お盆だからというわけではないが、私を育ててくれた恩人の語録を書く。
思い出をたどり、なるべく一言一句たがわず新潟弁でのせる。
明治生まれで、気丈で出来た人だった。
私は、会いたくて会いたくて仕様がない。
この人がいなければ、どうなっていたかしれない。
呼び名は、ちい婆である。
輝、悪い人間にだけはなっちゃなんねど。 15才
馬鹿を、かまっちゃなんねど。 15才
こんげん、でっけい魚釣ってこれるようになったけー。 15才
魚の食い方、教えてやるっや。こうするんど。 8才
大河に身投げて死ぬっやー。 15才
お前の母ちゃんは、出かけるとき、この子を頼むっやと言ってたや。 15才
こんげんでっけいのが、出たいや。(私の快便に) 3才
爪切ってくてや、えー、ほっかー。(頼まれた私の、切ってない手を見せたら) 17才
そんなに短く、爪切るないや。 17才
電気毛布、買いていや。 15才
ちい婆 「補聴器、買いていや」
私 「買わないほうがいい」
(六三郎の悪口が入ってくるので、安易に反対してしまった) 15才
お前、旅に出るんど、その代わり盆と正月には帰って来ねばなんねど。
(長男だけど、父が再婚したので) 15才
何書いてあるんだや? 教えてくれてもいいねかや。
(新聞の見出しを聞いてきたにの、教えなかった。 16才
ちい婆 「輝、どこ行く。輝、どこ行く。あんなに面倒見てやったのによー」
後妻 「萬石屋が待ってるいや、早く行けいや」
私 「……」
(父の後妻に追い出され、寝込んでた、ちい婆を置き去りにした」 18才
オラの目に合うメガネはないと、言われたいや。 15才
オラが出すて。(心臓の、富山の薬代) 15才
こんげん憎っげに刈りやがって。(髪を義妹に刈ってもらって) 15才
オラが死んだら、財布の金、全部取れよ。 16才
オラが死んだら、この写真使ってくれや。(行方不明) 16才
オラの代わりに行ってくれや。(銀行の株主総会の通知を手に) 15才
えー、ほっかー。(私がいい点のテスト用紙を見せたら) 14才
アンカが暖かったら、足のほうにやるんど。(冬は豆炭アンカを使用) 15才
心臓がバクバクしておごったいやー。背中叩いてくれいや。(心臓に持病があった)16才
ーーー死なせてください、お世話になりました、ありがとうございましたーーー 17才
(心臓発作のとき、その手が文字を書く動きをしたので、鉛筆を握らすと綺麗に書いた)
あんげにして、くれたからや。(心臓発作が治まり、私に感謝を) 17才
油つめてくれいや、寒くておごったいや。(灯油ストーブのこと) 18才
取ってくれいや、死んだら真っ暗の所へ行くんだすけ。(部屋のしきりを) 17才
コラッ、何にてる。(私の悪さに) 14才
中学生の時はいい子だっのに、高校になったら悪い子になったいや。 15才
こんな毛布、あったくねいや。 15才
こんないい毛布くれたいや。(私のをあげたら) 15才
飯、柔らかくしてくれいや、こんなんじゃ食えねて。(入れ歯もなく噛めない) 15才
ここと、ここで噛んでるというのに。
足が急に痩せたいや。(私も驚いた) 16才
生きていても、おもしろくねいや。 16才
お前が行ったあと、お前の写真見るのが楽しみだいや。 15才
針が通んねい時は、一日中こうしてるいや。(メガネがなく、不自由してた) 16才
糸通してくれいや。
帰って来たけ、お前の帰ってくるのが一番うれしいや。(学校あがりに) 14才
戦の時は、まっぞの沢に逃げたってよ。(戊辰戦争の時、官軍が隣町まで来た) 13才
まっぞの沢で、這い上がれなくて、爪はがして死んだってよ。(山菜取りに行った人が)13才
敵がどこにいるか、頭上げた時に撃たれたってよ。(太平洋戦争の時、親戚の兵隊が)13才
そんなに使わなくていいて、もったいねえて。(私が髪を洗ってやったら) 16才
フロに溺れそうになったいや、見ててくれいや。 16才
お前のとうちゃんは、葬式の時ワンワン泣いて恥ずかしかったいや。(弟の葬式) 15才
いじりごんにゃく。(新潟弁) 13才
パンパンだったら、どんなに喜んだことかいや。 15才
輝が、一所懸命に見てるいや。(私がテレビ見てると) 15才
おめさん、もっとでっけえ声で言ってくれて、聞こえねえて。(電話に出て) 11才
お前みていに、体の弱いのは子供生まんでもいいと言われたいや。(義母に) 13才
冷てい風が体に毒だいや。 17才
年よりは肺炎ですぐに死ねんだいや。 15才
カゼが治るって良かったと思ってたら、また引くたいや。 15才
顔が長く見えるいや。(鏡の代わりに自転車ミラーを使っていた) 15才
林の、きのこきのこきのこ。(おどけて) 15才
ちい婆 「それ、洗わんでいいて」
私 「洗濯は水の流れで落すんでなくて、こすれて落すだから」
(私が洗濯をするのに、量が少ないのでまとめようとしたら) 16才
長昌寺の和尚が子供のころ、屁かがそうと思って手持ってたら、クソが顔に付いたいや。 (昔聞いた笑い話を) 12才
わたしゃ~ 春日山の~(機嫌のいい時、歌った) 12才
ちょっと、目離してる隙にどっか行ったいや。(弟は直後に溺死した) 12才
まさし(弟)はお前に似ず、色の白い子だったいや。 12才
私 「じいちゃんが死んだ」
ちい婆 「死んだけー」
(私が気付き、洗濯中だったので知らせに行った。手を組んであげてた) 6才
アリがいっぺいて、おごったいや。 14才
タンスの中、綺麗に畳んでたのに、ごちゃごちゃにしやがって。(私に注意) 15才
新婚だったのに、悪かったいや。(東京の、孫の新居へ行った後で) 14才
私 「テープに声録るから、何でもしゃべれ」
ちい婆 「……」 15才
相川には昔、橋が架かってたいや。(近所の昔話) 12才
○○○は食い倒れで滅び、相川は着倒れで滅ぶと言われているうや。(集落の言い伝え)12才
私 「あの世はある」
ちい婆 「ほっかー」 16才
長岡の空襲の時は、空が真っ赤になったいや。 12才
こんげの紙、渡されたいや。(親戚の商店の主から) 16才
金出すから、便所広くしてくれや。後もうちょっとのとこで漏れたいや。 16才
蚊がモコモコ真っ黒になって出てきたいや。 16才
私 「このクワガタ、まさし(弟)だいや。この時期に出てくるわけねえ」
ちい婆 「……」
(ある年の、冬近くに見つけて驚いた) 15才
これ、使いづらいて。(おまるに馴れなくて) 16才
ちょうべだつと言って、昔から頭のいい家系だて。(近所の家のこと) 16才
私 「かあちゃんの名前教えて?」
ちい婆 「(畳に指なぞる)」
私 「セン」
ちい婆 「(首振る)」
私 「セツ」
ちい婆 「(うなづく)
(私は幼少期に生別した母の名前を、教えられた) 11才
ちあきの夢見たいや、笑って楽しそうだったいや。(夭折した妹のこと) 16才
開けるないや、着くまで待ってくれいや。(買い物帰りに、私が先に開けると) 17才
何年かぶりで、背中がつくようになったいや。(私が按摩した時) 16才
まだまだあるけど、一休みします。
思い出をたどり、なるべく一言一句たがわず新潟弁でのせる。
明治生まれで、気丈で出来た人だった。
私は、会いたくて会いたくて仕様がない。
この人がいなければ、どうなっていたかしれない。
呼び名は、ちい婆である。
輝、悪い人間にだけはなっちゃなんねど。 15才
馬鹿を、かまっちゃなんねど。 15才
こんげん、でっけい魚釣ってこれるようになったけー。 15才
魚の食い方、教えてやるっや。こうするんど。 8才
大河に身投げて死ぬっやー。 15才
お前の母ちゃんは、出かけるとき、この子を頼むっやと言ってたや。 15才
こんげんでっけいのが、出たいや。(私の快便に) 3才
爪切ってくてや、えー、ほっかー。(頼まれた私の、切ってない手を見せたら) 17才
そんなに短く、爪切るないや。 17才
電気毛布、買いていや。 15才
ちい婆 「補聴器、買いていや」
私 「買わないほうがいい」
(六三郎の悪口が入ってくるので、安易に反対してしまった) 15才
お前、旅に出るんど、その代わり盆と正月には帰って来ねばなんねど。
(長男だけど、父が再婚したので) 15才
何書いてあるんだや? 教えてくれてもいいねかや。
(新聞の見出しを聞いてきたにの、教えなかった。 16才
ちい婆 「輝、どこ行く。輝、どこ行く。あんなに面倒見てやったのによー」
後妻 「萬石屋が待ってるいや、早く行けいや」
私 「……」
(父の後妻に追い出され、寝込んでた、ちい婆を置き去りにした」 18才
オラの目に合うメガネはないと、言われたいや。 15才
オラが出すて。(心臓の、富山の薬代) 15才
こんげん憎っげに刈りやがって。(髪を義妹に刈ってもらって) 15才
オラが死んだら、財布の金、全部取れよ。 16才
オラが死んだら、この写真使ってくれや。(行方不明) 16才
オラの代わりに行ってくれや。(銀行の株主総会の通知を手に) 15才
えー、ほっかー。(私がいい点のテスト用紙を見せたら) 14才
アンカが暖かったら、足のほうにやるんど。(冬は豆炭アンカを使用) 15才
心臓がバクバクしておごったいやー。背中叩いてくれいや。(心臓に持病があった)16才
ーーー死なせてください、お世話になりました、ありがとうございましたーーー 17才
(心臓発作のとき、その手が文字を書く動きをしたので、鉛筆を握らすと綺麗に書いた)
あんげにして、くれたからや。(心臓発作が治まり、私に感謝を) 17才
油つめてくれいや、寒くておごったいや。(灯油ストーブのこと) 18才
取ってくれいや、死んだら真っ暗の所へ行くんだすけ。(部屋のしきりを) 17才
コラッ、何にてる。(私の悪さに) 14才
中学生の時はいい子だっのに、高校になったら悪い子になったいや。 15才
こんな毛布、あったくねいや。 15才
こんないい毛布くれたいや。(私のをあげたら) 15才
飯、柔らかくしてくれいや、こんなんじゃ食えねて。(入れ歯もなく噛めない) 15才
ここと、ここで噛んでるというのに。
足が急に痩せたいや。(私も驚いた) 16才
生きていても、おもしろくねいや。 16才
お前が行ったあと、お前の写真見るのが楽しみだいや。 15才
針が通んねい時は、一日中こうしてるいや。(メガネがなく、不自由してた) 16才
糸通してくれいや。
帰って来たけ、お前の帰ってくるのが一番うれしいや。(学校あがりに) 14才
戦の時は、まっぞの沢に逃げたってよ。(戊辰戦争の時、官軍が隣町まで来た) 13才
まっぞの沢で、這い上がれなくて、爪はがして死んだってよ。(山菜取りに行った人が)13才
敵がどこにいるか、頭上げた時に撃たれたってよ。(太平洋戦争の時、親戚の兵隊が)13才
そんなに使わなくていいて、もったいねえて。(私が髪を洗ってやったら) 16才
フロに溺れそうになったいや、見ててくれいや。 16才
お前のとうちゃんは、葬式の時ワンワン泣いて恥ずかしかったいや。(弟の葬式) 15才
いじりごんにゃく。(新潟弁) 13才
パンパンだったら、どんなに喜んだことかいや。 15才
輝が、一所懸命に見てるいや。(私がテレビ見てると) 15才
おめさん、もっとでっけえ声で言ってくれて、聞こえねえて。(電話に出て) 11才
お前みていに、体の弱いのは子供生まんでもいいと言われたいや。(義母に) 13才
冷てい風が体に毒だいや。 17才
年よりは肺炎ですぐに死ねんだいや。 15才
カゼが治るって良かったと思ってたら、また引くたいや。 15才
顔が長く見えるいや。(鏡の代わりに自転車ミラーを使っていた) 15才
林の、きのこきのこきのこ。(おどけて) 15才
ちい婆 「それ、洗わんでいいて」
私 「洗濯は水の流れで落すんでなくて、こすれて落すだから」
(私が洗濯をするのに、量が少ないのでまとめようとしたら) 16才
長昌寺の和尚が子供のころ、屁かがそうと思って手持ってたら、クソが顔に付いたいや。 (昔聞いた笑い話を) 12才
わたしゃ~ 春日山の~(機嫌のいい時、歌った) 12才
ちょっと、目離してる隙にどっか行ったいや。(弟は直後に溺死した) 12才
まさし(弟)はお前に似ず、色の白い子だったいや。 12才
私 「じいちゃんが死んだ」
ちい婆 「死んだけー」
(私が気付き、洗濯中だったので知らせに行った。手を組んであげてた) 6才
アリがいっぺいて、おごったいや。 14才
タンスの中、綺麗に畳んでたのに、ごちゃごちゃにしやがって。(私に注意) 15才
新婚だったのに、悪かったいや。(東京の、孫の新居へ行った後で) 14才
私 「テープに声録るから、何でもしゃべれ」
ちい婆 「……」 15才
相川には昔、橋が架かってたいや。(近所の昔話) 12才
○○○は食い倒れで滅び、相川は着倒れで滅ぶと言われているうや。(集落の言い伝え)12才
私 「あの世はある」
ちい婆 「ほっかー」 16才
長岡の空襲の時は、空が真っ赤になったいや。 12才
こんげの紙、渡されたいや。(親戚の商店の主から) 16才
金出すから、便所広くしてくれや。後もうちょっとのとこで漏れたいや。 16才
蚊がモコモコ真っ黒になって出てきたいや。 16才
私 「このクワガタ、まさし(弟)だいや。この時期に出てくるわけねえ」
ちい婆 「……」
(ある年の、冬近くに見つけて驚いた) 15才
これ、使いづらいて。(おまるに馴れなくて) 16才
ちょうべだつと言って、昔から頭のいい家系だて。(近所の家のこと) 16才
私 「かあちゃんの名前教えて?」
ちい婆 「(畳に指なぞる)」
私 「セン」
ちい婆 「(首振る)」
私 「セツ」
ちい婆 「(うなづく)
(私は幼少期に生別した母の名前を、教えられた) 11才
ちあきの夢見たいや、笑って楽しそうだったいや。(夭折した妹のこと) 16才
開けるないや、着くまで待ってくれいや。(買い物帰りに、私が先に開けると) 17才
何年かぶりで、背中がつくようになったいや。(私が按摩した時) 16才
まだまだあるけど、一休みします。