「あげまん」 1990年 日本
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監督 伊丹十三
出演 宮本信子 津川雅彦 大滝秀治 金田龍之介
一の宮あつ子 菅井きん 三田和代 洞口依子
橋爪功 高瀬春奈 柳谷寛 横山道代 関弘子
不破万作 上田耕一 六平直政 東野英治郎
内田あかり 北村和夫 宝田明 島田正吾
ストーリー
捨て子だったナヨコは老夫婦に育てられるが、中学を出てナヨコ(宮本信子)は芸者の道を歩むことを決心する。
そして芸者の置屋に預けられたナヨコはそこで一人前の芸者に成長してゆくがそんなある日、僧呂多聞院(金田龍之介)のもとに水揚げされ、彼女の人生は一変するのだった。
ナヨコと暮らすようになって多聞院の位はめきめきと高くなっていったのだ。
だが、間もなく多聞院は病死してしまうのだった。
何年かたち銀行のOLになったナヨコは、ふとしたことからうだつのあがらない銀行員鈴木主水(津川雅彦)と知り合い、お互い愛し合うようになる。
だが同時に政界の黒幕である大倉善武(島田正吾)もナヨコの“あげまん”に目をつけていた。
結局主水と結ばれるナヨコだったが出世街道を走り始めた主水は、出世のために瑛子という女と婚約してしまいナヨコと別れてしまうのだった。
主水に捨てられたナヨコは大倉のもとへいき、再び芸者となった。
そんな時、総理の椅子をめぐって鶴丸幹事長(北村和夫)と争う犬飼政調会長(宝田明)もまたナヨコに目をつける。
その頃主水は上役千々岩(大滝秀治)が鶴丸に政治資金を横流ししていた不正をきせられてピンチにおちいっていた。
そのことを知ったナヨコは、やはり主水のことが気がかりになっていた。
だがその時犬飼から鶴丸が癌で先長くない命であることを知らされたナヨコは、それをネタに主水の危機を救うのだった。
そしていつしか二人は永遠の愛で結ばれるのだった。
寸評
"あげまん"という艶っぽいタイトルが目を引く。
足を引っ張る女は間違いなく居そうだが、果たしてツキを呼ぶ女が存在するものかどうか?
存在だけで運気をもたらすことはなさそうだが、多分内助の功のような支えでもって男を出世させる女は居そうだ。
僧侶の多聞院(金田龍之介)はナヨコの体を触るだけで、精力を問い詰められてしょげかえるシーンなど滑稽さが前面に出た作品だ。
この滑稽さは、前作にあたる「マルサの女シリーズ」における滑稽さから見ると、随分とストレートでくすぐったいような笑いではない。
全体的な印象としてはウケ狙いの演出も目立ち始め「お葬式」「マルサの女」に見られたようなシャープな演出は影を潜めている。
運気をもたらす"あげまん女"の着想は悪くないが、それに群がる僧侶や政治家の強欲な姿が弱い。
特に幹事長鶴丸(北村和夫)と政調会長の犬飼(宝田明)の権力争いなどは上辺だけをなぞったような感じで、黒幕の大倉膳武(島田正吾)の登場とあっては子供だましのテレビドラマを見ているようだ。
主水の津川雅彦とナヨコの宮本信子のコンビはいい。
(宮本信子の娘役はちょっと無理があったけど)
「マルサの女」「マルサの女2」で培われた二人の間のようなものが完成を見たような感じがする。
津川の抑えた演技がそれを物語っていた。
主水役の津川雅彦が新支店長として赴任した時の訓示シーンがある。
結構長い訓示が続くが、これを伊丹監督はワンカットで撮っている。
行員の真ん中を割るように画面左から右へ移動していくのだが、それを行員の人垣越しで津川雅彦を追っている。
やがて最後まで行くと今度は手前に向かって喋りながら進んでくる。
そして今度は手前側を逆に右から左へと進んでいき、そして次長の言葉使いを叱責する。
ここまでを一気に撮り上げているのだが、人の影になったりするのを配慮しながらカメラは主水を追って外さない。
こういうカメラワークは難しいはずで撮影の山崎善弘の腕の見せどころだったろうと思う。
主水は取締役就任と引き換えに、一度は別れた瑛子(ミツコ)と一緒になる決意をするが、出世のためとは言え、あれほど嫌った瑛子との結婚を決意できるものだろうか?
それともあの調子良さで、外で目いっぱい羽を伸ばすつもりだったのだろうか。
瑛子も主水の気性は分かっていたはずで、そのあたりのお互いの打算に対する決断がやけにアッサリしていた。
そのような内面を突き詰める映画でないことは分かっていたが、やはりちょと物足りなさを感じた。
権力を握った政治家はもっと悪だと思うし、頭取(大滝秀治)のスキャンダルもありきたりだったな。
「お葬式」「マルサの女」でその才能を見てきただけに、期待した分ちょっと肩透かしを食った作品だった。
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監督 伊丹十三
出演 宮本信子 津川雅彦 大滝秀治 金田龍之介
一の宮あつ子 菅井きん 三田和代 洞口依子
橋爪功 高瀬春奈 柳谷寛 横山道代 関弘子
不破万作 上田耕一 六平直政 東野英治郎
内田あかり 北村和夫 宝田明 島田正吾
ストーリー
捨て子だったナヨコは老夫婦に育てられるが、中学を出てナヨコ(宮本信子)は芸者の道を歩むことを決心する。
そして芸者の置屋に預けられたナヨコはそこで一人前の芸者に成長してゆくがそんなある日、僧呂多聞院(金田龍之介)のもとに水揚げされ、彼女の人生は一変するのだった。
ナヨコと暮らすようになって多聞院の位はめきめきと高くなっていったのだ。
だが、間もなく多聞院は病死してしまうのだった。
何年かたち銀行のOLになったナヨコは、ふとしたことからうだつのあがらない銀行員鈴木主水(津川雅彦)と知り合い、お互い愛し合うようになる。
だが同時に政界の黒幕である大倉善武(島田正吾)もナヨコの“あげまん”に目をつけていた。
結局主水と結ばれるナヨコだったが出世街道を走り始めた主水は、出世のために瑛子という女と婚約してしまいナヨコと別れてしまうのだった。
主水に捨てられたナヨコは大倉のもとへいき、再び芸者となった。
そんな時、総理の椅子をめぐって鶴丸幹事長(北村和夫)と争う犬飼政調会長(宝田明)もまたナヨコに目をつける。
その頃主水は上役千々岩(大滝秀治)が鶴丸に政治資金を横流ししていた不正をきせられてピンチにおちいっていた。
そのことを知ったナヨコは、やはり主水のことが気がかりになっていた。
だがその時犬飼から鶴丸が癌で先長くない命であることを知らされたナヨコは、それをネタに主水の危機を救うのだった。
そしていつしか二人は永遠の愛で結ばれるのだった。
寸評
"あげまん"という艶っぽいタイトルが目を引く。
足を引っ張る女は間違いなく居そうだが、果たしてツキを呼ぶ女が存在するものかどうか?
存在だけで運気をもたらすことはなさそうだが、多分内助の功のような支えでもって男を出世させる女は居そうだ。
僧侶の多聞院(金田龍之介)はナヨコの体を触るだけで、精力を問い詰められてしょげかえるシーンなど滑稽さが前面に出た作品だ。
この滑稽さは、前作にあたる「マルサの女シリーズ」における滑稽さから見ると、随分とストレートでくすぐったいような笑いではない。
全体的な印象としてはウケ狙いの演出も目立ち始め「お葬式」「マルサの女」に見られたようなシャープな演出は影を潜めている。
運気をもたらす"あげまん女"の着想は悪くないが、それに群がる僧侶や政治家の強欲な姿が弱い。
特に幹事長鶴丸(北村和夫)と政調会長の犬飼(宝田明)の権力争いなどは上辺だけをなぞったような感じで、黒幕の大倉膳武(島田正吾)の登場とあっては子供だましのテレビドラマを見ているようだ。
主水の津川雅彦とナヨコの宮本信子のコンビはいい。
(宮本信子の娘役はちょっと無理があったけど)
「マルサの女」「マルサの女2」で培われた二人の間のようなものが完成を見たような感じがする。
津川の抑えた演技がそれを物語っていた。
主水役の津川雅彦が新支店長として赴任した時の訓示シーンがある。
結構長い訓示が続くが、これを伊丹監督はワンカットで撮っている。
行員の真ん中を割るように画面左から右へ移動していくのだが、それを行員の人垣越しで津川雅彦を追っている。
やがて最後まで行くと今度は手前に向かって喋りながら進んでくる。
そして今度は手前側を逆に右から左へと進んでいき、そして次長の言葉使いを叱責する。
ここまでを一気に撮り上げているのだが、人の影になったりするのを配慮しながらカメラは主水を追って外さない。
こういうカメラワークは難しいはずで撮影の山崎善弘の腕の見せどころだったろうと思う。
主水は取締役就任と引き換えに、一度は別れた瑛子(ミツコ)と一緒になる決意をするが、出世のためとは言え、あれほど嫌った瑛子との結婚を決意できるものだろうか?
それともあの調子良さで、外で目いっぱい羽を伸ばすつもりだったのだろうか。
瑛子も主水の気性は分かっていたはずで、そのあたりのお互いの打算に対する決断がやけにアッサリしていた。
そのような内面を突き詰める映画でないことは分かっていたが、やはりちょと物足りなさを感じた。
権力を握った政治家はもっと悪だと思うし、頭取(大滝秀治)のスキャンダルもありきたりだったな。
「お葬式」「マルサの女」でその才能を見てきただけに、期待した分ちょっと肩透かしを食った作品だった。