自然はともだち ひともすき

おもいつくままきのむくままの 絵&文

竹の子の季節

2012年04月25日 | 絵と文

薫風とともに竹の子の季節が来ました。
泥つきの竹の子に、さっくりと包丁を入れたときのあのさわやかな香り~もうたまらない。


竹の成長力は凄いのなんの。
氷見の山で暮らした1年きりの思い出が、何十年たった今も懐かしい理由の一つになっています。

だだっぴろいだけですいすい風の通り抜ける古い住まいでした。
部屋のいくつかは使わず終いで過ごした1年間、特に裏手にあった小さな物置は、
冒険好きのやんちゃ坊主だった息子さえ恐れをなしたやら近寄らず
もっとも当初は何にもない、ただうす暗いばかりの土間だったのです。

さわさわ~
どこかから漏れるかすかな物音をたどって、何気なくその物置の戸を開けたとき
あんなに驚いたことってありません。
3畳くらいの薄暗い室内が竹林に一変していたのですもの
訳の分からない奇声を発して危うく腰を抜かしかけ、ゾクッとして慌てて戸を閉めました。
次に戸を開けたら、今度はとんでもない怪物くんなどぬっと現れるのでは…

台所の床板を持ち上げ、部屋の重い箪笥さえ傾くほどの勢いでした。
畳を剥いでそっと床下をのぞいてみたら、これはなんとしたことでしょう
この家は床下一面、縦横無尽曲がりくねった竹に占領されていたのです!!
はじめて知った、柔軟でしかもしたたかな竹の力、ただただあきれるばかりでなすすべを知らず。



 地面の底に顔があらはれ…
 するどき青きもの地面に生え
 まっしぐらに竹が生え
 凍れる節々りんりんと…

朔太郎の世界があり、理解も出来たのははるかな後日です。
若かったんですね。
竹の別世界に思いを致すなんてもちろんのこと、
まして竹が「美味しい」なんて夢にも考えず、なので随分損しちゃったことにも気付かず
今思えば無知と怖いもの知らずと同居して
けれどもそれだけを武器に生きて行けた、ホント、古き良き時代? とでもいえるでしょうか。



ようやく初夏の風が吹く戸外を、しっかり窓で隔てました。
小ぶりのタケノコを茹でている、この甘い香り、お腹いっぱい吸いこみたくて。 
さくさく小気味よくタケノコを噛みしめる歯が、今も無事残っていることに感謝しながら。 d(⌒o⌒)b♪~♪



ひとり

2012年04月24日 | 絵と文

愛された記憶はどこか透明で 
   いつでも一人 いつだって一人
 

(俵万智)





記憶に残る愛の形…  
強烈? 
ハテ そんなものあったっけ?

月日が重なり 記憶が薄れゆく分だけ
人間さまは思慮深く 厚みを増してゆけますように
と、勝手ながら 今はひとりが、ご満悦。

水仙の甘い香り

2012年04月19日 | 絵と文

体を動かすたび部屋の中を花活けの水仙の甘い香りも仄かに揺れる。
軽く診察を受けたつもりのPCが、思いがけない重症で病院入りしてしまったあとの寂しさを慰めるように。

PCというしろもの、これさえなければもっと絵に専念できるのに~
という弁解は単なるカッコ付け。
分かっているけど普段そう考えることで私の一日は成り立っているみたい。

形と色で何かを伝えるよりは、手っ取り早く直接文章で表現するほうが~
などとときどき思ってみても、次々あふれて始末に困るほど物思いにふけったのははるか昔のこと
今では奥底の知れないほら穴を覗き込む枯れ木のように途方に暮れて突っ立っているばかり。
少々行く先が見えてきたら、人間ってこんな風に変化するんだ。

PCを修理に出してから、絵のほうが順調にはかどるかと思いきや、明けても暮れても心の隅であの子のことを考えた。
普段は熱中を恐れ後手後手とあとに回して、むしろまま子扱いに近かったのに。
これじゃぁ○○依存症だ××依存症だと笑ってなんていられないよ。

ひとつことしか打ちこめない因果な性分なのに、近ごろは絵筆片手にほんとなんとも気にかかる。
手枷足枷はめたように自重しながら、まずは作品へと対峙するのだが、
対象が2個になったら集中力も2個分!、どころか二分の一に半減してどっちもまるで中途半端。
やっぱり欲張っては返って大損、この算術が身にしみた。
~~でも…
まぁいいじゃないの 楽しみながら描く、今じゃこんなスタンス結構好きなんだから。




・・・あの子がやっと手元に返ってきました。
何事もなかったように収まるところに収まって、私もまた何事もなかったようにパネルに向かいます。
今日も水仙の香りが何ともいえず優しいです。