My ordinary days

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ふと思い立ち第2のキャリアを始めてしまった、流されがちなひとの日々を綴るブログです

道尾秀介「ソロモンの犬」

2010-06-10 08:13:11 | 読書
ネコ派なので
表紙絵が犬の本には心を動かされないのですが ちょっとモノ言いたげな犬さんのお顔につられて購入。

大学で微生物学を教えている助教授の息子が飼い犬に引きずられて事故死する。現場にいた大学生秋内は友人の不可解な言動に疑問を持ち、動物生態学に詳しい間宮未知夫助教授に相談に行くが・・・
飼い犬オービーはなぜ急に走り出したのか。これは事故なのか、殺人なのか。


「その指輪さえあれば、簡単に答えが出るのにね」
これは間宮助教授のセリフ。
その指輪とは、旧約聖書に出てくるダビデの息子ソロモンの指輪のことで彼は古代イスラエル帝国の王様です。

『ソロモン王は魔法の指輪をはめて、獣や鳥や魚と語った』

間宮助教授はアパートであまり一般的ではない動物…メキシコドクトカゲとか・・・に囲まれて暮らしているとてもユニークな先生で、探偵役となる秋内くんの手助けをイロイロしてくれるのだけど最初のセリフが
「いのっ、祈ってました!」
秋内くんがピンポンしてもなかなか返事がなくて帰ろうとした矢先にアパートから飛び出してひとこと。ヘンな風体や計量ビーカーのお茶出しやぷっと吹き出しちゃうところがあるのですが
まぁ すっとぼけたところが魅力のキャラクター 決めるところは決めてます。クリスチャンという設定ですが 神様がいると思っているんですよね・という質問に
「いや、思ってないよ。
神がいることをいつも願っている状態に、自分の心をとどめておくことにしているんだ。クリスチャンだろうがなんだろうが、それが人間にとって一番いいかたちなんじゃないかと思ってね。」
作者の神様の見方でしょうけれど、あー そういう考えもありなんだー、と。


仕掛けがあり
その仕掛けにまた仕掛けがあり、と楽しめるミステリ。
また大学生4人の恋&友情のお話も多分にからんでいて、死者(しかも一人は小学生)がでているし大団円のハッピーな話・・・、ではないけれど
ところどころでユーモアもあり読後感悪くないです。


「悪意は伝染病のようなものです。ウィルスは体力が弱ったときに肉体を支配する。悪意は精神が弱ったときに、心を支配します。」 by 間宮助教授




あ、確かめてないですが

ソロモンの指環はソロモン王自身だった、つまり指輪は人間のここー頭の中ーにある、らしい、と間宮助教授。
上記は誤訳でほんとうは
『ソロモン王はたいへん博学で、獣や鳥や魚と語った』が正しい・・・

ラスト近くでオービーは仮の飼い主となった間宮先生を救うことになるのですが、
それは先生を助けるための行動だったのかそれとも以前の飼い主のための行動だったのか、なんてことを間宮先生が気にしだして、それをからかい
「指輪があればオービーの気持ちが聞けますよ」と言われたのを受け
「いらない。僕は自分でみつけるよ」
そう答えた間宮先生でした。

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