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エース損害保険事件東京地裁平成13年8月10日決定(労判820-74)

2010-10-11 | 日記
エース損害保険事件東京地裁平成13年8月10日決定において示された解雇権濫用についての判断基準は以下のとおりです。
もう10年近くも前の裁判例ですが,日本において正社員を解雇することがいかに難しいかということについて,特に強調して理由が述べられています。

就業規則上の普通解雇事由がある場合でも,使用者は常に解雇しうるものではなく,当該具体的な事情の下において,解雇に処することが著しく不合理であり,社会通念上相当として是認できない場合は,当該解雇の意思表示は権利の濫用として無効となる。
特に,長期雇用システム下で定年まで勤務を続けていくことを前提として長期にわたり勤続してきた正規従業員を勤務成績・勤務態度の不良を理由として解雇する場合は,労働者に不利益が大きいこと,それまで長期間勤務を継続してきたという実績に照らして,それが単なる成績不良ではなく,企業経営や運営に現に支障・損害を生じ又は重大な損害を生じる恐れがあり,企業から排除しなければならない程度に至っていることを要し,かつ,その他,是正のため注意し反省を促したにもかかわらず,改善されないなど今後の改善の見込みもないこと,使用者の不当な人事により労働者の反発を招いたなどの労働者に宥恕すべき事情がないこと,配転や降格ができない企業事情があることなども考慮して濫用の有無を判断すべきである。

正社員を解雇するのに「企業経営や運営に現に支障・損害を生じ又は重大な損害を生じる恐れがあり,企業から排除しなければならない程度に至っていること」まで要するとしているのが妥当かどうかは問題ですが,少なくとも,これに近い発想があるということは認識する必要があります。
「これでは,企業経営ができない。」という声がたくさん聞こえてきそうですが。

解雇する前提として,「是正のため注意し反省を促したにもかかわらず,改善されないなど今後の改善の見込みもないこと」が要求されますので,「証拠」として残しておく必要があります。
事前の対処としては,懲戒処分などの解雇以外の方法を講じて自らの勤務態度の改善を図る機械を与えてから,解雇すべきでしょう。

それと,「使用者の不当な人事により労働者の反発を招いたなどの労働者に宥恕すべき事情がないこと,配転や降格ができない企業事情があること」という点も,重要です。
労働者が問題行動に出ていたとしても,それが使用者の行動により誘発されたものであるときは,重視してもらえないことがあります。
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