明日香の細い道を尋ねて

生きて行くと言うことは考える事である。何をして何を食べて何に笑い何を求めるか、全ては考える事から始まるのだ。

ゴルフ通信(15)勝みなみ、優勝の陰に西村優奈の涙あり

2021-10-04 18:41:29 | スポーツ・ゴルフ

西村が2日目に8アンダーノーボギー63というビッグスコアを出した時点で、「3週連続優勝」もあるかも?、と誰しもが期待していたと思う。しかし彼女に何が起きたのか、前日の圧倒的なバーディラッシュは影を潜めて、あれほど入っていたパターがことごとくカップの前で「くるり」と外れ、結局この日2オーバーと、スコアを伸ばすことは出来なかった。代わりに首位に立ったのが「勝みなみ」である。

最終日の勝のゴルフは、「天馬、空を行く」がごとき圧勝だった。ドライバーが「飛んで、しかも曲がらない」。そしてパターが面白いように決まるのだから「敵無し」である。一時、飛距離が伸びた時に「フェアウエイキープ率が悪い」と周りから批判も浴びた勝だが、この日は安定してフェアウエイの真ん中に打ち続けたのは大きい。西村のようにピタピタとピンそばに打ってくるアイアンの切れはないが、それを補って余りある「必殺のパター」を持っている。同じく「圧倒的飛距離」を持っている原英莉花と比べれば、この差はとてつもなく大きいと言える。

やっぱり試合で勝つのはパターが上手い選手である。飛べばその分ゴルフは楽になるが、プロの場合アイアンでもウッドでも、それ程の差があるわけではない。やっぱり3m、5mを入れてくる選手が、スコアを伸ばすのは間違いないだろう。勝はアマチュアの時からパターが抜群に上手かった。西村も上手いが、今日は何故か入らなかった。これは選手の意図するラインと、実際のグリーンの曲がり幅が合わなかったのだろう。パターは技術もあるが「感覚」の合う合わないが、大きく結果を左右する。多分、同じグリーンを読んだとしても、日によってあるいは選手の調子によって、曲がり幅が「違って」見えるのだと思う。私も取手桜ヶ丘の易しいグリーンで、調子の良い日はワンパットで入った距離が、こないだは「ことごとく外れて」いた。ゴルフは思ったことと実際出来ることが、違うのが当たり前。それが「どのくらい違うのか」が分かれば、勝機は見えて来る(と思う)。

去年と今年のトーナメントを概観すると、去年は渡邉彩香の涙の復活優勝に始まり、笹生優花の衝撃の2連勝のあと、小祝さくら・永峰咲希と若手が勝利。それから古江彩佳・原英莉花・稲見萌寧がツアーを席巻した。申ジエの2勝を挟み、終盤は古江彩佳の強さが際立つ展開で、原のメジャー2勝目で2020年は幕を閉じた。もはや世代交代は明らかだと、誰もがそう感じた1年である。

それが年が明けた開幕戦で小祝さくらが勝って、賞金女王へ「まっしぐら」かと思ったら、ここから稲見萌寧の「怒涛の連勝劇」が始まったのである。7戦4勝と他を圧倒した。もうこうなったら、独走する稲見を誰も止められない。何かツアーがつまんないな、と思い始めた時に、上田桃子の「ベテラン勢の意地の勝利」が盛り上げてくれた。すると、笠りつ子・青木瀬令奈・菊地絵理香・若林舞衣子と、一度スポットライトから消えていた選手達が、続々優勝を飾る「感動シーン」が躍動する。これを毎週見られるというのは、年を取ったゴルフファンには堪らないだろう。勿論、勝みなみの久々の優勝に加えて、堀琴音の復活と鈴木愛の復帰もあった。女子ツアーは出てくる選手が多彩である。

そしていよいよ7月末から吉田優利・小祝さくら・稲見萌寧が2勝ずつをあげると、西村優奈の2週連続優勝があって今回、日本最高峰のメジャー「日本女子オープン」を迎えたのである。真の女王は誰なのか?。私は賞金女王が即ち「一番強い選手」、だとは思っていない。確かに稲見は全てをソツなくこなした上、「距離感」が素晴らしくて強い選手である。しかし私の思う「強さ」と言うのは、絶体絶命の場面から「ミラクルショットを連発」して勝負をひっくり返えす底力がある選手である。「観客を熱狂に導くドラマ」を見せてくれる選手と言うのが、真に強い選手では無いだろうか。それを決めるのは「まだ早い」と思っている。確かに勝は「飛んで曲がらないドライバー」と、一度ツボにハマれば「ドバドバ入れてくるパター」を持っている、今最も女王に近い存在である。しかしゴルフは調子が物を言う。今回、8バーディーノーボギーの63を出した西村が、3日目・4日目とスコアを崩して涙をのんだ。

特に最終日は西村のパターが入らなくて、「イライラする表情」をカメラが捉えていたが、どうにもならないもどかしさに絶望する姿は、見ていて辛いものがある。これがたった2日前に「満面の笑み」を振りまいていた同じ選手だとは思えないくらい「真っ暗」なのだ。ここまで落ち込んだメンタルを、どうやって「戦えるレベル」まで持って行くのか。午前中の結果を見ると表情が暗く、既に「諦め」が漂っているように見える。西村にしてみれば2日目の63で、「3週連続優勝」もあるんじゃないか?、と思ってしまったところが、ミスなのだろう。知らず知らずのうちにショットの乱れが優勝を遠ざけてしまっていた。勿論彼女は分かってはいただろうと思う。それまでのリードは「無いもの」と考えて3日目をスタートしたに違いない。それでも調子が出なかったのは、よくよく「ツキがなかった」ものと考えるしかないだろう。稲見萌寧もコニカミノルタを勝って以来、3試合「音なし」である。

さて今年はあと8試合を残すのみとなった。マスターズGC・TOTOジャパンクラシック・ツアーチャンピオンシップと高額賞金の試合が続く。果たして小祝さくらは「戻ってくる」のか?。今回は予選落ちしたが、辻村コーチの元でスイングを見直して、もう一度「優勝に絡む活躍」を期待したい。最終戦のツアーチャンピオンシップは、勝・小祝・西村・稲見・古江の5人で優勝争い、というのが私の理想だけど、そう上手く行くかなぁ。

何れにしてもこの戦いは、このコロナ禍を吹き飛ばす「国内最高のイベント」になるのは間違いないと私は思っている。今回は小祝に勝たしてあげたいけど、あと2勝はしないといけないなぁ。特に高額賞金の3試合のうち2つは勝ちたい。それまでに調子を戻せるかどうか。小祝さくらの孤独な戦いが今、始まる・・・


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