どれだけ 傷つければ
どれだけ わかりあえれば
共に歩けると言うのだろう
時空の無い世界の
感覚と感覚の間で
情意の凍る中で
何を望めると言うのだろう
そうだからこうだと
論理の諸刃を渡ろうと
いつまで続く訳でない
夜と夜を結び
二人だけで居られるならば
光よ 坩堝に帰れ
遠きの日々を思い出し
胸中消えぬ黒点を見詰め
歌姫の唄 流れる中
情意は枯れる
傾いた六畳の
散らばる詩編の中で
何を望んで明日を見る
時間ばかりが過ぎてゆく
壁には一枚の聖母子
微笑んで見詰める
一縷の救いはそこにある
荒んだ空間の
古びた調べの中
業なるゆえ 文綴る
言葉を追う狩人は
瀕死の病人でもありました
お出でお出でのデーモンに
罠を掛けられてしまったのです
閉ざされた世界の
内面に浮く大地の中で
すべて仮象と知りつつ
シニカルな矢を向けるしかないのです
神の兵隊に殺されようと
ラディゲは笑ってました
あまねく 笑ってました
死相を超えた顔貌には
絶望すら ありません
惚けた笑い顔 だけがあるのです
千年に一度近付く彗星のように
あまたの闇から闇へと
空間と次元を超え
妖光は過ぎゆくのです
七色変化の仮面付け
全知の眼持ち
永久から永久へと
尾を引く光は過ぎるのです
妙なる刹那を愛すごとに
こんな光 あんな光
時空の彼方で光ってます
哀れな民を愛しんで
こんな光 あんな光
光ってるのです
アニノムな手記はそこにあり
開かれる必然を待つもの
そこへ宿命人
流れのままに棹される
綴られたは世迷い言
世捨て人の嘆きか憂悶か
とぎれとぎれの戯れ言
字面を追えば 靄の中
あてもなき定め記され
知るや良しなに半歩出て
一抹の風に背を向ける
どう仕様もないと思うとき
そこにある実体 崩れかけ
すべて幻影だと 誰言う声がする
どうこうするうちに
後にも先にも進めず
空が落ちて来て
地が裂けるような日々 送る
滅びの調べであろうか
琵琶の音 悲しく響く
一夜の饗宴
お前の胸に縋る
優しさだけの女
あたえるだけの女
その胸で 我はいやされる
慈母のような女
無償の女
我は 眠りゆく