仕事と生活の授業(続き)

前に作ったホームページは、あまり読まれないようなのでブログで再挑戦です。

53.万葉集のはじめの歌「こもよみこもち」 その1 とってもカワイイ歌でした

2024年06月25日 | 和歌 短歌 俳句
万葉集を読もうとして、
みなさん1首目でくじけると思います。
「こもよ、みこもち ふくしもち」
という歌ですが、
何言っているのかさっぱり分かりません。
解説読んでも納得いきません。
まずは、歌の全文をアップします。

(桜井市観光情報サイトより)
巻名 巻1-1
歌人 雄略天皇
書き下し文

籠もよ み籠持ち ふくしもよ みふくし持ち
この岡に 菜摘ます児 家告らせ 名告らさね
そらみつ 大和の国は 押しなべて 我こそ居れ しきなべて 我こそいませ
我こそば 告らめ家をも名をも

解説によると次のような状況だそうです。

かご(籠)とふくし(掘串)
=スコップを持っている
若菜を摘みに来たお嬢さんに
王様が言い寄っています。




その言い寄り方が変です

「きれいなカゴですね」
「美しいスコップお持ちですね」
「あなたの名前とお家を教えて下さい」
「私は王様で、私の治めている領地はどんどん広がっています」「名前とおうちを教えて(=結婚して下さい)」

こんなこと言われて女性はなびきますか?
相手が王様だからといって
こんな話が、よい歌として何百年、何千年と歌い継がれてきたとは思えません。

(ちょっと言葉遊びをしてみたくなりました。)

ずっと、歌い継がれてきたからには、
きっと、みんなが好きになる
あっと、驚く魅力が隠れているはずです。

もっと、考えてみようと思ったら、
すっと、分かりました。

えっと、この歌はとっても楽しい歌でした。
そっと、隠されていた秘密に
ぐっと、たどり着くまでの冒険に、
ちょっと、の間お付き合いください。

〜〜以下、脳内再生の為、敬語無し〜〜

「こもよ、みこもち ふくしもち」

「籠(こ)」ってカゴだから、
「かごめ、かごめ、かごの中の鳥は、」
と同じく童謡のような歌だったのかも
しれないなぁ。

「よ」って人ではないものに
語りかけているから、むしろ
「もしもしかめよ、かめさんよ」
の系統かも。

そもそもかごは生き物でもないから、
「かがみよ、かがみ、かがみさん」
に近いのでは?

「かがみよ」は
鏡の妖精にお願いをする話だから、
「こもよ」も
かごの妖精にお願いする話かもしれない。

(もちろん「かめさんよ」や「鏡よ」は西洋の話ですが…、)

「籠(こ)もよ、美(み)籠(こ)持ち」の
「持ち」ってどういうことだろう。

現代語で残っている
「もち」で思い浮かぶのは、
(「お餅」は置いておいて、)


「お金持ち」や


「力持ち」。


「お金持ちになりたい」とか
「若い頃は力持ちだった」
という使い方をするので、
「持ち」は「移り変わる性質」を
「変わらない主語」につなげる言葉。

運が良い人について
「持っている」って言うのは、
「持つ」という言葉には、
神様や妖精が宿っているような
イメージがあるから

〜〜〜〜以上、脳内再生〜〜〜〜〜〜

「お金持ちになる」は、
お金の神様や精霊が宿る
というイメージですかね。

私たちがものにも命がある
と考えるときには、
そのものの精霊が宿っていると
考えているのではないでしょうか?

「鏡よ、鏡、鏡さん」と
鏡に語りかける時には、
そこにある鏡自身に
語りかけているのと同時に、
「鏡の精」や「鏡の神様」に
語りかけている気持ちになります。

(「トイレの神様」という素敵な歌がありましたね。何度も泣きました。)

「籠(こ)もよ み籠(こ)持ち 掘串(ふくし)もよ み掘串(ぶくし)持ち」

これで歌の出だしについて分かりました。
この歌は、
娘さんに語りかけているのではなく、
娘さんの持っている
かご=かごの神様、
スコップ=スコップの神様(妖精)に
話しかけているんです。

「カゴよ、カゴさん」
「スコップよ、スコップさん(聞いて聞いて)」
って歌い出しなんです。

もうこれだけで、
楽しい歌だということが分かります。
ものに語りかけるなんて、
かわいいですよね。

「もしもしカメさん」の歌や
「メダカの学校」が記憶に残るのは
「かわいい」からです。

「スコップさん」などと言うと、
「スプーンさん、とことこ」の
絵本を思い出します。

この歌は、女性にプロポーズするのに、
本人に語りかけないで、
女性が持っている持ち物の妖精(神様)に
間を取り持ってもらおうとする歌です。

自分が治めている国が
どんどん大きくなっていることも、
プロポーズする相手に直接言うと
嫌味に感じられますが、
間に入っている人(もの?)に
一生懸命言っているとすると、
微笑ましくなります。

「ボクは本当は、凄いんだけど、
うまく伝えてくれるかな」
っていう感じです。

この歌の現代語訳はこんな感じです。
(「もしもしかめさん」の節で歌えます。)

[1番]
かごさん、かごさん、スコップさん
ここで菜を摘む女の子
名前を聞きたい、付き合いたい
灯(とも)した恋を実らせて

[2番]
伝えてほしいボクの国
空から見れば 分かるはず
どんどん広がる国だけど
ぱあっと広がる国だけど

[3番]
いえいえどうして 私から
かわいいあなたに伝えます
お呼びいただく 私の名
お越しいただく 家の名も


3番は、女の子の返事ですね。
(『うさぎとかめ』の歌も
ウサギさんとカメさんが
順番に歌っています。)

近くにいるのに、
持っている持ち物に語りかけられたら、
どん引きする人もいると思いますが、
初め少し驚くけれど、
それを可愛いと思う人もいるのでしょうね。

今回はそういう人で、
うまく行ってよかったですね。

こんな解釈は、
怖い雄略天皇のイメージに合わない
と思う方は、
ぜひ、古事記、日本書紀の
雄略天皇の巻を「原文(書き下し文)」で
読んでみてください。
ぶっそうなエピソードも多いのですが、
童心を持ち続けた雄略天皇の
かわいいエピソードも満載です。

120歳まで生きた天皇が
なぜ「ワカ(若)タケル」
と呼ばれたかよく分かります。
童心を忘れなかったからです。

鳥山明さんの漫画「ドラゴンボール」の
孫悟空のイメージにピッタリ合います。
もしかしたら、悟空のモデルは雄略天皇かも、
と妄想が膨らみます。
コメント
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