えっ! 今頃、咲くのか!
その花の名前から梅雨の時期に咲くのかと思っていたので意外だった。
俳句でも秋の季語になっている。
露草も露のちからの花ひらく /飯田龍太
「畑141 /春の日」で書いた露草。
なんとも清らかな青い花を、雑草の中に咲かせるのはもったいない。
そう思って、畑の畔に芽を出していたのを、家に持って帰って鉢に植えた。
畑でしょっちゅう見ている花だが、育ててみると意外なことだらけの植物だ。
横に根を伸ばすのかと思っていたが、直根で地中深くに根を伸ばす。
最初は小さな鉢に植えていたのを大きな鉢に植え替えた。
茎が土に触れると、あっという間に根を出す。
そこからまた茎を伸ばす。
綺麗な花を咲かせなければ、ずいぶんと厄介な雑草だ。
黄緑色した包葉(ほうよう)という、二枚貝のような変形した葉の中から花を咲かせる。
強い日光に当たるとしぼんでしまう一日花だ。
だと思っていたが、次の日に、また花を咲かせている。
なんのことはない、包葉の中には三つ蕾があって一日おきに咲くのだ。
鮮やかな青色を引き立てている黄色いのは飾り雄しべで、その下からにょきっと伸びている白い二分音符のようなのが本物の雄しべ。
黄緑と青、そして黄色と白が、この花の美しさを奏でているのだとわかる。
美しい青色は奈良時代から染料に使われていた。
布にこすりつけるとすぐに色が着く。
そこから「つき草」という別名がついた。
清少納言は『枕草子』の中で「つき草、うつろひやすなるこそうたてあれ(ツユクサの青色が、すぐに色あせてしまうのにはがっかりしちゃう)」と言っている。
色は着きやすいが、すぐに退色してしまうのだ。
だからといって、がっかりすることはない。
退色しやすいのを利用して、染物の下絵の絵の具に利用して発展したのが友禅染なんだから。