河内国喜志村覚え書き帖

大坂の東南、南河内は富田林市喜志村の歴史と文化の紹介です。
加えて、日々の思いをブログに移入しています。

畑――美女

2023年06月27日 | 菜園日誌

朝7時頃に畑へ。
この時期は、まずウリ科の棚へ行く。スイカ・カボチャ・キュウリの黄色い花が咲いている。
畑の花には黄色が多い。

よく目立つからだろうが、そうでもない。
昆虫の眼は人間ほどよくない。人間で言えば近視に近い。色の認識力も格段に少ない。
ウリ科の花に集まるのはミツバチが多いが、ミツバチなんぞは黒、白、青、緑、黄色の五色しか認識できない。
だから、黄色が多い。

雌花がないか、一つ一つの花を観察していく。同時にミツバチが飛んでいるかを確認する。
ミツバチが飛んでいれば、雄花の花粉を雌花に運んでくれているから、いいかげんに通り過ぎる。
しかし、今日は飛んでいない!
こんな時は、人間がミツバチになる。
カボチャの雌花が二つ大きな花を咲かせている。
去年の記事に「畑でいちばん美しい花」と書いた。
株元の雄花をとって、花びらを外して雄しべだけにし、雌花の雌しべにチョイチョイと付けてやる。
畑でいちばんの美女を我が物にした達成感!

温度計を見ると30度! 今日ははヤバイと早々にきりあげて巣に帰る。

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畑――青春

2023年06月25日 | 菜園日誌

梅雨の晴れ間がニ、三日続いた三日目は貴重だ。
前に書いた落花生の花の付け根から出る子房柄が土に入りやすいように、株元の土を耕し(中耕)、周りから柔らかい土を株元に寄せる(土寄せ)。
草抜きと追肥も兼ねているので重要な作業。
砂質の土なら鍬でチョイチョイなのだが、我が家の畑は粘土質なので一株ずつ手作業。
晴れ間晴れ間の三日をかけて、第一回目の土寄せが完了。
落花生は一株で200ほどの花を咲かすという。
その頃に二回目の土寄せをして、我が畑の勤務は夏休みに入る。

まだ勤めていた8年ほど前に初めて熱中症になった。
「今日は畑の草をとことん抜いてやろう!」と炎天下に草抜きをしていた。
汗で体はびしょびしょなのだが「おお、これが青春だ!」などと意気込んで、畔の草を抜く。
ブルッと寒気がして「おお、青春時代には、こんなの感じたことがあったなあ!」とノスタルジアにひたる。
ところが、ブルブルブルと寒気が続く。郷愁を感じている場合ではない! もはや、青春どころではない!
体がだるくなってきて、頭もボォーットしてくる。これはヤバイと畦道をフラフラと農小屋へ・・・。
途中で、足がすべって隣の田んぼへドバァーッとはまり込んだ!
ビショビショになったまま這い出て、なんとか農小屋にたどり着き、ドターッと倒れこんだ。

何分か、何十分か経ったのか覚えていないが、「ああ、生きている」と感じることができたので、バイクに乗って帰宅した。なんとか・・・だろう。
そのまんま風呂に入り、着替えて昼食も食べずに夕方まで寝た!
田んぼに落ちて体を冷やしたのがよかったのだろうか・・・、夜はなんとか体調がもどった。
しかし、その後三か月ほど咳と痰の後遺症が続いた。
青春次代の若さがなくなった歳をとってからの熱中症は後遺症が怖い!
以後、熱中症には人一倍に気をつけている。体はもはや青春ではないのだから。

落花生の土寄せをしている間も「今日は危ない(熱中症)」という時があったが、なんとか終了!
帰り際、夕方からはイチゴの苗の準備でもするかと、イチゴの畝を見に行くと赤いものがチラホラ!。
「もう時期は終わったのに、なんで今頃?」と思いつつ、収穫してみるとワンパック!
孫へのよい土産ができたと、ちょっとうれしくなり口ずさむ。
 ♪雨に破れかけた過ぎ去った昔が
 街角のポスターに鮮やかによみがえる
 君もみるだろうか「いちご白書」を
 二人だけのメモリーどこかでもう一度♪
気持ちは、まだまだ青春である。

※歌は『いちご白書をもう一度』 詞曲 荒井由実 歌 ばんばん

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畑――性

2023年06月23日 | 菜園日誌

中学生のころ、新聞のテレビ欄を見ていて「男と女の性」というのを見つけた。
親に内緒でこっそりとテレビを視た。
しかし、男とは、女とはこういうときにこんな行動をとるものなのだという話ばかりで、お目当ての「性」の話はまったくない。
最後にアナウンサーが「今日は男と女の性(さが)についてのお話でした」。
その言葉で逆に赤面した。
タイトルに「性」とつけたが、そんな子どもだましの話ではない。
れっきとした、雄と雌が子孫を残すための めでたい性の話である。

多くの植物は一つの花に雄しべと雌しべがあって実をつける(両性花)。
しかし、スイカやカボチャなどのウリ類は一つの株に雄花と雌花を咲かす(雌雄同株)。
雄花の花粉を昆虫の媒介によって雌花が受粉して実をつける。
ところがである。
植物は、あまりにも低いところに雌花がついて実を成らすと獣に食べられる恐れがあるために、背の高いところに雌花を咲かそうとする(頂芽優勢)。
農家にとっては、それでは日にちがかかるし多くの収穫は見込めない。

そこで農家は考えた。「ならば最初の芽の蔓(つる=親つる)の葉が五、六枚になった時に、親つるの先っぽを切ってしまえ(摘芯)」。
すると植物も考えた。「何をするのや! そしたら脇芽(わきめ=子つる)を出して、早いうちに雌花を咲かせてやろう!」
これによって、植物は多くの実をつけるようになり、農家は多くの実を収穫できるようになった。
芽出たし芽出たし!
※日本カボチャは摘芯するが、西洋カボチャは摘芯しないが通説です。各自の判断でお願いします。

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畑――蔓

2023年06月22日 | 菜園日誌

じゃまくさいことはしないというのが、我が農法!
エンドウを収穫したあとの支柱をそのまま利用して、ネットを張り替えて蔓(つる)野菜の栽培。
スイカ・メロン・カボチャ・キュウリ。
通常の植え付け時期より二週間ほど遅れるが、蔓性の植物は成長が早い!

蔓性の植物は、ナスやトマトのように自立しないからである。
丈夫な幹や茎を作るための力を使わなくてもいいから、そのエネルギーの多くを、蔓を伸ばし、葉をひろげることに使っているのである。
横着極まりないが理にかなっている。
我が農法にぴったりな野菜である。
などと独り悦にいって畑から帰る途中、堤防から見た河原の景色。

こうなると蔓性植物の生育旺盛なのも困りものである。
漢字「蔓(マン)」は〈つる〉以外に〈はびこる〉とも読む。

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畑――タコ

2023年06月21日 | 菜園日誌

外国から日本にもたらされた植物を帰化植物というが、その中でも有史以前にもたらされたものを「史前帰化植物」と呼ぶ。
稲作の伝来とともに入ってきたものが多いので、田んぼや畑の雑草に多い。
代表的なのがナズナ、ヤエムグラ(下の写真)、スベリヒユ。

ナズナは、いわゆるペンペン草。春の七草に入っていて食べることができる。
地中深くまで根を伸ばすので畑ではやっかいものだが、よく目立つので減りつつある。。
ヤエムグラは、いわゆるヒッツキ虫。種が衣服や動物にに引っ付いて運ばれるため、昔はあちこちに生えていた。
近頃は子どもが外で遊ぶことが少なくなったし、ペットも室内で飼われるために、めっきり見なくなった。

残るスベリヒユこそ、田畑の中の最強の雑草なのである。
赤みをおびた葉と茎、四方八方に枝分かれして広がる姿から、我が地方では「タコ」と呼んでいる。
このタコは一株で25万個の種を付ける。引き抜いても一ケ月くらい枯れずにいる。
バラバラにしようものなら、それぞれから根をはやす。
実はこのタコ、代表的な「C4植物」なのである。
普通の植物は昼に気孔を開いてCo2(二酸化炭素)を取り込み光合成を行っているが、このタコは夜でも気孔を開いてCo2を取り込んでいる。
つまり、Co2を貯めこんでいるので、どんな悪条件にも耐える力を持っているのだ!
なんとも厄介なタコである。
なのだが・・・、朝ドラ『らんまん』の主人公の槙野万太郎の声がする。
「名もなき草というものはこの世にはないがや。人がその名前や能力を知らんだけじゃ!」

(。•́︿•̀。)
は、はい! 正直に申し上げて、虫に刺されたときや、ちょっとした傷に応急処置として、タコの茎を折って汁を塗っておりました ๐·°(৹˃ᗝ˂৹)°·๐
このタコは漢方にも利用されるし、民間薬として解毒や虫刺されに効用があるとされているのである(※使用は自己責任です!)。
その他、ヨーロッパや東北地方・沖縄では食用にされている。
やっかい者ではあるが、雑草もなにがしかの能力をもっているのだ!
雑草の如く紆余曲折、様々な困難を乗り越えて、ひたすら植物を愛し続けた朝ドラの主人公の万太郎のモデル、牧野富太郎の都々逸と(添え書き)。
 草をしとね(褥=布団)に木の根を枕 花を恋して五十年
 (五十年といえども、この恋はまだ醒めない)

歳をとっても、そんな恋をしたいものだ。


※『小学入門教授図解』小林鉄次郎 (教育図書館貴重資料デジタルコレクション)

※絵は竹久夢二、都々逸は『牧野富太郎自叙伝』より合成 (国会図書館デジタルより)

 

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