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くりぃーむソ~ダ

気まぐれな日記だよ。

王様の扉(219)【終】

2024-02-12 00:00:00 | 「王様の扉」


「待って」

 と、怪我をした自分を抱きかかえようとするジローに、沙織は言った、
「これって、夢のつづきなの――」
 いいや、とジローは首を振って言った。
「沙織が、乗り越えなければならない試練だろう」
 ジローに抱きかかえられた沙織は、うれしそうな笑顔を浮かべて言った。

「ありがとう。ジロー」

                        おわり。そして、つづく――。

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王様の扉(218)【19章】

2024-02-12 00:00:00 | 「王様の扉」

         19 夢のつづき

「ここは、どこ?」

 と、沙織がまぶしそうに目を開けるのと、ジローが黒電話の受話器を置くのとは、ほぼ同時だった。
「怪我は大丈夫か」と、ジローはそそくさと部屋の中を見回し、沙織が身につけていたであろう私物を拾い集めていた。「――すぐに誰かが来るぞ。それまでに部屋を片付けるんだ」
 目に痛いくらい、黄色いシャツを着た沙織がベッドの上で体を起こすと、隣り合わせた正面の部屋の中で、男が一人仰向けに倒れて気を失っていた。
「――誰」
 と、表情を曇らせた沙織の声を聞いて、ジローは言った。
「わからない。いきなり目の前に現れて、つい殴り倒してしまった」
「――」と、顔を上げて部屋の中を見回した沙織は、くすりと笑顔を浮かべた。「かわいそうなことをしたわ」

「おい」

 と、ソファーを探っていたジローが、沙織を振り返って言った。
 呼ばれて振り向いた沙織が見ると、ジローは黄金色に輝くルガーを持って難しい顔をしていた。
「こんなもの、どうして持ってきたんだ」
 すぐに首を振った沙織だったが、なにかを思いついたように言った。
「ごめんなさい。拳銃だけは元に戻しておいて」
 と、ジローは首を傾げた。
「どうしてだ」
「彼には、もうひと働きして貰わなきゃならないから」と、沙織は痛みをこらえながら、ベッドを降りて立ち上がった。
「無理はするな。もう少しで外に出られるぞ」と、ジローは見つけたビニール袋の中に、拾い集めた物を片っ端から入れていた。「おまえが赤い髪をしていたなんて、まるで気がつかなかった。
 腰に巻きつけられていた、へたくそなバスタオルを巻きなおしながら、沙織はふらつく足でゴミ箱の中をのぞきこむと、黒い髪の色をしたカツラを取り出した。
「子供の頃は黒く染めていたの」と、沙織は思い出すように言った。「学校で冷やかされないようにってね」
「それで最後だな」と、ジローはサオリの持ったカツラを見ながら言った。「――さぁ、もう出かけよう」

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王様の扉(217)

2024-02-12 00:00:00 | 「王様の扉」


「あれ? ボス、ぜんぜん見当違いのところに出てきちまったみたいです」

 と、黒いアスファルトの下からザップン――と、浮かび上がってきたのは、大きさこそ少し大きめのトラックほどだったが、どう見ても絵に描いたような黄色い潜水艦だった。
 円筒形のような形をした胴体から、大きな帆を張ったように突きだしたハッチのドアが開き、中から出てきたのは、地下の空間でジロー達を追い詰めた四人組の一人だった。
 周りの状況がすぐには飲みこめなかったのか、その場に集まっていた警官や機動隊員達の姿を確認すると、一瞬凍りついたように肩をすぼめた男は、あわててハッチのドアに手を掛け、大声で下にいる仲間達に言った。

「大変だ、ボス。速く逃げてください。警察に囲まれてます」

 急いでハッチを閉めようとした男の手が、途中で止められた。
 おびえた顔が見たのは、伊達の手から逃れて潜水艦に飛び移ったジローの、怒りに充ち満ちた形相だった。

「――おい、ラッパ。早くハッチを閉めて降りてこい。このまま地面に潜るぞ」

 と、仲間達からボスと言われている男は、丸い舵を操作しながら、後ろに半分顔を向けて言った。

「ああ。早いところここから離れてくれ」

 と、聞き覚えのない声が艦内に響き、潜水艦の中にいた三人が、ぞっと肩を脅かして振り向いた。
「――また会ったな」と、言って姿を現したのは、ラッパと呼ばれた男の襟首をつかみながら、ギロリとした目で一人一人の顔をうかがう、ジローだった。
「なんで、あんたがここにいるんだ」と、舵を持つ手を思わず離したボスが、驚いて言った。「――ラッパ、なんでこいつを中に入れたんだよ」
 襟首をつかまれて歩かされていたラッパは、どんと突き放されてよろめき倒れ、ボスの手を取ってかろうじて立ち止まると、弱々しい声で言った。
「ごめんよ、ボス。またやっちまった」
「謝ったって遅いぜ――」と、ボスは舌打ちをすると、慌てたように言った。「なにしに来たんだ。おれ達は頼まれて、あんた達を追いかけただけなんだ」

「仕方なかったんだよ。わかるだろ」

 と、ボスはジローに手を合わせながら言った。「――おれ達が悪かった。このとおり謝るから、見逃してくれ」
「見苦しいぞ」と、ジローは吐き捨てるように言った。「自分たちのやったことに、責任を持つんだ。おまえ達が何者かは知らないが、このままおれを連れて行ってくれないか」
「――」と、互いに顔を見合わせた男達は、声をそろえて言った。

「どこへ?」

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