河内国喜志村覚え書き帖

大坂の東南、南河内は富田林市喜志村の歴史と文化の紹介です。
加えて、日々の思いをブログに移入しています。

95 / 神の子

2023年10月27日 | よもやま話

子どもが生まれてから一歳になるまでのお祝い行事は多い。
①生後7日=お七夜(命名) ②生後31日~33日=お宮参り(氏神のご加護頂く) ③生後100日=百日祝い(お食い初め)④生後1年=初誕生日
現代は、生後6カ月=ハーフバースデーとかやらもある。
今は家族だけですますことがほとんどだが、昔は親戚のみならず村中で祝った。
それだけ生まれること、生きていくことが困難な時代だった。
だから、子どもを大切にして行事ごとに成長を喜び、次の行事までの成長を願った。

一歳を過ぎてからは三年、五年、七年目に子どもの成長を祝う七五三の行事がある。
特に重要なのが七歳の祝いで、氏神の名簿に初めて名前が記され、独りの人間として認められるという重要な儀礼だった。
つまり、七歳までは人間ではない。

七つ前は神の子」「七つ前は神のうち」という諺(ことわざ)がある。
我が村では、小学生が幼児を仲間に入れて遊ぶときは「かんの子(神の子)」と呼んで特別扱いしていた。
かくれんぼで幼児がオニにあたったら「ぼんさんがへをこいた」と一回言えばOKで、あとは適当に隠れて、適当に捕まってやっていた。
また「七歳未満忌服なし」という言葉もあった。
まだ七歳にならない者は喪の忌み(葬式)をしなくてもよかった。
六つ以下の子どもが死んだ場合には、家の床下や庭などに埋めて特別な埋葬地はなかったという。
六つ以下の子どもに宿っている霊魂は必ずどこかで蘇ると考えられていたからだ。
七つ前の神の子の魂は、まだ自由に動ける神の領域にあったのだ。

七五三の行事を記事にしようと考えているところへ、イスラエルがガザを空爆して死者が計7000人を超えたのニュース。
そのうちの2900人以上が子どもだという。
ウクライナでもそうだろうし、日本でも神の子の傷ましい事件が相次いでいる。
11月15日の前後一ヶ月は七五三。我が孫だけではなしに、世界中の21億人の子どもも神の子として大切にしなければ。
※金井直三 画作『コドモノウタ』 国立国会図書館デジタルコレクション

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94 / 白秋

2023年10月26日 | よもやま話

昨日は夕方の6時頃に、奈良の方から雨雲(奈良太郎)がやってきて、15分ほどの俄雨があった。
雷も鳴っていたので激しく降った所もあっただろう。
前日の「畑110 / 男心」で書いた「二上山に雲がかかったら雨やで」というオバンの観天望気がみごとに的中した。
天気を予想することを、昔は「日和見(ひよりみ)」といった。
日本各地には「日和山」と称される場所が100カ所ほどある。
港町に多いのは、天気を予想することが自分の命を守ることにつながったからだ。

昔、丹後の国に日和見を100%的中させるお婆さんがいた。
今日、明日の天気どころか数か月後の気候まで的中させていた。
これを聞いた大阪の米相場師が、天候・気候がよめたら米の収穫や良し悪しがわかって大儲けできる。
というので、丹後の婆さんに大金を払って、大阪に連れてきた。
そして、毎日毎日、海岸に連れて行って日和見をさせる。
ところが、まったく当たらない。
怒った相場師がお婆さんにぶつぶつと小言を言うと、
「そない言わはっても、大阪に丹後の日和山がおまへんがな!」
その土地の地形を知り、その土地に永年住んで風や雲を見てきた経験がなければ日和見はできない。

「木火土金水」の五つの星が宇宙を支配しているとする五行説では、それぞれに色と季節をあてはめている。
=青・春、=朱・夏、=黄・中央、=白・秋、=冬・玄(くろ)。
さらにこれを人の一生にあてはめている(年齢は私の意見です)。
青春:誕生~25歳頃まで
朱夏:25歳頃~60歳頃まで
白秋:60歳頃~75歳頃まで
玄冬:75歳頃~
すでに白秋に達した我が身を振り返り、我がオバンや丹後の婆さんのような経験知を持っているのやら?

「土」は、どういう扱いになっているのかというと、立春・立夏・立秋・立冬の前の18日間を「土用」としている。
11月8日が立冬だから、今が秋の土用の真っ最中。
夏の土用は「丑」が中心なので「うし」の「う」がつく食べ物を食べると体にいいから「うなぎ」と誰かさんが決めた。
秋の土用は、辰の日(10/23・10/30)に「た」のつく食べ物を食べるとよいという。
「ほんなら、たこ焼きを食べよか」と我が相方に言うと、
「たこ・たらこ・たらばがに・たんたん麺・タンドリーチキン・たん・たれかつ、そいでもって、デザートはタルトにタピオカでかまへんわ!」
「腹こわすわ! タバスコでもなめっとけ!」
※広重『諸国名所百景 丹後天のはし立』 国立国会図書館デジタルコレクション 

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畑110 / 男心

2023年10月25日 | 菜園日誌

野菜の価格が高騰している。
猛暑による成長不足に加えて、ガソリンや肥糧の値上がり。
道の駅に野菜を出すときも、去年より20円ほど高くしようかと思うが、お客さんは安いのを目当てに来られているので易々とは上げられない。
それに、売れ残れば野菜が可愛そうと、止む無く値段は据え置き。
どの商売も同じだろうが、天候に左右される農家はつらいよ。

とはいえ、畑で作っている自産自消のための野菜はたくさんある。
そこで、秋祭りの心休めに、昨日はスキヤキ!
水菜に春菊、白菜代りのしろ菜と葱。
そこに味出しの牛肉を少しだけ入れ、豆腐と蒟蒻を加えて一人前50円!
これが昔からの我が家の豪華な野菜のスキヤキ。
農林省によると、一ヶ月に購入する野菜は三人家族で9000円とか。
ということは、一年間に10万円ほどは自給自足の足しになっている。

今日の朝は、家でついた餅が残っていたので雑煮。
里芋・大根・人参は自前なので、もち米とうすアゲで30円。
野菜ばかし食べて、バッタとたいして変わりないと思いながら畑へ。
バッタに上前をはねられては困ったものだと、バッタがバッタの仕置き(退治)へ出る。
一回りしてドッカリと椅子に座り、さて玉ネギの苗を植えようかと思案。
雨が降る前でないと水やりが邪魔くさい。
天気予報は晴時々くもりで急激な雨に注意。
昨日は綺麗な夕焼けだったから今日は晴。
今日は朝は綺麗な朝焼けだったから今日は雨。
観天望気(雲や風の動きなどを観察して、経験をもとに天気を予想すること)ながら、どちらも確率は65%。
しかし、どっちやねん?
柄杓の柄で背中を搔きながら再び思案。

そういえば、オバンが背中を掻くきながら「二上山に雲がかかれば雨降るで」と言っていた。
東の二上山を見ると後ろに白い雲がもくもく、この雲を奈良太郎といって雨をよくらす。
南の和泉葛城山にも白い雲、和泉次郎という。
北東にも白い雲、有馬三郎という。
ここはオバンの観天望気を信じて、玉ネギの苗を植えた。ちょうど150本で一本1円。
でも、ほんとうに降ってくれるのかしら?
女心と秋の空・・・に悩む男心。

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畑109 / どっちやねん

2023年10月24日 | 菜園日誌

「畑92 / 一本一円」で書いた極早生玉ネギが、種を蒔いてから今日でちょうど50日目。
写真の左隣は十日遅れで蒔いた早生、そして、二十日遅れの中生(なかて)。
育苗50日たった極早生はそろそろ植え時。
そこで、まずは畝立て。
穴あきマルチを張って完成。

しかし、すぐには植えない。
水やりがじゃまくさい。
雨が降る直前に植える。
できればすぐに植えたいが、天気予報は、今日は晴時々曇りで、夜から寒気が流入して不安定、明日は曇り一時雨。
どうも微妙な雲行きだ。
植えるべきか、植えないべきか?
To be, or not to be, that is the question. 
天気予報など、下駄を投げるのと同様にどうせ当たるまい。
ドカリと椅子に座って、ここが思案の思案橋ブルース。
 ♪哭いているよな長崎の街 / 雨にうたれて流れた二つの心は♪
すると、長靴に履き替える前のサンダルが目に入った。
なるほどこれかと、ええ歳こいたオジンが独り、畑の真ん中、サンダル二つを手に持って、
「あーした、あーめになーれ!」

一つは表、一つは裏。
どっちやねん?
再びドカリと、椅子に座って再び思案橋。
 ♪夢は捨てたさ今のこの俺 / じっと孤独をかみしめた♪
 ♪ああ 玉葱 思案ばっかしブルース♪

まだまだ秋祭り気分が抜けない。
※『思案橋ブルース』作詞作曲:川原弘

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93 / 重ね重ね

2023年10月23日 | よもやま話

下の文は何んと読むという嵯峨天皇の質問に、
 子子子子子子子子子子子子
小野篁(おののたかむら)が即座に答えた。
 「ねこのこ こねこ ししのこ こじし」
という話は様々な書物に書かれていて有名だ。
同じようなものとして、江戸時代に流行った地口狂歌の一つに、
 山王の桜に猿の三下がり合の手と手と手手と手と手と
というのがある。
「三下がり」は猿が三匹、手をつないでぶらさがっている様子と三味線の弾き方の名称とが懸けられている。
加えて、下の句の「手と手と手手と手と手と」は三味線のリズムになっている。

NHK教育テレビで放送中の「いないいないばあっ!」の中で歌われる『おててとてとて』。
 おててとてとててとてとて
 みてみておてててとてとて
 ぷくぷくおててふわふわおてて
 ごつごつおてて
 みんなので みんなので
(作詞:小峰公子 作曲:吉良知彦)
同音の反復は子どもにとっては親しみやすい。
小さいころ唄った「からかい歌」の一つ。
 みかん きんかん 酒のかん
 親のいうこと 子がきかん
 親父の折檻(せっかん) 嬶(かか)きかん
 相撲取り裸で風邪ひかん
 橋の欄干 屋根葺(ふ)かん 犬は糞して 尻ふか
同音の反復は不思議なリズムを生み出す。

 ゆく秋の大和の国の薬師寺の塔の上なるひとひらの雲 /佐佐木信綱
「~の」の反復によって、カメラがクローズアップしてゆくように、大きな景色から塔の上の一片の雲に焦点があてられる。
晴れわたった明るい秋の情景だが、一片の雲は流れ去り、秋は過ぎゆき冬となるのだなあという寂しさもある。
それが薬師寺と融合して「寂滅為楽(迷いの世界から離れた心安らかな悟り)」の境地に達する。
心は「空」。
さわやかな秋になった。

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