生まれし雛鳥 今日も鳴く
・・・・ホ ホー ホケキョ
・・・・ホー ホ ホケキョ
・・・・ホッケキョ ホッケキョ ホー ホケキョ
親のお真似し鶯の
まわらぬ舌の 愛しさよ
・・・・ホ ホー ホケキョ
・・・・ホー ホ ホケキョ
・・・・ホケッキョ ホケッキョ ホー ホケキョ
早春 山野に木霊する
小さきもの 生まれたと
青葉青葉も燃えいでる
・・・・ホ ホー ホケッキョ
くずれかけた壁にもたれ
お前は詩を読む
とつとつと読む
中也を とつとつと読む
お前もそうだった
遠からぬ日々
ひとり読んでは 泣いていた
今は 俺の前で
愛するごとに
お前は子供にかえり
硝子だけ 揺れていた
裸電球の下
染みだらけの空間の中
ふたりだけの 夢を見た
その女 トランキライザーを飲む
混濁を晴らすため それを飲む
そして眠くなる
安らかな顔は 幼児のように
その女 酒に飲まれる
理性を誤魔化すため それを飲む
仕方ないと言っては
微かに笑う 天使顔
辛いことが多過ぎて
遣る瀬無さ過ぎて
溺れると 楽だと言う
自分が無いと言う
あの日で止まったと言う
そして笑う ただ笑う
小さきころ
切ないこと ありました
悲しみを持って
根釧をさ迷いました
好きでもない人から
強く惚れられました
無理に結ばれ
ひとみ 狂いました
あなたに会えれば 躁なんです
会えなければ鬱なんです
・・・・と お前は言う
お前の匂い付いてたよ
ここにも付いてたよ
最後の匂い この手紙に
涙があることを教え
笑いが残ってることを教え
心の綺麗さを教え
お前 朝の露
小さきを包み
弱きを励まし
あたえるだけの愛
求めなかった 優しさ
あるは別離
待つは隘路
俺は 俺で
束の間の日々
消えない日々
飽和のなかった日々
ながれた
すべて流れた
すべてすべて もぬけの殻
ただ 流れた 二十四の私
わらえた
お前だから笑えた
みんな忘れて笑えた
ただ笑えた 愛しき日々
綺麗だった
笑みが光ってた
怖かった ただ怖かった
夕焼けだった
風強かった
ひとみ 消えてった きえてった
あかるい夜だった
まばゆい月明かり 二人を照らし
影の濃さを笑うように
皮肉だった
やはり叶わなかった
お前は・・・・そう
よどんだ沼には咲かない
健気な かすみ草
病的な眼差し
永遠の少女
稀有なる純潔
あえても良かった
あえなければ良かった
だけど あえて良かった
どうした、どうした
こ、ここはどこだ? こ、ここは?
お前しっかり歩け
そ、そこじゃない、そこじゃない
右だよ、もうちょっと右だ
いや違う、左だ
そう、そう、その調子
このまま、このままでいいんだ
ゆっくり行け、ゆっくりと
転ぶ時は一緒なんだ
それでなければ、歩いてる時だ
おい、さっきから誰かの目を感じるんだ
冷たく光ってる目だ
お前はどうだ、俺は感じる
なんだろう、どうしたんだろう、この目は・・・・
・・・・たっ、大変だ
おっ、こっ、手足が凍っちまった
やられたよ、お前
時間が凍らされたよ、時間が
俺達は、静物になっちまったんだよ