※⑤のつづきです。初めての方は茶話148から読んでください。
旅の四日目は大阪に帰る日だ。
私が「弁当を買って、明石の海を見ながら食べよう」と提案した。
見事に晴れ渡った空を仰ぎ、さすがは「晴れの国」と称賛する一方で、やはり「はずの国」かと諦観しつつ備前の国を離れた。
途中、私は「スーパーに寄ってくれ」と言った。
「何、買うねん?」と不思議そうな友人に、「土産や!」と答える。
旅行して、土産物屋で土産は買わない。
その土地のスーパーで買うことにしている。
京都に行けば、スーパーで八つ橋を買う。
琵琶湖へ行けば、スーパーで小鮎の甘露煮を買う。
その方が、土地の匂いが感じられる。
スーパーに寄ってもらってから、「つるや」という弁当屋で弁当を買った。
小食な私は、弁当を買う時は、中身や値段ではなく、量で選ぶ。
たいていは一番小さいのを買うことが多い。
手ごろなのを選んで帰路に就く。
行きとは反対の南寄りに、和気、相生、姫路を過ぎ、高速が渋滞していたので、加古川から一般道にバイパスを下りた。
1時前に、明石駅の西寄りの海岸にある望海浜公園という所に着いた。
小高い松林の丘があり、そこに登ると防波堤の向こうに明石の海が広がっていた。
ベンチに座って弁当を広げる。
ラベルを見ると二段弁当とある。
上から見たら、小さくて、私には手ごろだと思ったのだが、おかずの下にご飯の重があった。
ちょっと裏切られた気持ちがしたが、秋の陽に輝く明石の海を見て食べる弁当は美味かった。
そういえば、来たときも明石で、助六寿司を食べたのだ。
たった三日前のことなのに、妙に懐かしい気持ちになった。
バックの中には、岡山のスーパーで買った土産が入っている。
128円のパックうどんが三つ。
明日の今頃は、我が家で岡山のうどんをすすって、甘い思い出とともに奥深い思惟にひたっているにちがいない。
完