風野真知雄の「女だてらわけあり酒場」の第10巻『街の灯り』を読んだ。これが最終巻である。第10巻は2013年12月の刊行だ。書店の店頭にあるのは知っていたが、増税もからんで書籍購入も控えめにしているので手を出さないでいた。このシリーズは妻も読んでいるので、出版されていることは知らせ買わせようとたくらんだが、妻はこうしたことにはマメでないので、一昨日久慈市の会合に行った際時間があったので書店に立ち寄った際に「吉原裏同心」の新刊と合わせて買ってしまった。
「女だてらわけあり酒場」は母の(おこう)がやっていた酒場が火事で焼け、常連の3人組が再建したものを(おこう)の娘(小鈴)が受け継いで女将になる。この酒場は、時の南町奉行・鳥居耀蔵ににらまれる酒場なのであった。この本の最後の下り
麻布一本松坂の小さな飲屋。ここの若い女将が妖怪と言われた南町奉行鳥居耀蔵の苛烈な弾圧にも屈せず、その後も幾人かの蘭学者の逃亡を助けたという。「女だてらにあの妖怪とたたかって」麻布界隈の人がそう噂した。これはペリーがやってくる少し前の、江戸の片隅の小さな物語……。
作者が折り込みの著者メッセージで「ちょっとした史実から発想を広げた、手法的には明治以来の大衆文学の王道であるように思います」と書いているが、まさにそうだと思います。