みよしブログ

沖釣り大物集団舳会主宰、タハラッチのブログ。
舳会サイトはhttp://miyoshi344.sakura.ne.jp

奥穂高と涸沢の紅葉3日目12.10.13

2012-10-15 05:39:46 | 旅行記

Imgp4669_2 昨日のみごとな紅葉を思い起こしながら目覚めると午前4時。スズメの涙みたいな水で顔を洗ってデッキに出てみました。夕べより一段と鮮やかに星々がきらめいています。小屋の灯りが消えているうえ、夜中に冷えた空気が空を澄ませてくれたのでしょう。それでも半世紀前の星空にはかないません。もっともタハラッチの目の悪さが原因なのかもしれませんが、早起きした女性は感嘆の声を発していました。

朝食は5時から。今度は先着順ですから一番に並びました。飯は夕べよりうまく炊けていて、おかずも今回はまずまず。横尾での2回の食事同様すべてを食べ尽くしました。
夕べの食欲不振は体調のせいばかりではなかったのかもしれません。

食卓のポットからペットボトルにお茶を注いで満タンにし、すぐ先のヒュッテまで水を汲みに行く相客とすれ違うようにして6時に小屋を出発。ヒュッテで温かな紅茶をいただき一息つきます。ここでは水は使い放題。蛇口をひねって冷たい水で顔を洗うと、先ほどまでのすっきりしない気分が一気に洗い流されました。

ここからは北尾根の6峰をトラバース(山腹の横断)しながら屏風のコルを目指します。今回、ときどきコルという言葉が出てきますが、これは尾根上にある小規模な峠のようなところ。鞍部と訳されています。

北斜面のコースですから霜柱が凍てついています。50年前の記憶は定かではありませんが、さほどしょっぱいコースではなかったような気がします。きついと汗をかき、その味がしょっぱいのでこんな表現をしていたのです。
それでも現在は上級者コースとのこと。どんな道なのか期待と不安が同時に押し寄せてきます。
少し急な斜面のトラバースがありました。こんなものかなと思っていたらとんでもない斜面になり、フィックスされたロープの助けを借りながら進みます。

ほぼ水平なトラバースだけでなく、垂直に近い絶壁の登りや下りも頻繁に現れます。年取ったタハラッチは登りにかかるとすぐに息が上がってしまい、肩で大きく呼吸をしないと間に合いません。
後続の若者たち次々追い越されてしまいますが、焦ることはありません。
時間はたっぷりあるのです。

登りのワンピッチを追えるごとに小休止。この繰り返しですから埒が明きません。リタイアしたと思われる夫婦連れと相前後するようになり、言葉を交わします。
夫婦揃ってマッターホルンの麓へ行った話しを聞かせてもらい、タハラッチは50年前のこの界隈の話をします。

そして今回の山行の直接的な原因となったマッキンレーの遊覧飛行。岸壁スレスレに飛んで岩と雪の織りなす大自然を堪能させてくれたあのひとときがなかったら、たぶん今回の計画は立てなかったかもしれません。何が人間を変えるかわかりませんね。
旅は道連れ。こんな楽しみもありました。

Imgp4682  一晩たったらデジカメのバッテリーが少し回復したようです。彼方には槍ヶ岳がきれいな姿を見せています。今日も青空。標準タイムを大幅に超えて8時40分にコルに到着しました。
昨日の下りで足を踏ん張りすぎたようで、太腿に筋肉痛を感じ、右足の小指が当たって痛みが消えません。そのうえ急な登りの一歩一歩で大きく息を突き、休憩を何度となく取ったのが原因です。
でもこんなもの。心配にはおよびません。

Imgp4685 この辺りからも真っ赤な紅葉の彼方に穂高の山々が望めます。この光景をまた望むことができるか、ちょっぴりセンチメンタルな気持ちになってしまいます。

Imgp4695 このコルから尾根筋を屏風の頭のほうへ600mほど辿ると耳という突起があります。360度の展望の利く岩峰で、ここまででしたらロッククライミングの準備は不要とのこと。足を伸ばす人もいるようです。

タハラッチも行ってみることにしました。ところが思った以上の急登。件の夫婦連れは途中で休憩していて、ここから引き返して徳沢へ下るとのこと。タハラッチは行かれるところまではと歩を進めます。

踏み跡の脇に小さな池塘があり、その縁は5cmを越えるような霜柱がびっしり。夜は冷えることでしょう。
その右手に、花崗岩の巨大なブロックを積み上げたような突起があり、これが賽の河原。耳まで行くのはあきらめたタハラッチですが、そのテッペンによじ登りたくなりました。

Imgp4691 摩擦の効く岩ですからほとんど滑りません。昔の屏風岩登攀の感触を思い出しなら登り詰めると、テッペンにはケルンが積んであります。

Imgp4692 真正面が北尾根で中央の峰が前穂高。右手が奥穂へ連なる吊り尾根で、左の鋭峰群が明神です。

年相応に穂高の秋を堪能しました。ここからは奥又白谷を横断し、新村橋、徳沢、明神を経由して上高地へと下ります。
気持ちはもう下山したようなものですが、ここからの道のりの長いこと。急な下りのところどころには急な崖が立ちはだかっていて、思うようにはピッチが上がりません。
ただひたすら歩を進めて下るのみ。つま先と太腿には思いっきり力が加わり、筋肉痛は増すばかりです。
たぶんきっと、もうここを訪れることはないだろう。そんな気持ちになってしまうほど。ようやく奥又白の分岐に達し、コースを左に取ると急な沢筋に出ます。

白い岩が点在するコースを辿っていくとキタテハのようなチョウが舞っています。陽射しはあたたか。この3日間、毎日チョウの舞う姿を見ました。そして飛びっきりの紅葉も、真っ青な空も、灰褐色に聳える岸壁も、白く残る万年雪も、そのすべてが心を癒してくれたような気がします。
でもそれより印象に残ったのはハイマツの葉の深い色合い。外側の鋭い葉の裏側は白っぽく、上から見るとえもいわれぬほど深みのあるみどりなのです。エメラルドグリーンのような輝きではなく、いぶし銀のような装い。50年前には気付かなかった自然の美しさに触れました。

疲れ果てた足を引きずるようにして新村橋を渡り、徳沢園で山菜そばをいただいてほっとしていると、件の夫婦連れがくたびれ果てたように休んでいました。彼らはマイカーで来たとのことですので時間の余裕もあるのでしょう。タハラッチは次の予定があるので先発しました。

その予定というのは小梨平のキャンプ場での入浴。建替えたばかりの浴場は広々といていてとてもきれい。久しぶりにシャンプーと石鹸で全身を洗い、髭もそってさっぱりしましたが問題がひとつ。筋肉痛がひどくて、普段の姿勢では湯船に入れません。
でも爽快な気分になって上高地のバスターミナルに到着し、予定通り、16時30分発の新宿行きに乗ることができました。


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