労もなくぬくぬくと育ったのだろう。いわゆる、ボンボンのお坊ちゃんだ。苦労を全く経験しない人間は往々にして、思いやりもなく、人の痛みも感じないものなのだが、レハブアムもその一人だったことが、ここではっきりと分かる。

2節から、ヤブロアㇺを中心とした一団が、過剰な労働に対してなんとかして欲しい、とレハブアムに申し出る場面がある。おそらく彼らはソロモン時代に多くの建築や工事などを行い、相当な苦役を課されていたのであろう。しかし彼は、彼らの意見を聞き入れて親切にしてあげてください、という長老の意見を無視し、彼と同じ世代で同じような考えをもつ若者の意見、「彼らにもっと重い労働を課せ」という言葉に従ってしまった。

この様なことは、日本も含め、今の世界のどこかでも行われていることだが、このたった一つの決断が、ソロモン時代まで一つにまとまっていたイスラエルを分裂・滅亡へと導いてしまう。つまり、この1つの決断がイスラエルにとって致命傷となってしまったのだ。

しかし、私は何も年寄りの意見を全て聞きなさい、とは言っていない。トップの立場であれば、労働者の労働が本当に過酷なのか、もしくは怠けたくて文句を言っているのか疑ってしまうのは致し方ない。だが、日本の会社は、残念ながら後者の方を考える所が多いと思われる。社員の意見や訴えも聞かず、根性がないからだ、とか言って過剰な労働をさせ続ける。これは極端極まりない。だから、電通の若い女性社員の自殺が起こってしまったのだ。

けれども、労働者の言っていることが真実なのかどうかは、一方の意見だけでは判断できない。ましてや、政治経験もほとんどない若者の意見が全て正しい、と考えるのは非常に危険なのである。事実確認もしないで、長老の意見も無視したレハブアムの犯した代償は大きい。その後のイスラエルの歴史を見ると、あまりに大きすぎる。

これを見ると、今の日本の阿倍政府も、アメリカのトランプ大統領も、そして北朝鮮も全く同じ状態になっているのではないかと思う。日本では、森友学園問題や、加計学園問題など、疑惑が後を絶たないが、自民党自ら事実確認をしようともせず、隠蔽し、闇に葬ろうとしている。自民党は昔、様々な考えの人が多くいたようで、間違った方向に行かないように、他の自民党員達の意見を取り入れていたようだが、今の自民党にはそれがなくなってしまっているという。今の政権は、同じ自民党内で批判的な意見を持つ者の意見を全く聞かなくなったようだ。従って、今の安倍政権には、誰もブレーキをかける人がいない、いわゆる暴走状態なのであろう。

また、アメリカではトランプ大統領の極端な保護主義・思想がアメリカ国内だけでなく、世界をも分断している。これらのトップの人達が、果たして北朝鮮の危機を乗り越えられるのか、はなはだ疑問である。

ここから分かるのは、組織や国家のリーダーの器であるためには、偏った思想や考えを持ってはいけない、ということである。一つの偏った考えを支持すれば、分断は免れない。こういう混乱している社会だから、逆に私達は極端な思想に捉われる誘惑が強くなるのではないか?自分の思いや考えに気を付けていないと、私たちは第2次世界大戦前のドイツのナチシズムや、大日本帝国が犯したような過ちにまた陥ってしまうだろう。

極端な思想は、組織や国家だけでなく、私達自身をも滅ぼすことになるのである。