「アビス/完全版」 1993年 アメリカ
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監督 ジェームズ・キャメロン
出演 エド・ハリス
メアリー・エリザベス・マストラントニオ
マイケル・ビーン
レオ・バーメスター
トッド・グラフ
ジョン・ベッドフォード・ロイド
ストーリー
深海。アメリカ海軍の原子力潜水艦が謎の物体に襲われ、救助活動の基地として選ばれたのは海底油田採掘用試作品住居<ディープコア>だった。
バッド・ブリッグマンを始めとする9人のクルーのもとに、コフィ大尉が指揮する海軍のダイバー・チームと、ディープコアの設計者リンジーがやって来る。
実はバッドとリンジーは離婚間近の夫婦で、ふたりは事あるごとに対立するのだった。
そんな折、クルーのジャマーが救助中に巨大な光る物体を目撃し、ショックで昏倒してしまう。
そしてリンジーも、その光を見た。
一方コフィたちは、バッドたちに無断で原潜から何かを回収する。
その頃海上は嵐に襲われ、ケーブルが切れたために海上と海底は連絡不能となってしまう。
故障をチェックしようとしたリンジーは不思議な生物とさらに接触。
この生物が今回の事故と関係があることを確信する。
やがてリンジーは、コフィが原潜内から回収したものが核弾頭であることを知り激しく詰め寄るが、彼は潜水病とストレスからの緊張感で狂気の世界に入り始めていた・・・。
寸評
描く内容がどんどん変わっていくにもかかわらずエピソードの繋ぎが上手くできておりダレるところがない。
始まりはアメリカの原子力潜水艦の沈没事故で、原潜の事故とその乗組員を救出に向かう人々の海難事故スペクタクルが繰り広げられる。
原潜内部やディープコアと呼ばれる試作機の内部撮影はセットでの撮影と推測されるが、それらが海中で作業する様子はリアリティがあって緊迫感が生み出されている。
撮影 のミカエル・サロモンの功績なのか、この撮影を可能にした着想の素晴らしさなのかはともかくとして、この海中シーンは見所である。
海難事故映画として日本映画でも海上保安庁の潜水部隊を描いた「海猿シリーズ」があったが、スペクタクルとしてもやはり後年に撮られた「海猿」を凌ぐものがある。
ディープコアにコフィ大尉が指揮する海軍のダイバー・チームがやって来るが、彼らの目的は秘密裏に原潜に搭載されたミサイルの核弾頭を回収することである。
繰り広げられるサスペンス劇も手際よくまとめられていて飽きがこない。
海上との交信が途絶えてコフィ大尉が暴走しだすが、コフィ大尉の暴走はひいては軍部の暴走でもある。
関東軍の暴走が日中戦争を、ひいては太平洋戦争を引き起こしたことを考えると、軍部の暴走は恐怖である。
おりしも原潜事故をめぐって米ソ(当時はまだソ連が健在であった)が一触即発の状態で、第二のキューバ危機が訪れているなかでのコフィ大尉の独走行為である。
一人の軍人の暴走が世界戦を引き起こすかもしれない怖さがある。
そして地球外生物の存在が明らかになるファンタジーへと物語は変化を見せていく。
エイリアンは人間の言葉は理解できるが、人間の言葉を話すことはできない。
冷たい海水がある深海の世界に住み着いて平和に暮らしている存在である。
そこで広島の原爆の50倍はあると言う核弾頭を爆発されては彼らの安住はない。
彼らは水を自由に操ることが出来て、人類に警告を発する。
明らかに核の廃絶を訴える内容となっている。
彼らは警告の意味で巨大津波を世界中に引き起こす。
巨大津波はニューヨークやサンフランシスコなどを襲ってくるが、どうせならソ連の都市も、イギリス、フランス、中国といた核保有国の都市も襲わせてほしかった。
ついでにインドやパキスタンなどの核を保有していると思われる国の都市も襲わせれば、メッセージはより強固なものとなっただろう。
ディープコアのクルーのキャラクターが上手く描けていたとは言い難い面もあるが、リーダーであるバッド・ブリッグマンと乗り込んできたディープコアの設計者であるリンジーが夫婦で、今は別居中の犬猿の仲というのが面白い。
しかもリンジーは口うるさい女で皆から好かれていないような一面がある。
バッドとリンジーの確執がもっと盛り込まれていても良かったかもしれない。
しかし「アビス」はメッセージ性を持った娯楽作として、1989年と言う年代に撮られたSFとしては出色の出来栄えとなっている。
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監督 ジェームズ・キャメロン
出演 エド・ハリス
メアリー・エリザベス・マストラントニオ
マイケル・ビーン
レオ・バーメスター
トッド・グラフ
ジョン・ベッドフォード・ロイド
ストーリー
深海。アメリカ海軍の原子力潜水艦が謎の物体に襲われ、救助活動の基地として選ばれたのは海底油田採掘用試作品住居<ディープコア>だった。
バッド・ブリッグマンを始めとする9人のクルーのもとに、コフィ大尉が指揮する海軍のダイバー・チームと、ディープコアの設計者リンジーがやって来る。
実はバッドとリンジーは離婚間近の夫婦で、ふたりは事あるごとに対立するのだった。
そんな折、クルーのジャマーが救助中に巨大な光る物体を目撃し、ショックで昏倒してしまう。
そしてリンジーも、その光を見た。
一方コフィたちは、バッドたちに無断で原潜から何かを回収する。
その頃海上は嵐に襲われ、ケーブルが切れたために海上と海底は連絡不能となってしまう。
故障をチェックしようとしたリンジーは不思議な生物とさらに接触。
この生物が今回の事故と関係があることを確信する。
やがてリンジーは、コフィが原潜内から回収したものが核弾頭であることを知り激しく詰め寄るが、彼は潜水病とストレスからの緊張感で狂気の世界に入り始めていた・・・。
寸評
描く内容がどんどん変わっていくにもかかわらずエピソードの繋ぎが上手くできておりダレるところがない。
始まりはアメリカの原子力潜水艦の沈没事故で、原潜の事故とその乗組員を救出に向かう人々の海難事故スペクタクルが繰り広げられる。
原潜内部やディープコアと呼ばれる試作機の内部撮影はセットでの撮影と推測されるが、それらが海中で作業する様子はリアリティがあって緊迫感が生み出されている。
撮影 のミカエル・サロモンの功績なのか、この撮影を可能にした着想の素晴らしさなのかはともかくとして、この海中シーンは見所である。
海難事故映画として日本映画でも海上保安庁の潜水部隊を描いた「海猿シリーズ」があったが、スペクタクルとしてもやはり後年に撮られた「海猿」を凌ぐものがある。
ディープコアにコフィ大尉が指揮する海軍のダイバー・チームがやって来るが、彼らの目的は秘密裏に原潜に搭載されたミサイルの核弾頭を回収することである。
繰り広げられるサスペンス劇も手際よくまとめられていて飽きがこない。
海上との交信が途絶えてコフィ大尉が暴走しだすが、コフィ大尉の暴走はひいては軍部の暴走でもある。
関東軍の暴走が日中戦争を、ひいては太平洋戦争を引き起こしたことを考えると、軍部の暴走は恐怖である。
おりしも原潜事故をめぐって米ソ(当時はまだソ連が健在であった)が一触即発の状態で、第二のキューバ危機が訪れているなかでのコフィ大尉の独走行為である。
一人の軍人の暴走が世界戦を引き起こすかもしれない怖さがある。
そして地球外生物の存在が明らかになるファンタジーへと物語は変化を見せていく。
エイリアンは人間の言葉は理解できるが、人間の言葉を話すことはできない。
冷たい海水がある深海の世界に住み着いて平和に暮らしている存在である。
そこで広島の原爆の50倍はあると言う核弾頭を爆発されては彼らの安住はない。
彼らは水を自由に操ることが出来て、人類に警告を発する。
明らかに核の廃絶を訴える内容となっている。
彼らは警告の意味で巨大津波を世界中に引き起こす。
巨大津波はニューヨークやサンフランシスコなどを襲ってくるが、どうせならソ連の都市も、イギリス、フランス、中国といた核保有国の都市も襲わせてほしかった。
ついでにインドやパキスタンなどの核を保有していると思われる国の都市も襲わせれば、メッセージはより強固なものとなっただろう。
ディープコアのクルーのキャラクターが上手く描けていたとは言い難い面もあるが、リーダーであるバッド・ブリッグマンと乗り込んできたディープコアの設計者であるリンジーが夫婦で、今は別居中の犬猿の仲というのが面白い。
しかもリンジーは口うるさい女で皆から好かれていないような一面がある。
バッドとリンジーの確執がもっと盛り込まれていても良かったかもしれない。
しかし「アビス」はメッセージ性を持った娯楽作として、1989年と言う年代に撮られたSFとしては出色の出来栄えとなっている。