河内国喜志村覚え書き帖

大坂の東南、南河内は富田林市喜志村の歴史と文化の紹介です。
加えて、日々の思いをブログに移入しています。

畑98 / 月見

2023年09月29日 | 菜園日誌

朝、畑へ行く途中、百姓仲間が里芋を洗っている。
「えらい早いこと掘るねんなあ?」と言うと、
「今日は月見やさかいに、自分とこ用や!」
夏のような暑さ続きで忘れていた。
旧暦の八月十五日、十五夜、仲秋の名月だった。

名月を愛でながら管弦の遊びを楽しんだのは高貴なお方たち。
専業農家だった我が生家では、里芋と薄アゲを炊いたのと、俵型のおにぎりを縁側に供え、我々子どもが河原でとってきたススキを飾るだけという、ひっそりとした祭り事だった。
農家にとっては稲の豊作を願う大切な祭りだったが、子どもにとっては夕食に里芋、次の日の朝食にも里芋という、けっこううんざりな祭りだった。

そんなことを思い出して、ならばと、我が畑の里芋の試し掘り。
四月に親芋の逆さ植えをして、茎を四本伸ばしたうちの二本を収穫。
ほんとうの収穫にはまだ一ヶ月早いので、これならまずまず良しか?!
帰りに堤防のススキを四、五本とって帰宅。

日が暮れてから、相方が作ってくれた里芋と薄アゲの炊いたんを持って外へ。

夜ともなれば、さすがは秋。虫のすざくの涼しい風の中の西空にはみごとな満月!
「大きな芋になってや」と願いつつ、里芋を肴に一杯!
「歳をとるとはこういうことか」と納得しながら二杯、三杯!
「綺麗なおっ月さんやなあ」と感嘆しながら四杯、五杯!
 祭りばやしを二人できいて
 語りあかしたあの夜が恋し
 あの娘(こ)想えば俺も何だか
 泣きたくなっちゃった
 リンゴ畑のお月さん今晩は
 噂をきいたら教えておくれよなあ
 (『お月さんこんばんは』歌:藤島恒夫 作詞:松島又一 作曲:遠藤実)
鼻唄歌って涙流して六杯、七杯・・・・

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

87 / ??

2023年09月28日 | よもやま話

例によって、『考物一千題』という「なぞなぞ」の本から抜粋。
答えはすべて【植物】に関するものである。
①「狐の大声」とは何?
②「仇の狸」とは何?
③「九の字が一つ」とは何?
④「帰り来る都は秋の花盛り」とは何?
⑤ある数からある数を引くと六が残るものは何?
⑥寒くなり日も短くなる中にある木は何?
※答えは最後の文章の中にあります。

「考物(かんがえもの)」は現代の「なぞなぞ」にちかのだが、言葉遊びの一種といったほうがいいかもしれない。
本来は五七五の俳句調で、次のような形をとっている。
 吸い物をお熱い内にと進められ【魚二つ】
答えは「冷めます=鮫・鱒」となる。
すこしだけ練習。※答えは末尾に。
 a おしいこと朝顔につく根切り虫 【鳥三つ】
 b 洗濯と薪取りも都合よし 【旧の国名三つ】
 c 外国へ出す郵便は逆の様 【港の名一つ】

一週間ほど前に大根の種を蒔いたが、その夜にゲリラ豪雨があって、種が跳んでしまったのか芽が出ない。
しょうがないので蒔き直しをしていると、近くの百姓仲間がやって来て早生の柿をくれた。
畑の片隅で無花果がなっていたのでお返しにあげた。
実った野菜や果物を互いに交換するというのも畑作業の楽しみの一つだ。
さっそく、桔梗の花が咲く隣に椅子を持って行って、いただいた秋を味わう。
唐辛子もかなり色づいてきた。
やがて紅葉の色づく本格的な秋がやってくる。

a「葉と蔓枯らす=鳩・鶴・烏」
b「山と川近い=大和・河内・甲斐」
c「名が先=長崎」

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

畑97 / サニー

2023年09月27日 | 菜園日誌

家で育てている苗を朝日にあててやろうと日向に出して畑へ。
いつになく涼しいので、昼前まで野良仕事。
家に帰って唖然!
23日間の苦労が水の泡。
強い日差しを浴びて苗はへろへろ。
サニーレタスなんぞは、京のおばんざいの「菜っ葉の炊いたん」状態。
写真を撮る間もなく、苗を日陰に移動。
根元から水をやり、引っ付き合った葉っぱをピンセットではがし、無残な姿を見るのは辛いので家の中へ。

二時間ほどして見に行くと、まるで魔法にかかったかのように、苗は生き返っていた。
しかし、あと15分ほど帰るのが遅ければ全滅していたかもしれない。
彼岸が過ぎて、もうそろそろ定植できるだろうと予想していたが、まだ無理があるようだ。
だが、サニーレタスはかなり大きくなっている。

日差しは真夏だが、日陰に入ると秋が感じられる。
仕方がない。サニーレタスにも早く秋を感じさせてやるか。
畑へ持って行って、たっぷりと植え穴に水を入れて定植する。
トンネル支柱を立てて、寒冷紗(遮光ネット)をかけて日陰をつくってやる。
愛しのサニーは秋を味わいながら、しっかりと根を張ってくれるだろう。

あの弱々しい葉っぱのサニーレタスは意外と剛健だ。
葉っぱが地面にへばりついているようなへなへな苗でも、根と芯が残っていれば育つ魔法の野菜だ。
サニーレタスという名は、英語名ではなく、日本独自の造語だ。
あの『魔法使いサリー』は、元々は「サニー」だったという。
ところが「サニー」という名をソニーが商標登録していたので、やむなくサリーに代えたそうだ。
サニーレタスも、元々はレッドレタスと言っていたのを、語呂が悪いので「サニー」に代えたという。
日産サニーからとったという説があるが、サニーレタスのサニーは『魔法使いサニー』からとったのに違いない。
なんといっても、マハリクマハリタヤンバラヤンヤンヤンなのだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

86 / なんでやねん②

2023年09月26日 | よもやま話

学生時代に習った芥川龍之介の『羅生門』の冒頭の一文である。
平叙文(普通の文)で書かれているが、読者はこの一行で疑問を持つ。

 ある日の暮れ方の事である。一人の下人が羅生門の下で雨やみを待っていた

雨が降る夕暮れの羅生門の下で、下働きの下人が、一人で、なぜいるのか?
読者が心の中で「なんでやねん?」「ほんでどないなるねん?」とツッコミをいれたくなる仕掛けになっている。
ミステリー小説はいうまでもなく、すべての小説は読者の「なんでやねん?」のツッコミで展開していく。

日常生活において、「なんでやねん?」のツッコミをいれるような事態は出来るだけ避けたい。
しかし、痛さをこらえて伸びた鼻毛を抜いた時の快感のような、少しばかりの刺激を求め、「なんでやねん?」のツッコミをいれるために、小説の非日常の世界へ入り込む。
あるいは、「なんでやねん?」という辛い恋をした自分に共感してほしくて恋愛小説を読む。

 枯枝に烏のとまりけり秋の暮 /松尾芭蕉

「秋の夕方の枯れ枝に、なんでカラスがとまってるねん? なんでやねん?」と、俳句にツッコミをいれると何の味わいもない。
俳句は一つの情景を十七文字に閉じ込めて、読者に「そやそや。あるある。なるほとなあ」という共感を求める文学だからだ。
ところが、「なんでやねん」のツッコミに挑戦した俳句がある。
坪内稔典という現代俳人の俳句である。
「なんでやねん」のツッコミをいれてもわからない謎の俳句。

 たんぽぽのぽぽのあたりが火事ですよ
 三月の甘納豆のうふふふふ
 春の風ルンルンけんけんあんぽんたん
 水中の河馬が燃えます牡丹雪
 多分だが磯巾着は義理堅い
 影踏みは男女の遊び神無月

人の心。見方、考え方、感情、心理は、かくも「なんでやねん?」に満たされている。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

85 / なんでやねん

2023年09月25日 | よもやま話

「うちの犬、英語を話すねん」
なんでやねん
「煎餅を一枚やったら、ワン(1)て言うたがな」
おまえはアホか

大阪漫才でお馴染みの「なんでやねん」「アホか」のツッコミだが、次のような構造になっている。
のバカな発言を客は笑うと同時に「有り得ないこと言うな!」と気がまえる。
その客の気持ちを、が「なんでやねん?」と疑問形で代弁することで、客は安心して大きな声で笑う。
は疑問の答えとしてバカなことを言うと、客が笑うと同時に「こいつはアホだ!」と気がまえる。
その客の気持ちを、が「アホか?」と疑問形で代弁することで、客は安心して大きな声で笑う。
つまり、バカな発言に緊張した客の気持ちをツッコミが緩和して、笑いを増幅させているのだ。

「うちの犬、英語を話すねん」
有り得ないこと言うな!
「煎餅を一枚やったら、ワン(1)て言うたがな」
おまえはアホだ!

ツッコミが客の気持ちをそのまま言ってしまうと、客は緊張したままで大きな笑いにつながらない。
「なんでやねん」と、客の「有り得ないこと言うな!」という気持ちもこめて疑問形で代弁するからこそ笑いが増幅する。
「なんでやねん?」は、「なんでやねん? あほなこと言うな!」という強調でもある。
この働きを理解せずに、日常生活でむやみやたらに「なんでやねん」をつかうと、相手を傷つける場合がある。

本来の〈どうして?〉の意味でつかうのは、相手への共感・同情を表すので問題ない。
「会社を辞めさせられた」「なんでやねん
相手がボケたことを言った時につかうのも、相手を安心させるので話が進む。
「俺はレストランを予約するから、お前は金を払って」「なんでやねん
相手が真面目に話している時につかうと、相手を傷つける。
「よく澄んだきれいな青空や。吸い込まれそうやなあ」
なんでやねん!
「僕と結婚してくれへん?」
なんでやねん!
なんでやねん?

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする