仕事と生活の授業(続き)

前に作ったホームページは、あまり読まれないようなのでブログで再挑戦です。

48.万物は流転するのか その2 ヘラクレイトスと鴨長明

2024年05月22日 | 読書感想文

ギリシャの哲学者であるヘラクレイトスの思想は、

万物流転として有名です。


「同じ川に2度足を入れることはできない。」


日本人はこれを聞くと、

鴨長明の方丈記

「行く川のながれは絶えずして、

しかも本の水にあらず」

を思い出します。

なんとなく平家物語の

「祇園精舍の鐘の声、

諸行無常の響きあり」

と同じ感じで

諸行無常の仏教の教えを

言っているんだろうな、

と思っていました。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−

方丈記を最後まで読むと、

面白いことが分かってきます。


仏教の教えは、

執着を捨てよ

ということです。


鴨長明もそれは分かっているんです。

でも、

四季の自然は美しいし、


子供と遊べば楽しいし、


人里離れた庵(いおり)

「方丈庵」にも愛着が湧いてくるし、

(執着を捨てるために移り住んだのに...、)

全然この世への執着を

捨てられないことが

嘆き調で書かれています。


そこでの書き方は、

嘆き調ではありますが、

鴨長明がこの世への愛着を

本心から嘆いているようには思えません。


鴨長明は

執着を断つという

大切な教えを

理解しつつも、

大乗仏教、

中論の思想である

現実肯定

つまり

現実から縁起を見ていく

という

ものの見方 をしています。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−

思想としての日本の仏教は、

聖徳太子から始まったと

わたしは考えています。


現存する日本最古の書籍は

何でしょうか?


それは古事記や日本書紀ではなく、

聖徳太子が書いた

『三経義疏(さんきょうぎしょ)』です。



法華経、勝鬘経、維摩経の

三つの経典を聖徳太子が解説した書籍です。 

法華経は有名ですね。

勝鬘経、維摩経は、

在家信者のお話です。

(勝鬘夫人は、王様の娘さんです。

維摩さんは、成功した商人です。)


聖徳太子は、山に籠もって

座禅を組むような修行とは、

距離を置いています。


在家での仏教信仰は

大乗仏教=中論の現実肯定

(目の前のことから始めよう)

が理論的な柱になっています。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
維摩経では中論の主要な論点である

「去るものは去らない」

「来るものは来ない」

に触れられていて、

読んでいてとても印象深く感じられました。

(この論点は前回説明しています。)

−−−−−−−−−−−−−−−−−−

聖徳太子の時代から

だいぶ時は経っていますが、

鴨長明も中論の思想を

踏まえていると思います。


悟りの境地を理想としながらも、

目の前の現実から

少しずつ前に進むしかないことを

(悩みながらも)

書き留めているのでしょう。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−

さなぎが

蝶になるように

いっきに悟りの世界へ

飛び立つのではなく、


蛇が

古い皮を

一枚ずつ脱いでいくように

少しずつ成長することを

むしろ大切に

感じているのではないでしょうか。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

インドとギリシャの思想は

交流がありました。

(ミリンダ王のお話が有名です)

特にギリシャ(マケドニア)の

アレキサンダー大王の東方遠征で

それが進んだのは間違いありません。

(アレクサンドロス3世像 イスタンブール考古学博物館 ウィキペディアより)


ガンダーラの仏教芸術も

その表れですね。

(ガンダーラ美術 仏陀直立像、東京国立博物館。1 - 2世紀 ウィキペディアより)

アレキサンダー大王の

家庭教師だった

アリストテレスの思想は

とても重要視されていたはずです。

インドのナーガールジュナ(龍樹)が

アリストテレスの影響を受けていても

何の不思議もありません。


アリストテレスの思想が、

龍樹、鳩摩羅什、聖徳太子を経て、

鴨長明やいろは歌の作者に

伝わっていたと考えると、

とてもうれしくなります。

(中宮寺 菩薩半跏像 ウィキペディアより 中宮寺は、聖徳太子が母后のために創建した尼寺です。)

−−−−−−−−−−−−−−−−−−

アリストテレスは

自然言語の文法規則や

単語の使い方を

大変重視した哲学者です。

その意味で、

言語的転回を経た

現代の哲学に通じる

とても偉大な哲学者です。

その偉大な先生の哲学が

日本の思想の底流に流れている

なんて、

考えるだけで楽しいです。

−−−−−−−−−−−−−−−−−

方丈記の出だしを

もう一度味わってみましょう。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ゆく河の流れは 絶えずして

しかももとの水に あらず

淀みに浮かぶ うたかたは

かつ 消え かつ 結びて

久しくとどまりたる

ためしなし
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

まるで

歌のようですね


日本では

大切なことを

歌に歌います


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