おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

愛の勝利を ムッソリーニを愛した女

2024-09-25 08:49:39 | 映画
「愛の勝利を ムッソリーニを愛した女」 2009年 イタリア / フランス

   
監督 マルコ・ベロッキオ                           
出演 ジョヴァンナ・メッゾジョルノ フィリッポ・ティーミ
   ミケーラ・チェスコン ピエール・ジョルジョ・ベロッキオ
   ファウスト・ルッソ・アレシ コッラード・インヴェルニッツィ

ストーリー
1910年代前半のイタリア。
イーダは、社会党の党員として政治闘争に身を投じていたムッソリーニと出会い恋に落ちる。
やがてムッソリーニは過激な言動がもとで党を除名となり窮地に陥る。
そんなムッソリーニをイーダは私財をなげうって彼の理想の実現のために献身的に支えていく。
その後身も心もすべてを捧げたイーダは、やがて彼の子供を産み認知も受ける。
だが、この時初めて、ムッソリーニがすでに家庭を持つ身だったことを知る。
自分が彼の妻であり、息子がムッソリーニの長男であることを認めさせようとするイーダ。
だが、イタリア国内でムッソリーニの支持率が急上昇していく過程で、スキャンダルを恐れたムッソリーニはイーダとその息子の存在を闇へと葬り去ろうと動き出す。
やがてファシストへと転向してゆくムッソリーニ。
最愛の人から裏切られながらも人生を賭けて、信念を貫きとおすイーダの波乱に満ちた人生。
歴史の闇に葬られた、愛の物語がいま明らかになる。


寸評
独裁者の愛人としては、ヒットラーの愛人エヴァが有名だが、ムッソリーニのイーダの存在を知らなかった。
歴史から消された存在だったためだろうか、それとも単に僕の知識不足だったのか。
いずれにしても、ジョヴァンナ・メッゾジョルノ演じるイーダはすごい女性だ。
前半は愛し合う2人が官能的に描かれ、しかもイーダが情熱的に、また動物的に振舞う。
それでも、ムッソリーニの視線が必ずしも彼女に向けられていたわけではないことが見てとれて、これが後半への心理的な伏線になっていた。
イーダと息子が邪魔になったムッソリーニが彼らを監視するだけでは飽き足らずに、イーダを精神病院に閉じ込め、息子もなかば監禁状態に置くところあたりから俄然引き込まれていく。
「あの人は私があそこまでにした!」「いずれ私が正妻になる!」などとわめくイーダは少し嫌味な女だと感じたのだが、やがて自分の人生を否定されたくない思いからだと感じて来てくると、映画全体が奥深くなって来たように思う。
精神科医は、「いずれファシズムは衰退する。今は演技しなさい」とアドバイスするが、それでもイーダは愚直に、自分がムッソリーニの愛人であることを主張し続ける。
イーダのその遇直さが純真さに見えてきて、チャップリンの映画やニュースフィルムを登場させたりして、背景となった社会状況を描き出しているが、その中に登場する実物のムッソリーニに「コノヤロー!」と叫びたくなる。
やはり、ムッソリーニは否定されるべき人物なのだ。
それより何より、この映画はイーダを演じたジョヴァンナ・メッゾジョルノの迫力に満ちた演技につきる。
全編を通じて流れる音楽がその演技をさらに高揚させ効果抜群であった。