明日香の細い道を尋ねて

生きて行くと言うことは考える事である。何をして何を食べて何に笑い何を求めるか、全ては考える事から始まるのだ。

宝飾業界の不必要なコストを削減する

2017-07-18 21:00:00 | 科学・デジタル
私の会社は宝飾品を扱う製造卸業である。宝飾業に限らず、商品を扱う商売である程度の売り上げを上げている会社では、商品の受け払い台帳は不可欠である。何故なら決算をして利益を確定しなければいけないからである。その利益の基礎になるのが「在庫」である。昔は手作業で台帳を管理していた。英語で経理のことをブック・キーパーというのは、経理の基本が台帳管理だからである。だが商品管理としての台帳は、単に出入りを記録するだけでは役に立たない。そこには宝飾業界に特有の「スペック」が、必須項目として重要になってくる。例えばダイヤのネックレスがあるとする。そこにはカラットやカラーやクラりティといった3C(カットを入れて4Cという場合もある)が、販売価格を決める決定的な要素として明示されている。それがもし間違っていたりすると「どえらいことに」なってしまうのだ。

宝石、特にダイヤはスペックで値段が決まる。EカラーとFカラーでは値段が全然違う。だから商品のスペックは間違いなく記録されねばならない。私は以前商品台帳の管理業務を担当していたので、コンピュータに登録する作業が「とてもしんどかった」のである。もともと地道な「伝票の入力作業」などには向いていない性格の上に、細かいスペックを超正確かつ延々と打ち込み続けるなんて、私には到底無理だったのだ。それで今だから言うのだが、何とかしてこの作業を軽減できないものかと、そればっかり考えて仕事をしていたようなものであった。幸い課長になった私は打ち込み作業から解放され、ようやく奴隷のような境遇から脱出することが出来たのである。目出たし目出たし。

さて私は楽になったが、今でも会社は相変わらず面白くもない非生産的な作業に、多大な人員と時間を費やしている。無駄ではないか。そこでコンピュータでこの問題を解決するにはどうしたらいいか、長年夢見て来た解決策をご紹介しよう。もちろん我が社一人が楽するのではなく、業界全体が無駄を省き、コスト削減の効果が期待できる画期的な方法である。

それは、商品管理番号を製造から小売まで「同じにする」ことである。

スペックを表示する項目も、もちろん同じにする。詳細は後で説明するが、要は業者間での受け渡しの度ごとに、「違う番号・違うスペックの違うフォーマット」でデータをやりとりしていることが、諸悪の根源である。だから同じ内容のデータを製造から小売まで「ずっと商品にくっつけておけば」、再度入力する必要は無いのだ。例えば「A1000番」というダイヤのリングがある。このスペックが1、5ctでEのVS1だったとしよう。このA1000=1、5ct云々というデータを受け取った業者は、自社のコンピュータにデータをテキストで取り込み、「自社の商品管理台帳に追加」すれば終了である。

一切人間の手入力は必要ないし、普通なら30分か1時間かかるところを「ものの5分」で済む上に、商品データを取り込む画面さえ見ていればいいのだから、これほど楽な事は無いといえる。商品を納めるほうも機械で読み取り、受け取るほうも機械で読み取るから、間違いが起こりようのないシステムである。間違いがあるとすれば、最初の製造業者が入力を間違えるだけであるから、チェックは一回でいいと言えるのだ。このシステムを業界全体で導入すれば、その削減可能なコストたるや「10億円では少なすぎる」と私は思うのだが、どうであろう。

製造から小売まで商品自体は同じものが流れているのに、それぞれ中間業者で独自の番号をつけるから「話がややこしくなる」のである。日本国内で販売される商品全てが、流通の過程に関係なく「固有の通し番号」で管理されていたら、いつどこででも商品一個一個の「製造元から流通経路までが一目瞭然」となり、犯罪捜査の証拠品割り出しにも即座に回答が出て、犯人特定だって超簡単になるなど、メリットは計り知れない。そんなに範囲を広げなくても私の仕事の範囲だけで言うならば、商品管理台帳などは「おちゃのこさいさい、屁のカッパ」となること請け合いである。商品管理に時間がかからないならば、仕入れた商品をすぐに使うことができるし、場合によっては「仕入れる前に展示会で売る」ことだって可能なのである。何故なら「業者が持ち込んだ商品を、バーコードで読み取れる」から、自社出品商品と同じ扱いで「売上プログラムが組める」のである。素晴らしいではないか!

良いことは山ほどある。反面、都合の悪いことは「私は思いつかない」のだ。私は心の底から「そうならないかなぁ」と願っているのだが、多分ならないだろうなぁと思っている。商品がどこの業者のものか分かってしまうとか、デパートなどでは自社品ではないとお客に知らせるようなものだとか、要するに自分のところだけが可愛いのである。これではいつまでたっても改革など起きようがない(一部のデパートでは持ち込んだ商品でも全部、自社の値札をつけないと並べてもらえない)。現実と違ったことをやっているのに表面だけ誤魔化してユーザーを騙すようなやり方は、古い商売手法として、今に淘汰されていくのじゃないかと思うのだが。

何れにしても、まだまだ会社間の垣根を取り払う「画期的な手法」は、現実のものになってはいない。なぜなら普通の人間は、「本当に不必要なものが何なのか」、わかってないからである。その代わり、小さな改善には「物凄い努力と意欲」を示すのだ。くだらないよなぁ。

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