ウクライナ危機の真相 「核利権」の闇とユーロ暴落というシナリオ
Yahooニュース 2014年2月24日
原田武夫 | 株式会社原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)代表取締役
内戦に突入したウクライナはどうなるのか?(出典:Global Research)。
再び激化し始めたウクライナ情勢を読み解く「3つの本当のカギ」
今、ウクライナ情勢が再び急激に悪化している。23日(キエフ時間)、ウクライナの国会である「最高会議」はヤヌコヴィッチ大統領の罷免を決議した。同大統領はロシアへと出国しようとしたが、当局によって阻まれたという情報もある。(※注1)そもそもウクライナではここに来て反体制デモに対し、治安当局が発砲し、事実上の「内戦」が勃発。既に60名以上の死者が発生している。いわゆる「途上国」において政変が発生し、「内戦」になるというのであればまだしも、ウクライナは旧ソ連の構成国であり、かつ欧州にも隣接した大国である。それが「内戦」「体制崩壊」にまで陥ってしまったというのであるから尋常ではないのだ。
https://www.youtube.com/watch?v=5CKkQ5lHZUc
もっとも我が国に暮らす私たちにとって、「ウクライナ」がやや遠い存在であることも率直に言うと事実である。隣国であるロシアならまだしも、「ウクライナ」と聞くと首都キエフの名前や名物の「キエフ・カツ」を思い起こすのがせいぜいという方も多いのではないのだろうか。そのため、一体なぜ今、よりによって「ウクライナ」で”激しい内戦”なのか、全くもって理解出来ないと感じている方も大勢いるのではないかと思う。
混迷を続けるウクライナ情勢。その真相を知るカギは全部で3つある。「ウクライナが核利権の本拠地であったということ」「耐えざる軍需の創出が米欧における至上命題であること」そして「ウクライナにおける”発火”が欧州においてユーロ危機を招くこと」の3つだ。
「ウクライナ核利権」という巨大な闇
旧ソ連時代、ウクライナは核開発の本拠地であった。その中心となっていたのが現在も存続している「キエフ原子力研究所(Kiev Institute for Nuclear Research)」だ。(※注2)ウクライナと原子力・核というと、一般に「旧ソ連時代に核兵器を大量に配備された国の一つ」ということばかりが語られることが多い。(※注3)1991年12月1日に「独立宣言」を行ったウクライナはその後、1994年1月14日に米ロの両大国と共に「三カ国宣言」を発表し、核兵器の廃棄を行っていく意向を明らかにした。米国からは資金援助すら行われて進められたこうした「核廃棄」により、ウクライナの核問題はあたかも終わってしまったかのように考えられがちである。
だが、これは大きな誤りなのである。米欧のインテリジェンス機関における「常識」をまとめて書くならばこうなる:
●「ウクライナの核問題」における本当の焦点は廃絶されている「核兵器」そのものではなく、旧ソ連時代から延々と続けけられてきたその研究を担う研究者たちという”人財”の存在である。これを米ロで奪い合っているというのが隠された実態なのである
●外側から見るとそうした実態が見えないのは、ウクライナには2つのグループから成るいわゆる「マフィア」が存在しており、このマフィア同士の抗争と米ロ間の「核研究人財の奪い合い」が連動しているからである
●更に事態を不透明にしているのは、この地域において米国のインテリジェンス機関からの委託を受けて動いているのがドイツの「CIA」に相当する「連邦諜報庁(BND)」であるという事実である。秘密の作戦行動である非公然活動(covert action)を行っているのは基本的にドイツなのであって、米国そのものではないことに留意する必要がある
確かに表向きは「ロシアのプーチン政権から支持され、強権政治を続けるヤヌコヴィッチ政権」と「これに対して市民の自由を掲げ、抵抗するウクライナ国民たち」という構図がマスメディアによって描かれてはいる。だが、真相は「核利権の奪い合い」なのであって、これが決着しない限り、ウクライナは今後とも繰り返し「内戦」に陥る構造を抱え続けるというわけなのだ。
実は2010年に「ウクライナ内戦」で合意していた米英独
ウクライナ情勢の緊迫が続く中、俄かに注目を集め始めた米国の研究機関の手によるシナリオがある。2010年にニューヨーク大学グローバル・アフェアーズ・センターが行った「2020年のウクライナ(Ukraine 2020)」(※注4)である。なぜこのシナリオが注目されているのかというと、今回の「内戦」が始まる4年前に執筆されたものでありながら、そこには概要次のような三つの展開可能性がウクライナについて書いてあったからだ:
《シナリオ1》
●ヤヌコヴィッチ政権は権威主義的な統治を試みるがこれに失敗。経済立て直しを求める反体制派による動きが強まる中、ついに同政権は崩壊し、地方の政治リーダーたちもヤヌコヴィッチ大統領から距離を置く
《シナリオ2》
●経済危機の中、ヤヌコヴィッチ政権に対する反体制派が糾合し、これに大企業家たちが加わることで、改革志向の新しい政権が樹立されるに至る
《シナリオ3》
●ヤヌコヴィッチ大統領は反体制派が未だ弱体であることを理由に戦略的な権威主義体制の構築に成功。エリートたちの指示を得る中、10年近くにわたって政権を維持することに成功する
そしてこの「未来のウクライナに関するシナリオ作成プロジェクト」には、中心となったニューヨーク大学、すなわち「米国」のみならず、英国の王立国際問題研究所(チャタム・ハウス)や、ドイツの政権与党であるキリスト教民主党(CDU)の政治財団である「コンラート・アデナウアー研究所」が、ウクライナ人研究者と並んで出席していたのである。つまり米国だけではなく、英国、そしてドイツは実に4年前の段階で「ウクライナのヤヌコヴィッチ政権を崩壊させるというシナリオ」について合意していたというわけなのだ。
「そこまで言うのは大袈裟なのではないか。単にウクライナ研究者たちが寄り集い、”あり得べき可能性”を議論し、ペーパーにまとめたに過ぎないはずだ」
もし仮にそう思われたとすれば、「米欧のインテリジェンス機関における常識」を学び直した方が良い。なぜならばこれらシンクタンクはいずれも各国の政府、さらにはその諜報機関(インテリジェンス機関)と連動した動きをしているのであって、正にここで「米英独合意」が実質的に持たれた上でその後、一連のストーリーが実行に移されたと見るべきだからだ。一方、このシナリオ作成プロジェクトにロシアは参画していない。だがこのシナリオが公表された段階でロシア側も米英独のそうした”意向”を感じ取っていたことは間違いない。そのため、原罪進行形である「ウクライナ内戦」については自らに対する米英独からの密やかな圧力であることを前提に、ロシア側も防戦に入ると共に、それ以外の局面で反撃に出ていると見るべきなのである。
2008年夏のロシア・グルジア戦争における「ユーロ暴落」を思い起こす
もっとも、「ウクライナ崩壊シナリオ」の実現は単に米欧とロシアとのパワー・バランスの再調整のためであると考えてしまうのは早計だ。なぜならば「内戦」の長期化とヤヌコヴィッチ政権の崩壊は、他ならぬ米欧、特に欧州各国にとっては経済的に大打撃となる危険性を孕んでいるからである。
2008年秋に発生したリーマン・ショックにより大いに動揺したのが中東欧に位置するエマージング・マーケット各国であった。これに対処するため、欧州各国の銀行は欧州復興開発銀行(EBRD)や国際通貨基金(IMF)と共に「ウィーン・イニシアティヴ」(※注5)と呼ばれる支援プログラムを開始。その後、明らかに足りなかった第一弾を補うものとして第二弾が開始され、これに2012年7月9日からウクライナもあらためて参加する旨、その中央銀行が発表した経緯(※注6)があるのである。
円ユーロ・レートの推移(過去10年間)
確かに目先では、米欧にとって第1のターゲットであるロシアの通貨「ルーブル」の対ユーロ・レートが今回のウクライナ危機を踏まえて崩落し始めており(※注7)、「対ロシア作戦」という色彩が強い感は否めない。だが、仮にウィーン・イニシアティヴによって大量の資金供与をとりわけ欧州側から行われたウクライナがその返済もままならないという状況になるのだとすれば、その影響はウィーン・イニシアティヴに参加するそれ以外の中東欧各国にも及び、「経済不安をバックにした体制変動の危険性」が叫ばれる中、ただでさえ信用不安への警告が出されたばかりのその情勢(※注8)が一気に悪化する危険性があるのだ。
その結果、ユーロの為替レートは「ウクライナ内戦の激化」を直接的な理由として大暴落に陥ることになる。2008年秋に発生したリーマン・ショックの直前に開戦となったロシア・グルジア戦争(※注9)の際、戦闘行為に直接は巻き込まれなかった欧州の共通通貨「ユーロ」がなぜか大暴落したことを考えれば、これから起き得ることは自ずから明らかであるというべきなのだ。
いよいよ行き詰まる金融資本主義と米欧ロの真意
もっともこの様に劇的な展開を見せる中、ロシアが「防戦」一方であると考えるべきではない。確かに表向きは上述のとおり、そうした装いが続くはずだが、米欧のみならず、ロシアにとっても「ウクライナ内戦の激化」は軍需を高め、軍事関連産業を潤わせることは間違いないのである。つまり、金融メルトダウンがいよいよ究極の段階を迎えつつある中、”餌食”にされたウクライナを尻目に米欧、そしてそれと密やかに連携しているロシアはシリアに続き、この「内戦」を用いた景気復興策を何とか行おうと躍起になっているというべきなのである。
「異次元緩和」を柱とするアベノミクスによって強烈なインフレ誘導を行う我が国とは異なり、日に日に「デフレ縮小化」へと進む中、何とかそこから脱却しようともがき始めた米欧、そしてロシア。このニュース・コラム、そして私の研究所の公式メールマガジン(無料)や公式ブログで、その「最後のあがき」が果たしていかなる影響を私たち日本人に及ぼすことになるのかを、引き続き追って行きたい。
原田武夫
株式会社原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)代表取締役
東京大学法学部在学中に外交官試験に合格、外務省に外務公務員Ⅰ種職員として入省。12年間奉職し、アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を最後に自主退職。 「すべての日本人に“情報リテラシー”を!」という想いの下、情報リテラシー教育を展開。自ら調査・分析レポートを執筆し、国内大手企業等に対するグローバル人財研修事業を全国で展開。NHKラジオ第1「ラジオあさいちばん」出演中。最新刊は『ジャパン・ラッシュ』(東洋経済新報社)。「2014年 年頭記念講演会」(1月18日・東京/26日・大阪)に登壇。 http://haradatakeo.com/special/event/201401/
公式メールマガジン
http://www.mag2.com/m/0000228369.html
公式ブログ
http://blog.goo.ne.jp/shiome
(※注1)
服役中のウクライナ元首相、釈放 大統領は首都脱出
2014年2月23日 朝日新聞デジタル
ウクライナのヤヌコビッチ大統領と野党指導者らが流血拡大を避けるため合意した首都キエフ中心部は一夜明けた22日朝、事実上、反政権派の「解放区」になった。大統領はキエフを離脱。イタルタス通信によると、同日釈放された大統領の政敵チモシェンコ元首相は、5月25日の大統領選に出馬すると表明した。
「治安回復まで我々が守る。職員が戻っても立ち入りは認めない」
キエフ中心部の大統領府前で、反政権派の自警団の1人は語った。
http://www.asahi.com/articles/ASG2R057SG2QUHBI034.html
(※注2)
http://www.kinr.kiev.ua/index_en.html
(※注3)
http://src-h.slav.hokudai.ac.jp/publictn/68/68-1.pdf
(※注4)
https://www.scps.nyu.edu/export/sites/scps/pdf/global-affairs/ukraine-2020-scenarios.pdf
(※注5)
http://vienna-initiative.com/
(※注6)
http://www.bank.gov.ua/control/en/publish/article?art_id=117542
(※注8)
http://vienna-initiative.com/wp-content/uploads/2013/10/press-release-october-2013-final.pdf
(※注9)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%97%E3%82%AA%E3%82%BB%E3%83%81%E3%82%A2%E7%B4%9B%E4%BA%89_(2008%E5%B9%B4)
◆政権崩壊、デモ隊が統制する首都キエフ「市民は圧政と腐敗に怒ったのだ」
2014.2.25 産経ニュース
ウクライナでは東部を地盤とする親ロシア派のヤヌコビッチ政権が崩壊し、西部で強い支持がある親欧米派が再び政治権力を握ることとなった。首都キエフでの反政権デモが治安部隊との大規模衝突に発展し、死者80人以上を出した末の路線転換。キエフ市民からはデモの「成果」に満足する声が聞かれるものの、情勢が正常化して発展の軌道に乗るには、あまりに多くの課題と不安定要因がある。(キエフ 遠藤良介)
独立広場の周辺で23日、治安部隊との衝突で死亡したデモ参加者を追悼する市民(遠藤良介撮影)
真っ黒に染まった地面と一帯に残る焦げ臭さが、火炎瓶の飛び交った衝突の激しさを物語っていた。
議会によるヤヌコビッチ大統領の解任から一夜明けた23日、デモ隊が拠点とするキエフ中心部の独立広場には何万人もの市民が繰り出して「勝利」を祝い、犠牲者を追悼した。
中心部ではもはや警官の姿が全く目につかず、盾や棍棒(こんぼう)、ヘルメットで武装したデモ隊が警備や交通整理に当たっている。「マイダン(広場)の自衛」と名付けられた組織に属する武装デモ隊は大統領府や議会など権力の中枢を掌握し、施設を封鎖している。
大統領府前のデモ隊に声援を送りに来た会社員のデミヤノビッチさん(36)は「デモで犠牲となった人々は私たちのより良い生活のために命をなげうった。独裁者のごとく振る舞ったヤヌコビッチが去り、ようやく民衆のための政権ができる」と語った。
独立広場には多数の炊き出しボランティアなどが駆けつけており、流血までもたらしたデモがキエフ市民の共感を得ていることがうかがえる。
「ロシアとつるんだヤヌコビッチ政権下で人々は圧迫され、腐敗に苦しんだ。国民はそのことに怒りの声を上げたのだ」。こう熱く語る建設業のルカシュクさん(44)は一連の動きを「クーデター」と批判する東部住民について、「プロパガンダ(政治宣伝)にだまされている彼らにも、欧州統合路線の正しさがきっと分かる。国が分裂することはない」と語った。
だが、事がそう楽観できるものでないことは国の歴史からも明らかだ。
ウクライナは13世紀のキエフ公国消滅後、ロシアとポーランドによる領有争いの場となって「東西分断の時代」が続いた。ソ連時代以前の西部がポーランドのカトリックの影響を強く受けた一方、長くロシア化政策がとられた東部ではロシアへの親近感が強い。
西部住民が「歴史的な家への回帰」と考える欧州統合路線は、ロシア語使用者が圧倒的に多い東部にとって不安と反発の材料だ。
ウクライナ経済はデモが始まった昨年11月時点で、すでに外貨準備高が輸入の3カ月分を割り込む危機的状況にあった。ロシア産の高い天然ガスを輸入しながら補助金で国内燃料費を安く抑えてきたため、財政と貿易の深刻な赤字にあえぐ。親欧米派が期待する欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)の支援を受ける上で、「痛み」を伴う改革を要求されることは避けられない。
今回の政変で「敗者」となったロシアの出方も不安定要素だ。ロシアは昨年末に約束した150億ドル(約1兆5300億円)の対ウクライナ支援を30億ドル実行済みの段階で凍結した。国際社会では、ウクライナ向け天然ガス価格を駆け引きに使ったり、同国南部クリミア半島の海軍基地を足がかりに圧力を強めたりする可能性が真剣に危惧され始めている。
親欧米政権を誕生させた2004年の民衆政変「オレンジ革命」が政権の内紛と経済不振、ロシアの圧力で破綻した事実は、独立広場に集う市民の記憶から消えてしまったようだ。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140225/erp14022508420003-n1.htm
20.02.2014
19.02.2014
◆ウクライナ、EUが金融支援へ 破綻回避が焦点
2014/2/25 日本経済新聞
【モスクワ=石川陽平】欧州連合(EU)は24日、親欧米路線に転じたウクライナ向けの包括的な金融支援で調整に入った。日米などにも協力を要請する。親ロシア派の政権崩壊を受け、ロシアが国債購入などを見送っており、資金繰りを支える。EUとロシアの駆け引きが激しくなるなか、ウクライナが経済破綻を回避できるかどうかが焦点になってきた。
「2014年から15年にかけて350億ドル(約3兆5800億円)の支援が必要となる」。ウクライナのコロボフ財務相代行は24日、EUや米国、国際通貨基金(IMF)などに、緊急支援策を協議する国際会議の開催を要請した。
同国は08年の金融危機で打撃を受け、経済再建を進めているさなか。対外債務は銀行や民間企業を含めた総額で1300億ドルを超え、同国の国内総生産(GDP)の約75%に達する。鉄鋼や石炭を産出する東部の設備は老朽化し、西部は農業が中心。外貨準備はすでに輸入額の約2カ月分しかなく、このままだと債務不履行(デフォルト)に陥りかねない。
ウクライナが経済破綻の危機にさらされているのはロシアが金融支援を中断したため。政治対立が激しくなった今月下旬以降、ロシアはウクライナ国債の購入を見合わせている。昨年12月に合意していた150億ドルの支援を撤回する可能性さえある。
EUのアシュトン外交安全保障上級代表は24日にウクライナの首都キエフに入った。暫定政権のトゥルチノフ大統領代行や政党幹部らと協議するのは、経済破綻を回避するための緊急支援。欧州議会のブローク外交委員長はウクライナ向けに「200億ユーロ(約2兆8000億円)の供与を検討する」と話す。
ロイター通信は24日、EUが包括的な支援策で日本や米国と調整に入ったと伝えた。暫定政権を支援するEUも債務危機対応で財政は厳しい。日米欧やIMFが包括支援で合意できるかどうかが当面の課題となる。
EUとロシアが激しく火花を散らすのは、ウクライナが微妙な立場にあるからだ。
歴史的にオーストリアやポーランドの領土だったことがある西部や首都キエフを抱える中部は親欧米色が強い。一方で東部や南部は17世紀以降にロシア帝国の領土に組み込まれており、親ロシア色が濃厚。4500万人の人口を抱えるウクライナがEUとロシアのどちらに接近するかは、この地域の勢力図を塗り替える可能性を秘める。
ウクライナは旧ソ連から独立した1990年代以降、政治的にも経済的にも不安定な状況に置かれてきた。
EUとロシアの綱引きが激しくなったのはこの10年間。04年には大統領選でのヤヌコビッチ氏の勝利を親欧米派が大規模デモの末に覆す「オレンジ革命」が起きた。その後、親欧米派のユーシェンコ政権は欧州との統合路線を打ち出したが、天然ガス価格を巡るロシアとの紛争や親ロシア派との政治対立に直面。経済改革にも失敗し、10年にヤヌコビッチ氏に政権を譲った経緯がある。そして今回、ウクライナは再び親欧米に転じた。
ロシアはひとまず暫定政権がどのような政策を打ち出すのかを見極める構え。だがウクライナが自国経済圏から離れるのは黙認できず、いずれは巻き返しに動く公算が大きい。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDC2400X_U4A220C1EA1000/
中国・北京の西宛に、中国共産党・中央調査部というビルがある。通称「中調部」と呼ばれる、この組織は中国版CIAと呼ばれ、その諜報員の数は米国CIAの10倍超になる。
西宛の、このビルの4Fには「特殊組織対策部」という組織がある。
テロ組織等への対策本部という名目で、実際にはチベット独立運動等への弾圧を仕事としている。やり方は極めて乱暴で知られ、独立を主張する人間を誘拐し殺害する事が「業務」となっている。秘密工作と言う名の殺人部隊である。
この特殊組織対策部の現在の最大の課題は、ウイグル自治区の独立運動の弾圧である。この地域には、原油の埋蔵が確認され、またロシア、カザフスタン等から中国へのパイプラインの通過地点という要所になっている。中国経済にとってエネルギー供給源=生命線である。
中国国内におけるイスラムの独立問題=ウイグルの独立運動は、ロシア国内でのイスラムの独立問題=チェチェンの独立運動と連動している。
こうした「イスラムの独立運動」は、ユーラシア大陸に分散しているイスラム勢力の統一運動の「一部」であり、中東・アラブの王族によって分断割拠させられているイスラム世界の統一を目指し、アラブの王族支配を打倒する動き=チュニジア、リビア等で起こってきた「アラブの春」の動きと連動している。
EU、東欧、ロシアを経由し中国に至る、ユーラシアの交易の中継地点として、このイスラム世界の重要度は22世紀にかけ増大し続ける。
アメリカ・オバマ政権がアフガニスタンに兵力を集中させ、ロシアがチェチェン、中国がウイグルの「支配」に執着する理由は、油田と共に、この交易の中継地点を「押さえる」22世紀に向けた国家戦略にある。
日本が、この国家戦略を持つ場合(現在は、お粗末にも持っていない)、ウイグルへの支援を行う事は22世紀に向けた交易の中継地点を確保すると同時に、中国の生命線を押さえる事を意味している。
尖閣諸島への中国の侵略を阻止するため、海上保安庁、自衛隊の軍備を増強するのではなく、中国国家の西側=ウイグルの「内憂」が激化する事は、東側=太平洋側の尖閣諸島への進攻=「外患」に力を注ぐ事ができない事態を中国国家に引き起こす。
これが、尖閣への侵略を抑制する「外交」である。
日本がウイグルの石油、天然ガス・パイプライン企業を支配下に置く事は、日本にとって新しいエネルギー供給源を手に入れる事を意味し、将来有望なエネルギー産業に投資する事をも意味している。
中国が有望な日本企業を買収し投資しているように、日本はウイグル、チェチェンのエネルギー産業に投資する。
これは、単なる投資であり、中国・ロシアは異議を唱える事ができない。
そして中国が尖閣諸島で暴挙に出た場合には、ウイグルのパイプライン企業は、「設備の故障」によってパイプラインを停止させる事になる。隣国の暴挙に対抗するため、相手国の生命線を「締め上げる」準備を、日本は何重にも準備しておく必要がある。
ウイグル、チェチェンで行われている「人権侵害」は、こうして是正させる事ができる。
こうして日本の領土を守り、エネルギー資源を確保し、高配当な投資を年金資金で行い=年金制度を充実させ、人権侵害を阻止する事は、「同一の行動」で可能となっている。
ソチ・オリンピックで極めて厳重なテロ対策が行われている「異常事態」から学ぶ事は、こうした日本の国家戦略の不在の自覚と、是正である。
ソチ・オリンピックの土地はチェチェン人、チェルケス人の墓がブルドーザーで掘り返された土地
中国軍が日本全土に侵攻し、
日本が「独立を失い」中国領土に、仮に、なった場合、
中国でオリンピックが開催される事になり、その会場として「中国に奪われた土地」=九州・博多が選ばれる事になれば、
日本人は「中国のオリンピック」が、九州で開催される事を喜ぶであろうか。
九州は日本領土であり、そこで「中国のオリンピック」が開催されることを絶対に阻止したいと考えるであろう。
中国軍によって殺害された自衛隊員、日本人警察官、民間の日本人の墓がブルドーザーで掘り返され、
墓地がツブサレ、オリンピック観戦に来た人々が休息する公園に整備されれば、日本人の圧倒的多数は激怒するであろう。
このオリンピックに参加する国々、観戦に来訪する者達を、日本人は嫌悪し憎悪する事になる。
ロシア軍の軍事侵攻によって「独立を失った」チェチェン人、チェルケス人達は、
「ロシア軍に奪われた土地」=ソチでのオリンピック開催を、なぜ阻止しようとするのか、その理由は、ここにある。
ロシア軍によって殺害されたチェチェン人、チェルケス人の墓がブルドーザーで掘り返され、
墓地がツブサレ、オリンピック観戦に来た人々が休息する公園に整備されたので、チェチェン人、チェルケス人達は激怒している。
このオリンピック開催に反対する人々を、「テロリスト」と呼ぶ、ロシア政府に正義は無い。
オバマ大統領をはじめとした、各国首脳が開会式参加を辞退した理由も、ここにある。
安直にオリンピックに参加し、観戦を楽しむ日本人は、率先して「テロリスト」の憎悪と、「テロ」のターゲットとなる事を選択している。
その憎悪は、東京オリンピック会場での、報復を目指している。
ロシア軍による、チェチェン制圧・支配の真実。
ソチ・オリンピックの「お祭り騒ぎ」の影で
ソチ・オリンピックの開催に伴い、ロシアでは「テロ対策」と称し、チェチェン人等の少数派への弾圧が激化している。
ウクライナとモルドヴァに挟まれた独立国・沿ドニエストルの軍用空港からは、しばしばチェチェンに向けた輸送機が飛び立つ姿が見られる。
「公式には」この空港は沿ドニエストルの「独立」戦争時の戦闘等のため破損が激しく、使用されていない事になっている。
この国は独立時、独立を阻止しようとするモルドヴァとの対抗上、ロシアのプーチンに「支援」を要請した。
しかし「独立を達成した」現在でも、ロシア第14軍は、この地に「居座り続け」、事実上、この「独立国」はロシア=プーチンの「制圧下」にある。
旧ソ連時代から軍事産業の集積する沿ドニエストルはロシア(ソ連)の兵器庫と呼ばれ、現在でもロシア軍の兵器の重要な供給地帯の1つとなっている。
この地からチェチェンに向けて飛び立つ輸送機の積荷は、ロシアン・マフィアとロシア第14軍=プーチンが、チェチェンの反ロシア勢力・独立軍に「売りさばく」兵器である。
プーチンが、「チェチェンのテロリスト」と呼び、「テロとの戦い」を唱導する、そのチェチェンの「テロリスト」の持つ兵器は、この輸送機を使いプーチンとロシアン・マフィアの手によって「供給されている」。
ロシア軍VSチェチェン独立軍。
この繰り返されてきた過酷な戦争で使用されるロシア軍の兵器は、ロシアと沿ドニエストルの軍事産業によって製造され、プーチンによって供給されている。ロシア軍と戦闘を繰り返すチェチェン独立軍の兵器も、ロシアと沿ドニエストルの軍事産業によって製造され、プーチンによって供給されている。
戦争が拡大し継続すればする程、ロシアと沿ドニエストルの軍事産業、兵器密売人ロシアン・マフィアとプーチンのフトコロに「札束」が転がり込む。
反プーチン派のチェチェン独立軍が、プーチンから「兵器の密売を受ける」資金は、プーチン直系の世界最大のガス会社=ロシアのガスブロム社の銀行ガスブロム・バンクが融資している。資金融資の担保となっているのは、チェチェンの地下資源=原油と天然ガスである。
戦争が続けば続く程、チェチェンの市民の生活のために使用されるべき地下資源が、兵器に姿を変え「浪費され、消えてゆく」。
ロシアが絶対に、チェチェンの独立を許さない理由は、チェチェンの地下資源を奪う事にある。
そのためには、「戦争が必要」とされている。
そして独立推進派を暴力で弾圧する必要が「ある」。
そして「オリンピックを安全に、推進するため」という名目で、ロシア政府に逆らう独立推進派は、「テロリスト」と呼ばれ、日常的な監視と暴力による弾圧が繰り返されている。
日本には自民党政権と対立する民主党、社民党等々といった政党が存在する。日本で東京オリンピックが開催される場合、「オリンピックを安全に、推進するため」として日本政府は自衛隊を投入し、民主党、社民党の政治活動を禁止し、街頭でのビラ配りを禁止し、ビラを配布した人間を逮捕し刑務所に入れることはない。日本に在住する外国人=アメリカ人、フランス人、中国人、韓国人を日常的に監視し、政府に批判的な発言を行った外国人を逮捕し留置所に幽閉する事はない。
ロシアではロシア軍が投入され、「それが行われている」。
ソチ・オリンピックの「お祭り騒ぎ」の影で、理由も無く殺害され負傷させられ、幽閉されている人間達がロシアには多数いる。
耳を傾けなければならないのは、オリンピック会場での金メダル受賞者への賞賛のカン高いファンファーレと拍手の音ではなく、オリンピックの影で、殺害され負傷し、幽閉されている者達の悲鳴である。