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仕事と生活の授業(続き)

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57.万葉集のはじめの歌『こもよみこもち』 その5 大和の枕詞 そらみつ か そらにみつ か

2024年07月02日 | 和歌 短歌 俳句
次は

虚見津|そらにみつ

山跡乃國者|やまとのくには


「虚見津」は、枕詞と言われます。

大和の国の枕言葉は普通「そらみつ」と読まれます。

万葉集の他の歌(29番)で「天尓満(そらにみつ)」と5文字で読んでいるものがあります。

万葉集では、動詞、助動詞の活用語尾や助詞は、省略されていることが多く、読み手が補います。

虚見津のようによく使われる言葉は、間違いようがないので、助詞を省略しているのです。

天尓満は、普段と違う漢字を使う試みをしたので、間違わないように助詞を省略しなかった、ということです。

万葉集29番では、注釈において一般的な漢字を並べることで、同じ枕詞だということを示しています。
「天尒満倭…〔或云、虚見倭…」
「虚見」だけでも「そらにみつ」と読むことを校訂者が教えてくれています。

「虚見津」を「そらみつ」と4文字で読むのは、あまりに不自然です。和歌は、五七調です。

「虚見津」は、「そらにみつ」の5文字です。私の翻訳では「空から見ると分かるはず」になります。



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「に」は場所を示す助詞で、

「つ」は完了の助動詞です。

「つ」は推量の助動詞「む」や「べし」と結びついて「てむ」(「て」は「つ」の未然形)「つべし」となると「きっと~だろう」「きっと~はずだ」の「きっと」の部分を意味するそうです。

歌では推量の助動詞とセットではありませんが、「空から(見る)」という仮定の話であり、推量の意味が含まれます。
なので、ここの「つ」には「きっと」というニュアンスがあるのかもしれません。

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現代人には、完了の助動詞と過去の助動詞の区別がよく分かりませんね。
現代語ではどちらも「た」ですから。
全部過去じゃん、と思いますが、そうではありません。

会う約束をしている人から忙しい時に電話が掛かってきて、今話したくなければ、
「来週会っ“た”ときに話そう」
と返します。

完了の「た」は、いつ行うかという時間に注目するのではなく、動作が確かに行われること自体を指しています(約束しているので会うことは決まっています)。

・明日、宿についた「ら(orならば)」、
 すぐにご飯にしよう。
(明日宿についた後のご飯の話)

・明日、宿につくな「ら(+ば)」、
 すぐにご飯にしよう。
(明日中に間に合うように、
 今早くご飯を食べななければいけない)

後者だと、宿に着く可能性が低くなってきてるようですね。
「た」を使うと、完了までの一連の動作に焦点が当たっているので、
確かに行われるような気がします。

過去の記憶と同じように、夢や想像の中でも一連の動作がありありと頭に浮かぶなら、「きっと」確かに起こったことだろう、と考えるのでしょうね。

記憶と夢や想像との垣根は思ったより低いのかもしれません。

ラッツ&スター(シャネルズ)の歌です。


 夢でもし逢え“た“ら

   素敵なことね

  あなたに逢えるまで

    眠り続けたい

(逢えないあなたに逢え“た”ら
 “きっと”素敵なことでしょうね)

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》》空に見つ

は、「きっと」見えるという意味で

「空から見れば分かるはず」と訳しました。

「そらにみつ」には意味があります。

いろいろな受験参考書で

「枕詞は次の言葉に繋ぐだけの意味のない言葉だ」

という説明を嫌になるほど聞かされてきましたが、

そんなことがあるでしょうか?

「茜さす、むらさき野行き、しめ野行き」

と聞いて、

夕焼け(朝焼け)に映える野原が思い浮かびます。

「紫」の枕詞「茜さす」に意味はないから、
この歌は正午に歌った歌だ、
とか言われても信じられません。

作る方も読者の抱くイメージを分かっていて、
その効果を狙って歌っているはずです。



そして、

 「そらにみつ」

   です。

これは、「大和(やまと)」の枕詞で
意味がないと言われますが、
そうではありません。

これは、

 「空から見ると分かるはず」

   という意味です。

大和朝廷の版図が広がっていることが、
「分かるはず」と言うことですが、
それが、なぜ空から見ると
分かるのでしょう?

この答えを書くのは、だいぶ先になります。


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