自然はともだち ひともすき

おもいつくままきのむくままの 絵&文

トイレに神様

2012年12月19日 | 絵と文
 

 3年前お風呂場をリフォームしたついでに、玄関横の申しわけみたいな坪庭を家屋内に取り込んで、少しばかり居住範囲を広げました。
 かねがね考えていたとおりの、ご不浄ではなくリラックスできる小さな小部屋として作り変えたトイレ、きっとトイレの神様も安住していただけるでしょう。

 大好きなあずき色の濃淡と淡いベージュを組み合わせた壁面床天井、大きめの鏡も置いてちょっとした着替えもできる空間があります。
 本なども置きたかったけど、それでは家中図書室になってしまうので、もっぱら空想を楽しむための場所として取りやめました。
 「マットとかスリッパなど置くのもったいないみたいね」 「そう。床はほっぺたすり寄せてもいいほど磨いてあるから」
 息子と二人で笑い合ったのに、なんと思いもよらず今年、我とわが身で実行しちゃう派目になるなんて。



お昼に野菜たっぷり煮込みラーメンを一人分平らげて1時間後。
しくしくおなかが痛み始めてお気に入りのトイレへ駆け込みました。しばらくいたら気分は回復できるはずです。
なのにお腹の中は、まるでスパイクつけた靴で遠慮会釈もなく蹴りつけ暴れまわるように、
強い吐き気も見舞うし我慢は限界、というところでなにかさーっと水様のものが。

この辺りから記憶がはっきりしていません。
不意に体中氷漬けになったみたいに冷たくなり、くたくた崩れ落ちそうになる体を両手で支えの棒を必死につかんだのは覚えています。
あああったかいお部屋で横になりたい! でもその前にこの姿何とかしなくちゃ!・・・
…次に気が付いたとき、トイレの床にぺったりと自分のほっぺたとおでこがくっついていたのです。

ほんの2、3秒だったのでしょうか? 2、3分? それとも2,30分? 
それから長いことかかって部屋の暖かいマットに倒れこみ、しばらくうとうとしたようでした。
服装だけはきちんと直っていたのは我ながら感心です。痛さにしっかり閉じた目では多量の下血があったことにも気づかず、
何度目かに覗きこんでようやくあっと驚いたのって、きっと神様の心遣いだったかもしれません。

どんな勢いで倒れたのやら。
1か月近くもたつのにいまだに痛い頬骨とおでこ。
左手親指が付け根から10センチ余り紫色の痣になって残っているのも不思議です。
若しトイレの壁が狭くて、何か障害物でも置いてあったとしたら、最悪の場合はあの世行き。 
それが痛くもかゆくもなかったんだから楽チンこの上なし、なんだけど~   




 もひとつ、おまけがあるのです
 ○○年1カ月違いの生まれのPちゃんとは、ふたりまとめて毎年ささやかな誕生会をするのですが
 その時この話をしてびっくりしてしまいました、なんとPちゃんも同じころ同じ失神の経験をしたというのです。
 ただ彼女の場合、結婚式の会場の晴れ着姿で、エスコートされた男性にしっかり抱きかかえられて気が付いたのだから、
 それは美人の彼女にいかにもふさわしく、
 それに引き換え…
 やっぱりトイレには神様がいらっしゃって、ちゃんと公平に見守っているんですねぇ ( ̄▽ ̄)。o0○

母娘 は おやこ

2012年12月06日 | 絵と文


「やぁ、おかァちゃんとそっくりになってきたね」
しばらくぶりで再会した兄が第一声と同時にまじまじ見つめてくると、なんだか照れくさいような少しは誇っていいような。
2年前ちょっと体調を崩して以来、一挙に年相応の健康不安やらあきらめやら落胆やら入り混じり
感謝しつつも揺れ動いている地へ、それだけ加味されたらとても表現はできない複雑な気分。

女の社会的地位は無きに等しいころ
父が亡くなったあとは明けても暮れても髪ふりみだして内職に精出す母の後ろ姿しか知らないから
きれいなお母さんねと友達にうらやましがられるまで、客観的に母を見ることができなかった。
あれを柳腰と言うのか顔もからだもほっそりと、歩けば内股で見るからになよなよしているのに
後家さんになったとたん町長に直会見、進学をあきらめた姉を町役場へ強引に押し込んでしまった。

年に一度のお墓参りには三人の子供に真新しい服を着せて、
三里離れたM町から、乗り合いバスに乗っては親子ではしゃいでいた幼いころの記憶がある。
バスでT市に出てお墓参りを済まし、そのあと活動写真を見るのが唯一の楽しみだったらしい。
当時としてはかなりのハイカラさんだったけど、よく見た映画はその情報源だったのかもしれない。

長い時間とお金をかけて、美しく結いあげた丸髷や二百三高地と称する当時の髪形を
家に戻るなり惜しげもなくばらばらに崩して、好きな形に結いなおしたという若いころの母。
里帰りをして呉服屋に表れるたび、近所のおかみさんたちが覗きに来ては騒いでいたと、
これは伯父さんがのちのち聞かせてくれた。

責任は誰にあるのかは知らないけど、この親に対してひそかに申し訳ないと肩身の狭かった私。
いつも美容院から帰るとセットした髪形へ指を突っ込み、くしゃくしゃにかき乱さずにはいれないので
ふと気がついた。  やっぱりおかァちゃんの子だ!
美容院なのにこのセンスの無さ。私だってもっと自分のよさを引き出せるわ
昔手製のワンピースやブラウスを着ていたら、友人たちも言ったじゃない「人形みたいに可愛いい」って。
それって鮮やかなブルーや紫のちりめんの服に対してではないよね。 



矢のように月日が流れて、この年、亡くなった母の年齢に追いついた。
ヘアダイの色があせてきて、しょぼしょぼとまぶしい眼で鏡を見ればそこに晩年の母がいる。
にこっとウインクして、つい本音が出てしまう。
人さまには見えないくねくね曲がった道、よくこけずに歩いてきたねぇ
ほんと。 これも女の一生、満足してるけど、疲れちゃったぁ… (*^^*)