皆さんはモンタルバーノという人物を知っているだろうか。実はCSのAXNミステリーで放送されている、イタリアはシチリアの警視の名前である。原作はアンドレア・カミッレーリ、イタリアンミステリー界の大御所である。このドラマが大好きになってからずっと見ていたが、主役のルカ・ジンガレッティの魅力が素晴らしい。脇役のファツィオ刑事やミミ副署長にカタレッラ、それに女友達のリヴィアなどなど、どれも個性的でドラマを盛り上げる。ストーリーも一般的な殺人事件にありがちな推理物ではなく、イタリアらしいというか、どちらかと言うとモンタルバーノ警視の人間性を前面に出した「イタリア版桃太郎侍」である。そしてシチリアの、日本とまるで異なる風景も美しく見ているだけで楽しい。少し前に放送されていて2、3本は録画で取ってあるが、この前偶然に番組表で見つけてワクワクして視聴した。こういう隠れた名作番組を見ることが出来るのがCSの魅力である。
今回の事件に「アッタルド判事」というのが出てきて謎のキーパーソンなのだが、おっちょこちょいのカタレッラが電話を取り次ぐのに名前を間違えて(彼はしょっちゅう間違える)「アッカルド」と伝えたら、モンタルバーノがバイオリンを弾く真似をして「アッカルドじゃないだろう、アッタルドだ」とたしなめる場面があった。クラシックファンじゃないと分からないジョークだが、私は大笑いしてしまった。このサルバトーレ・アッカルドはイタリアでは知らない者のない有名人なんだな、と思ったのでついつい嬉しくなってしまったのである。彼は私の好きなバイオリン奏者の一人で、パガニーニの協奏曲とカプリース・バッハの無伴奏やモーツァルトの協奏曲とソナタ、それにブルッフのコンチェルト集など、彼のレコードを買い集めたことがあって、いまでもCDをスマホに入れて楽しんでいる。輝かしい美音と完璧なテクニックで奏でられる名曲の数々には十分聞くだけの価値がある。そういえばしばらく聞いていなかったが、改めて聞いてみると「やはり良い!」。正統派というのがまさにピッタリである。彼の演奏でチャイコフスキーとメンデルスゾーンのコンチェルトを聞いた事があったが、いまAmazonで調べると出ていた。ふと懐かしくなって買ってみようかな、なんて思ったりして想像するのも楽しいものである。
えーと、話はアッカルドではなくモンタルバーノだった。ドラマは勿論イタリア語で進んでいく。私はこのイタリア語に魅せられてその昔、無謀にもモンタルバーノのイタリア語原書をAmazonで購入して辞書を片手に挑戦したことがあった。イタリア語というのは、なんせ「辞書を引く」のが難しすぎてお手上げなのだ。慣れればどうってことはないのだろうが(イタリアじゃ子供がしゃべっている!)、片言の英語力を使って「伊英辞書」のアプリでどうにかなるかと思ったが全然無理だった。結局最初の1頁目を3日かけて3割程度「想像を交えて読解」した段階で「轟沈」してしまった。英語の原書はいままで相当数読みこなしていて、ミステリーやディテクティブ物であれば、辞書を引かずに「楽しんで」読み切る自信はあったのだが、所詮イタリア語の前には「自爆」である。夢はラテン語・ギリシャ語を覚えて、最後は「アラビア語に挑戦する」だったがムリだったようだ。もう一度、子供時代に戻ってエジプトにでも移住すれば、3年もすればラクラクしゃべれるようになるさ、と言っては見たがちょっと哀しい。ヨーロッパ語は日本とは違って「発音言語」だから、書いた文字には漢字のような「意味」はない。耳で覚えるしか方法はないのだ。残念!
イタリア語は諦めたが、ドラマ「モンタルバーノ」の素晴らしい魅力は十分理解できるし、好きな理由の大半は勿論主役のルカ・ジンガレッティの個人的魅力である。今回のシリーズでは前回より少々年を取っているが、ヴィガータ署の署長としての厳しい中にも温かみのある彼の表情がたまらない。色々と褒め出したらキリがないのだが、とにかく「澄んだ美しい眼」がカッコいいのである。
ちょうど海外人気ドラマというランキングをネットで見つけ面白そうなので紹介するつもりだったが、43位「名探偵モンク」、37位「パーソン・オブ・インタレスト」、23位「シャーロック」くらいしか見てないことに気がついた。ちなみに、1位「ブレイキング・バッド」、2位「Xファイル」、3位「ER」、4位「ツイン・ピークス」、5位「フレンズ」、6位「ウォーキング・デッド」、7位「グリー」、8位「ハウス・オブ・カード」、9位「24」、10位「ストレンジャー・シングス」、そして11位「マイアミ・バイス」である。皆さんもご存知の「クリミナル・マインド」「CSI」「デスパレートな妻達」「セックス・アンド・シティ」などもランクに入っている。私が好きなのは1話完結の「シャーロック&ワトソン」で、謎解きのスピード感が日本のとは比べ物にならない位早い。7月後半から新シーズンが始まるらしいから今から楽しみだ。だがこれらはアメリカのドラマである。アメリカのドラマは事件の筋書きを追っかけるのが特徴で、あまり人間の深い部分に立ち入らないのが決まりのようだが「ちょっと私の好み」ではない。
私は2時間のイギリス・ミステリーがどちらかと言えば好きである。「刑事コロンボ」は一世を風靡して、初っ端から犯人が分かっているという新展開が魅力の一つだったのだが、再放送で見てみると案外つまらなかった。視聴者がドラマに何を求めるかという点では、アクションとかバイオレンスとか残虐なものを求める人がいる一方で、謎解きに興味を覚える人もいる。そこに美しい風物や人情や珍しい土地の生活などの要素が組み合わさると、色々と幅が出てくるのだ。そんなローカルな魅力の刑事ドラマが「主任警部モース」であり、私のお気に入りである。そこからスピンオフした「ルイス警部」も良い。モースは独善的で気位が高いが、常にジャガーの真っ赤なクラシックカーに乗っているオシャレな警部である。そして原作はコリン・デクスター、イギリス人の最も愛するディティクティブ作家である。やっぱり本で売れているものは内容がしっかりしていて、文学的でもありドラマとしても「単なる謎解き」以上のものが描かれて楽しめる。
いったいにミステリー・ドラマというのは犯人を追い詰めて行って、最後にはとうとう動かぬ証拠を掴むというのが大筋である。作品もほとんどが刑事や探偵の鋭い勘や地道な聞き込みの末にふとした所から思わぬ事実が浮かび上がる、という寸法である。だから再放送では「その面白さの殆どの部分がバレてしまっている」のだから見てもしょうがないという事になる。ただ人間は忘れっぽいので、5年もすると「これ見たような気がするけど、なんだっけ」になるのである。モンタルバーノやモースは筋書き自体が複雑なので、そういう意味でもハズレがないのだ。が、それを差し引いても、主人公のキャラクターが魅力に溢れているのでまた見てしまうのである。いわばクラシックの名曲が「隅々まで知り尽くしているにも関わらず」また聞いてしまう、というのに似ているとも言える。こういうドラマが日本にも作れないだろうか、と考えて見た。それは「こういう魅力的な中年男性が日本人にいるだろうか」ということでもある。
勿論、いないとは言えない。だがその人物を描くに当たって、果たして日本の風俗・環境・思想・習慣は「人物に見合ったレベルまで到達している」かというと、疑問符がつく。つまり日本の刑事物の主役になる男性は、モンタルバーノのように格好いい中年に相応しい生活を送れているかと問えば、いまいち心許ないのである。と言うわけで、まだ海外ドラマから目が離せない私でした。
今回の事件に「アッタルド判事」というのが出てきて謎のキーパーソンなのだが、おっちょこちょいのカタレッラが電話を取り次ぐのに名前を間違えて(彼はしょっちゅう間違える)「アッカルド」と伝えたら、モンタルバーノがバイオリンを弾く真似をして「アッカルドじゃないだろう、アッタルドだ」とたしなめる場面があった。クラシックファンじゃないと分からないジョークだが、私は大笑いしてしまった。このサルバトーレ・アッカルドはイタリアでは知らない者のない有名人なんだな、と思ったのでついつい嬉しくなってしまったのである。彼は私の好きなバイオリン奏者の一人で、パガニーニの協奏曲とカプリース・バッハの無伴奏やモーツァルトの協奏曲とソナタ、それにブルッフのコンチェルト集など、彼のレコードを買い集めたことがあって、いまでもCDをスマホに入れて楽しんでいる。輝かしい美音と完璧なテクニックで奏でられる名曲の数々には十分聞くだけの価値がある。そういえばしばらく聞いていなかったが、改めて聞いてみると「やはり良い!」。正統派というのがまさにピッタリである。彼の演奏でチャイコフスキーとメンデルスゾーンのコンチェルトを聞いた事があったが、いまAmazonで調べると出ていた。ふと懐かしくなって買ってみようかな、なんて思ったりして想像するのも楽しいものである。
えーと、話はアッカルドではなくモンタルバーノだった。ドラマは勿論イタリア語で進んでいく。私はこのイタリア語に魅せられてその昔、無謀にもモンタルバーノのイタリア語原書をAmazonで購入して辞書を片手に挑戦したことがあった。イタリア語というのは、なんせ「辞書を引く」のが難しすぎてお手上げなのだ。慣れればどうってことはないのだろうが(イタリアじゃ子供がしゃべっている!)、片言の英語力を使って「伊英辞書」のアプリでどうにかなるかと思ったが全然無理だった。結局最初の1頁目を3日かけて3割程度「想像を交えて読解」した段階で「轟沈」してしまった。英語の原書はいままで相当数読みこなしていて、ミステリーやディテクティブ物であれば、辞書を引かずに「楽しんで」読み切る自信はあったのだが、所詮イタリア語の前には「自爆」である。夢はラテン語・ギリシャ語を覚えて、最後は「アラビア語に挑戦する」だったがムリだったようだ。もう一度、子供時代に戻ってエジプトにでも移住すれば、3年もすればラクラクしゃべれるようになるさ、と言っては見たがちょっと哀しい。ヨーロッパ語は日本とは違って「発音言語」だから、書いた文字には漢字のような「意味」はない。耳で覚えるしか方法はないのだ。残念!
イタリア語は諦めたが、ドラマ「モンタルバーノ」の素晴らしい魅力は十分理解できるし、好きな理由の大半は勿論主役のルカ・ジンガレッティの個人的魅力である。今回のシリーズでは前回より少々年を取っているが、ヴィガータ署の署長としての厳しい中にも温かみのある彼の表情がたまらない。色々と褒め出したらキリがないのだが、とにかく「澄んだ美しい眼」がカッコいいのである。
ちょうど海外人気ドラマというランキングをネットで見つけ面白そうなので紹介するつもりだったが、43位「名探偵モンク」、37位「パーソン・オブ・インタレスト」、23位「シャーロック」くらいしか見てないことに気がついた。ちなみに、1位「ブレイキング・バッド」、2位「Xファイル」、3位「ER」、4位「ツイン・ピークス」、5位「フレンズ」、6位「ウォーキング・デッド」、7位「グリー」、8位「ハウス・オブ・カード」、9位「24」、10位「ストレンジャー・シングス」、そして11位「マイアミ・バイス」である。皆さんもご存知の「クリミナル・マインド」「CSI」「デスパレートな妻達」「セックス・アンド・シティ」などもランクに入っている。私が好きなのは1話完結の「シャーロック&ワトソン」で、謎解きのスピード感が日本のとは比べ物にならない位早い。7月後半から新シーズンが始まるらしいから今から楽しみだ。だがこれらはアメリカのドラマである。アメリカのドラマは事件の筋書きを追っかけるのが特徴で、あまり人間の深い部分に立ち入らないのが決まりのようだが「ちょっと私の好み」ではない。
私は2時間のイギリス・ミステリーがどちらかと言えば好きである。「刑事コロンボ」は一世を風靡して、初っ端から犯人が分かっているという新展開が魅力の一つだったのだが、再放送で見てみると案外つまらなかった。視聴者がドラマに何を求めるかという点では、アクションとかバイオレンスとか残虐なものを求める人がいる一方で、謎解きに興味を覚える人もいる。そこに美しい風物や人情や珍しい土地の生活などの要素が組み合わさると、色々と幅が出てくるのだ。そんなローカルな魅力の刑事ドラマが「主任警部モース」であり、私のお気に入りである。そこからスピンオフした「ルイス警部」も良い。モースは独善的で気位が高いが、常にジャガーの真っ赤なクラシックカーに乗っているオシャレな警部である。そして原作はコリン・デクスター、イギリス人の最も愛するディティクティブ作家である。やっぱり本で売れているものは内容がしっかりしていて、文学的でもありドラマとしても「単なる謎解き」以上のものが描かれて楽しめる。
いったいにミステリー・ドラマというのは犯人を追い詰めて行って、最後にはとうとう動かぬ証拠を掴むというのが大筋である。作品もほとんどが刑事や探偵の鋭い勘や地道な聞き込みの末にふとした所から思わぬ事実が浮かび上がる、という寸法である。だから再放送では「その面白さの殆どの部分がバレてしまっている」のだから見てもしょうがないという事になる。ただ人間は忘れっぽいので、5年もすると「これ見たような気がするけど、なんだっけ」になるのである。モンタルバーノやモースは筋書き自体が複雑なので、そういう意味でもハズレがないのだ。が、それを差し引いても、主人公のキャラクターが魅力に溢れているのでまた見てしまうのである。いわばクラシックの名曲が「隅々まで知り尽くしているにも関わらず」また聞いてしまう、というのに似ているとも言える。こういうドラマが日本にも作れないだろうか、と考えて見た。それは「こういう魅力的な中年男性が日本人にいるだろうか」ということでもある。
勿論、いないとは言えない。だがその人物を描くに当たって、果たして日本の風俗・環境・思想・習慣は「人物に見合ったレベルまで到達している」かというと、疑問符がつく。つまり日本の刑事物の主役になる男性は、モンタルバーノのように格好いい中年に相応しい生活を送れているかと問えば、いまいち心許ないのである。と言うわけで、まだ海外ドラマから目が離せない私でした。
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