妄想ジャンキー。202x

人生はネタだらけ、と書き続けてはや20年以上が経ちました。

恋する旅人

2007-05-31 11:57:07 | 長いひとりごと
何か新しい場所に行くと思い出す感情がある。
10代の頃の恋を思い出す。

といっても中学のときは誰、高校のときは誰、大学では・・・っていうことではなくて、あのとき抱いていた恋愛感情の根底に流れていたもっと大事なものを思い出す。
あれは真夏の熱射病のようなもので、結末なんて判りきっているのに、浮かされて熱されて解けていく。

恋の結末は2つしかない。
愛になるか、失うか。
少なくとも10代、それから20代頭のものもそうだろうけど、愛になるものはほとんどない。
19歳でお母さんになった友達なら愛を知っているのかもしれないけれど、平凡な成長を遂げてきたあたしが愛しているだなんてよくもまあ軽々しく、白々しく言ったものだ。
今更になって鼻で笑える。


背が低い男はイヤだ。理屈っぽいのもイヤだ。
いつのまにか完成していた理想の男性の条件があるけれど、理屈っぽい背の低い男に恋をしてしまうこともある。
都会が嫌いだ。大自然がいい。
そう思っていても、神保町のど真ん中でぼんやりしていることもある。

写真をみただけで、話を聞いただけで好きになる場所もあるし、実際行ってみても何も思わない場所がある。
こんなつまらない場所ありえないと思っていても、その場所で生活を営む人々に会ってみれば気づいたら2度3度来訪していることもある。
当初はキライでキライでしかたなかったけれど、3年近く通っているうちにそこを去るのが惜しくなる場所もある。


この道を3キロ行けば左手に看板がみえます、そこを右折していけば左手に入り口が見えます。
ほんとですか、ありがとうございます。


そうして私はスキップ走りで行く。
好きな人とデートの日のように、顔が笑ってしまうのを抑えきれないでとうとう歌いだす。
次の場所ではどんな場所が待っているのか。
どんな出会いが、どんな恋があるのか。

これだから旅はやめられないのであり、何も長距離列車や飛行機を予約したりするのが全て旅だというわけではない。
異邦人になりきらなくてはいけない。
ちょっと家の周りを散歩するのも、いつもと違う時間に通学するのも、異邦人になりきれば全ては旅だ。

『場所への恋』が愛に成就する瞬間は、多分そこが死に場所になる瞬間。
自然に還る場所。





一人旅なんかに行くと「1人?!大丈夫なの?どこ泊まってるの?怖くないの?」と質問攻めに会うことがある。
アジアとか中東の女一人旅ならまだしも、私は国内だ。
まず語学の心配がないし、郵便局のATMは全国どこにでもあるし、新幹線だって空港だって全国各地にある。
だから「行動力があるね、すごいね、勇敢だね」なんてことを言われても全く全然ほんとにさらさらピンとこない。

休日の私はといえば家事や畑仕事に追われ、家屋から出ることはあっても家の敷地内から出ることは殆どない。
家事は仕事だからするけれども、自分の部屋の電球が切れたって、どうしようもなくなるまでは取り替えるのさえめんどくさい。
自堕落な生活を送っていると自己嫌悪に走りたくなるけれど、走ったところで別のことをするのもめんどくさい。

日曜の原宿に買い物にいく妹や、1人でお好み焼き屋に入って淡々とビールを飲みながらモンジャを食べるっていう友人のほうがずっとずっと行動的に思える。
1人じゃ買い物にも行けないって子がこと恋愛になれば、とんでもない決断力を発揮して、意中の男性を蹴落としていく──そっちのほうがずっと行動力がある。
海外何処でも一人旅行くけれど、電話もメールも億劫でタイミングを見計らって言いかけたところで結局いえない・・・っていうよりも、言いたいことを全部言って喜怒哀楽をハッキリさせている人のほうがずっと行動的だ。


行動力っていうのは一般人の場合に限り、その定量が決まっている。
毎日ちまちま使ったり、時々放出させたりしながら、一生分を使い切っていく。

その話を聞いて、少し救われる気分がした。
晴れていたところで外で昼寝をしたり、借りるのはいつも同じ作者の本だったり、好きな人に好きと言えない、憎いやつを思い切り憎めない、そんな私の性分も多分行動力の成せる技なのだと思う。
O型だから、めんどくさがりだから、保守的だからというのもあるだろうけど、きっと日常生活のこの部分は行動力を小出しにしている部分だ。

普段使えなかった行動力をどこかで一気に放出すべく、毎日ちまちまと充電をしている。
相変わらず同じ音楽を聴いて同じ本を読むしかない休日も、全て充電のためだと考えれば、いとおしいものにさえ感じてくる。



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