おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

アウトレイジ 最終章

2022-01-24 07:50:15 | 映画
「アウトレイジ 最終章」 2017年 日本


監督 北野武
出演 ビートたけし 西田敏行 大森南朋
   ピエール瀧 松重豊 大杉漣 塩見三省
   白竜 名高達男 光石研 原田泰造
   池内博之 津田寛治 金田時男
   中村育二 岸部一徳

ストーリー
日本の二大勢力だった関東山王会と関西花菱会の巨大抗争後、韓国に渡った元大友組組長・大友(ビートたけし)は、日韓を牛耳るフィクサー張会長(金田時男)の下で市川(大森南朋)ら手下を従え、済州島の歓楽街を裏で仕切っていたがある日、買った女が気に入らないと日本のヤクザからクレームが入る。
クレームの主は花菱会直参幹部・花田(ピエール瀧)だったが、女を殴ったことで逆に大友から脅されて大金を請求されたが、花田は側近たちに後始末を任せ、ひとり日本に帰国する。
後始末を任された花田の側近が張会長の若い衆を殺害してしまい、激怒した大友は日本に戻ろうとするが、張会長に制止される。
花菱会の新会長の座には、前会長の娘婿で元証券マンの野村(大杉漣)が就いていたのだが、金さえ稼げれば何でもありという野村のやり方に、古参幹部の若頭・西野(西田敏行)は敵意を燃やしていた。
西野を厄介払いしたい野村は、若頭補佐・中田(塩見三省)に若頭の跡目を取らせようと手を回すが、本心は二人を揉めさせ、いずれまとめて捨ててしまう算段だった。
一方、花田が張会長率いる巨大グループを敵に回したことを知った西野は花菱会の会長代理として、花田を連れて張会長に詫びを入れに行ったが、張会長には無視されるような形で追い返された。
野村は自分の地位を守るため、この西野の行動を利用しようとするが、野村の思惑に勘づいた西野も中田を抱き込んで奇策を講じる。
花菱会と張グループの揉め事の裏で、野村と西野の覇権争いが始まり、事態は張会長襲撃にまで発展する。
張会長の身に危険が及んだことを知った大友は、張会長への恩義に報いるため、また殺害された若い衆と、過去の抗争で殺された兄弟分・木村の仇を取るため、日本に戻る決意をする……。


寸評
「アウトレイジ」シリーズは次々と男たちが死んでいくという話と言っていい。
その殺され方をユニークな会話で面白く描いているのも特徴の一つである。
第1作では山王会大友組若頭の水野(椎名桔平)が「ドライブに行こう」と言われて連れ出され、頭巾をかぶせ道端の支柱に繋がれたロープを首に巻き車を発進指せるというやり方で絞殺されている。
第2作では裏切った石原(加瀬亮)が「何でもします」と詫びを入れたところ、大友から「野球をやろう」と言われ、バッティングセンターで縛りつけられてマシーンから出るボールを顔面に受け続け撲殺されている。
今回は野村が「キャンプに行こう」と言われ、夜の道路に首だけ出した状態で埋められひき殺される。
花田などは「口の中で花火をあげてやろうか」と言われ、爆弾を口に押し込まれ爆死させられている。
さらに今回は今まで登場しなかったマシンガンが出てきて乱射による皆殺し状態が描かれている。
北野監督が殺し方を楽しんでいるようでもある。
ストーリーの継続上前作に引き続き、西田敏行の花菱会若頭西野や塩見三省 の花菱会若頭補佐中田が登場しているのだが、実は西田敏行も塩見三省も病み上がりで十分な演技が出来ていない。
二人とも座った演技が多いし、特に塩見三省は痛々しく前作の迫力が失われている。
二人の迫力不足はこの映画を削いでしまっていると思う。
このシリーズの特徴でもあるのだが、これだけの抗争が発生し死者も出ているのにマスコミが全く登場しない。
そして警察側も前作までは片岡が動いているだけだし、今回も繁田(松重豊)が一人で対応しているように見え、組織だった取り締まりをやっているようには見えない。
ヤクザ組織が好き放題をやっているようで、その意味でリアリティに欠けるシリーズでもある。

下部組織の悲哀と内部抗争の醜さも描かれてきたが、今回は大友の張会長への義理立てと復讐の為の殺人に的が絞られているために、描かれている内容は単純である。
ただし木村組の吉岡の立場はこの作品を見ただけではわかりにくい。
山王会との抗争に勝利し、事実上山王会を傘下に納めた花菱会は山王会配下だった木村組の組長・木村がヒットマンの凶弾に倒れてから、木村組の組長に吉岡を送り込み木村組の縄張りと組織を維持していたということで、関東を仕切っていた山王会の会長白山や若頭五味も若い吉岡に頭が上がらないという事だろう。
気持ちが通じ合った木村を殺された大友が、木村組を引き継ぎ傍若無人な行動を取る吉岡を殺すというのは納得できるし、大友の復讐の一部でもあったのだが、やはり少々分かりづらい構図だったように思う。
大友が鉄鋼業者を殺したは、木村を殺したのがマル暴の片岡にそそのかされたその鉄鋼業屋だったからなのだが、それもこの作品からだけではわからない。
その意味ではシリーズをずっと見てきている人を対象とした作品と言える。
日本ヤクザである花菱会の野村新会長や、西田がひどい人間として描かれているのに対し、韓国ヤクザともいえる張会長がいい人間に描かれているように見える。
済州島で売春組織も仕切っているような人物だが、死亡した若い組員への手厚い対応などを見ていると、悪いヤクザは野村や西田で良いヤクザは張だと言っているようでもある。
まさか日本社会の堕落を訴えるために韓国ヤクザを登場させたわけではないだろうな。
日本に対する韓国政府の態度は良かったためしはないからなあ・・・。