河内国喜志村覚え書き帖

大坂の東南、南河内は富田林市喜志村の歴史と文化の紹介です。
加えて、日々の思いをブログに移入しています。

畑176 / ひねくれ者

2024年08月31日 | 菜園日誌

台風がやってくると、まず、しなければならないのはビニールハウスのビニールを剥がすことだ。
さて、側面だけにしようか……、天井も剥がそうか……?
迷った末に、備えあれば憂い無し!
天井のビニールも剥がした。
それから二日。
台風は未だに紀伊半島の先っぽ。
風は無いが雨が続く……。
天井を剝がさなければよかった……
悔やんだとて仕様がない。
なにしろ相手は、とびっきりひねくれた台風なのだから。

周りの人に否定ばかりされると自己肯定感が低くなって、性格がひねくれてくるのださいう。
素直に自分を表現できなくなる。
台風も高気圧に頭を押さえつけられると、ひねっくれてコースをかえてしまう。
近畿直撃が四国直撃となって、結果、九州をぐるっと回って、四国を横断して、近畿を縦断してしまう。
なんとも困った台風である。

ひねくれ者が去る間は秋野菜の種まき。
この時期は、芽が出てからがたいへんだ。
日によく当てたいが、直射日光はきつすぎる。
かといって、半日陰にすると、ひょろひょろと茎が伸びてしまう。
苗が弱るとすぐに虫がつく。
素直に育つように、空模様をみながら日向に出したり日陰に入れたり。
ひねくれ者の苗にするわけにはいかない。

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畑175 / 朗らか

2024年08月26日 | 菜園日誌

朝の5時半ごろに畑に着いた。
ちょうど日の出。
山の端の東雲(しののめ)の空が、ほがらほがらと明けてゆく。
猛暑続きだが、この時間帯は、さすがに涼しい。
「春はあけぼの」だが、夏のあけぼのも捨てたものではない。
どっかりと椅子に座って、しばしは夏の曙を楽しむ。

日の出は、その日のスタートだが、平安時代の女性にとっては、切ない時間帯でもあった。
 しののめのほがらほがらと明けゆけばおのが後朝 (きぬぎぬ) なるぞ悲しき /古今集・恋三
平安時代の貴族は「通い婚」。
夫婦は同居せずに、男が女の実家に通う。
一夜を共にする前に、互いの下着(襦袢・じゅばん)を重ねてコトに入る。
コトが終わった明け方、男は出勤するために帰るのだが、昨夜に重ねていた下着(衣・きぬ)を交換して帰る。
女にとっては、男が次も 私の所へ来てくれるだろうかと、悩ましい「衣衣の別れ」だ。
楽しかった夜が「ほからほがら=ほのぼのと明るい」と明けてゆく一方で、男と別れなければならない女には、切なさがつのっていく。
果たして、あの君は、今度は何時に来て下さるのでしょうか……?

さて、なんとも悩ましい台風が近づいているので、今日は、ビニールトンネルのビニールを撤去を予定していた。
ところが、朝の台風情報を見ると、かなり西寄りにコースが変わっている。
おいおい、いつ来るねん!
そこで、予定を変えて、台風で倒れそうなトマトとスイカの撤去。
ほんでもって、ビニールの除去は夕方にしよう。
ところが、夕方、畑へ行こうとするが、台風の影響で20分後に雨の予報なので中止。
しかし、雨は降らずに、きれいに晴れている。

なんとも、不愉快で、悩ましく、切ない台風!おいおい、どないなってるねん!

古語の「朗ら=ほのぼのと夜が明ける」から派生したのが「朗らか」という語。
本来は、気象を表す語だったのが、明るいイメージから、物事の状態にも遣われ、人の性質を表す「朗らか」になった。
「ほがらか」という言葉は、自然と一心同体に生きて来た日本人の気持ちが込められた美しい言葉なのだ。
はるか南方から、艱難辛苦の末にたどりついた台風10号よ!
朗らかに過ぎ去れ!

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畑174 / リフレッシュ

2024年08月20日 | 菜園日誌

朝、目覚めると、ガレージのトタン屋根を打つ雨音。
もう少し眠ろう……。
ほぼ一ヶ月ぶりだろうか。
朝方に、まとまった雨が降った。
小止みの雨の中、畑へ行くと、久々に土は真っ黒。
ゲリラ豪雨は困りものだが、これっくらいの雨なら、毎日でもいいから降って欲しい。
オモダカに留まっているシオカラに吹くのは秋の風。
今日は、のんびり過ごすとするか。

23日は旧の地蔵盆。
「そろそろ、大根でも植えようか」
地蔵盆が過ぎると秋の農事の始り。
今年は、待ちきれなくて、育苗に30日かかるキャベツ、ハクサイ、ブロッコリーだけ、種を蒔いた。
16日の一粒万倍日に蒔種して、ぼちぼち芽が出だした。
夏場の育苗は、ここからがたいへん。
双葉の間に陽をよく当ててやらないと、ひょろひょろと茎が伸びてしまう。
太陽の様子をみながら、半日陰から出したり入れたりしなければならない。

なんやかやしているうちに、ネットで注文した種ニンニクが届いた。
自家採種したニンニクを五年ほど繰り返し使っていたが、病気になるのが増えてきたので、久々に更新することにした。
野菜もたまにはリフレッシュする必要がある。
味の濃い嘉定種のホワイト系が70個。
一個に8片あるとして560片、その中の大きい400片を植える計算でいる。
暑い日が続いているが、頭の中は秋。
それまでは、しばしリフレッシュして、朝日にしっかり当たるとしよう。

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茶話143 / 涼っしーい! 

2024年08月15日 | よもやま話

暑いときに、熱いうどんを食べれば、さぞかし暑いだろうと思っていたら、今日の昼食は熱いうどんだった。
まちがいなく暑かった。
外は、四川風の味付けで、中華鍋で炒められているような暑さ。
噴出する汗。
そのせいか、クーラーの効きも悪い。
涼し気な音楽はないかと探すと、「ジャングルの朝」というヒーリング音楽があった。
ギャーギャーと鳥が泣き叫び、キーキーと猿が木々を渡る。
余計に暑くなった。

暑さで、久しく遠出をしていなかったので、涼しい所へ旅に出た。
年寄りに、海辺はハイテンポすぎるので、山あいの静かな旅館を予約した。
黒鉄も溶けよと照り付ける下を、フェラーリのクーラーをがんがんに効かして車は走る。
どこにもありそうな麓の街で昼食をとって、夏木立に囲まれた、ほの暗い舗道へと入って行く。
もはや、クーラーは必要なかろうと、車の窓を開ける。
隣の相方の膝に、ちょこんと座っていた犬のエンゼルが、窓から顔を出して、涼しい風に毛をなびかせる。
やがて、古びた屋根の一角が杉の梢に現れて、目的の宿に着いた。
ペット同伴可能だが、畳の間はご遠慮くださいと、部屋続きの、外に面した広縁に犬のゲージが用意されている。
レッグカバーとマナーパンツが用意されているので、寝るとき以外は犬と一緒に過ごしてもかまわないという暗黙の約束。
  ◇
風呂や食事には、まだ早いので、三人で外を散歩する。
見上げると、皆これ百年の古木で、滴る露の一つ二つが襟もとに落ちる冷たさ。
片方には、苔むした石清水が、溢れんばかりに玉の雫をほとばしらせて、今日までの暑さを吹き飛ばしてくれる。
それが珍しいのか、エンゼルが清水に近づき、右前足をそっとつける。
その冷たさに驚いたのか、クウと言って、私たちを見る。
その、なんとも言えない可愛いさ……。

また、やってしまった!
ペット? フェラーリ? トラベル?
そんな余裕なんぞ無い!
また……、妄想してしまった!
なんとも……物憂げな、お盆の昼下がりである。

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茶話142 / つき草

2024年08月14日 | よもやま話

えっ! 今頃、咲くのか!
その花の名前から梅雨の時期に咲くのかと思っていたので意外だった。
俳句でも秋の季語になっている。
 露草も露のちからの花ひらく /飯田龍太
「畑141 /春の日」で書いた露草。
なんとも清らかな青い花を、雑草の中に咲かせるのはもったいない。
そう思って、畑の畔に芽を出していたのを、家に持って帰って鉢に植えた。

畑でしょっちゅう見ている花だが、育ててみると意外なことだらけの植物だ。
横に根を伸ばすのかと思っていたが、直根で地中深くに根を伸ばす。
最初は小さな鉢に植えていたのを大きな鉢に植え替えた。
茎が土に触れると、あっという間に根を出す。
そこからまた茎を伸ばす。
綺麗な花を咲かせなければ、ずいぶんと厄介な雑草だ。

黄緑色した包葉(ほうよう)という、二枚貝のような変形した葉の中から花を咲かせる。
強い日光に当たるとしぼんでしまう一日花だ。
だと思っていたが、次の日に、また花を咲かせている。
なんのことはない、包葉の中には三つ蕾があって一日おきに咲くのだ。
鮮やかな青色を引き立てている黄色いのは飾り雄しべで、その下からにょきっと伸びている白い二分音符のようなのが本物の雄しべ。
黄緑と青、そして黄色と白が、この花の美しさを奏でているのだとわかる。

美しい青色は奈良時代から染料に使われていた。
布にこすりつけるとすぐに色が着く。
そこから「つき草」という別名がついた。
清少納言は『枕草子』の中で「つき草、うつろひやすなるこそうたてあれ(ツユクサの青色が、すぐに色あせてしまうのにはがっかりしちゃう)」と言っている。
色は着きやすいが、すぐに退色してしまうのだ。
だからといって、がっかりすることはない。
退色しやすいのを利用して、染物の下絵の絵の具に利用して発展したのが友禅染なんだから。

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