おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

海角七号 君想う、国境の南

2024-09-20 09:04:46 | 映画
「海角七号 君想う、国境の南」 2008年 台湾

                                 
監督 ウェイ・ダーション                            
出演 ファン・イーチェン 田中千絵 中孝介
   リン・ゾンレン マー・ニエンシエン ミンション
   イン・ウェイミン マイズ シノ・リン レイチェル・リャン

ストーリー           
台北でミュージシャンとして成功する夢に破れ、台湾最南端の故郷、恒春に戻った青年、阿嘉。
南国の陽気に包まれ、無気力な日々を過ごしていたが、ある日、郵便配達の仕事を与えられる。
働き始めた阿嘉は、宛先不明の未配達の郵便物の中に、今はない日本統治時代の住所“海角7号”宛ての小包を見つける。
同封されていたのは、60年前に書かれた7通の手紙。
敗戦によって台湾から引き揚げる日本人教師が、愛しながらも別れなければならなかった台湾人女性を想って船上で綴ったラブレターだった。
だが、今は存在しない日本統治時代の住所を知るものは誰もいなかった。
そんなある日、阿嘉は日本人歌手、中孝介を招いて催される町興しライブの前座バンドに無理やり駆り出される。
オーディションで選ばれた他のメンバーは、少女から老人まで年齢も職業も様々。
即席の寄せ集めで練習もままならず、やる気のない阿嘉の曲作りも難航。
監督役の日本人スタッフ友子とも衝突を繰り返す。
その一方で、ライブの日は刻々と近づいてくる。
果たして、バンドは無事ステージを努められるのか?
そして、60年前の手紙は宛名の女性に届くのか?
南の空に虹がかかるとき、小さな奇跡が起こる……。


寸評
敗戦で台湾から引き揚げた日本人教師の台湾人女性に宛てた7通のラブレターが物語の進行に従って朗読される。
戦争の悲劇などを盛り込んだ感動物語と思いきやさにあらず、言ってしまえば男女の青春ラブストーリーである。
それに素人バンドの成長物語が加わり、なんとか町を盛り上げようとする町の人たちの騒動が組み込まれる。
ちょっと詰め込みすぎだが、それらがコミカルに描かれているので肩は凝らない。
手紙の届け先が判明するくだりをもっと丁寧にうまく描いていたらかなりの名作になっていたと思う。
中孝介の台詞が棒読みで感情移入が出来ていないのは仕方がないけれど・・・。

最後はいいなあ~。
公開当時存在していた民主党に在籍していた小沢一郎氏などは、自分の人脈もあって中国一辺倒だが、日本はもっと台湾を大切にしたほうがいいのではないかと思ったものだ。
過去の歴史、彼らとの係わり、それぞれの感情において心通うのは台湾のほうだと感じさせられる。
終戦の結末として「自分は故郷に帰るのか、故郷を捨てるのか?」といった独白や、敗戦国民として台湾人に対する責任が果たせるのかとの自問、捨てたのではなく泣く泣く手放したのだとの思いなど、今の自分にはどれもない感情だが、それでもすべての感情が素直に理解できた。

今は老人となってしまった台湾人である小島友子さんの顔を見せなかったのはいい。
後ろ姿の背中が戦後の長い年月を無言のうちに語っていて実にいいショットだった。
今に生きる友子を演じた田中千絵さんは台湾で活躍している女優さんらしいがなかなか良い女優さんだと思う。
欲を言えば、素人バンドがアンコールを得るまでに感動のバンドとなるが、「スウィング・ガール」のような盛り上がりが欲しかった。