あなたから一番遠いブログ

自分が生きている世界に違和感を感じている。誰にも言えない本音を、世界の片隅になすりつけるように書きつけよう。

そして最後に勝った菅原文太

2014年12月05日 00時00分30秒 | Weblog
 12月3日の朝日新聞に樋口尚文が菅原文太への追悼文を書いている。その中で樋口は菅原文太を、高倉健のアウトロー型ヒーローに対して「アンチヒーロー」であると評した。
 菅原文太がアンチヒーローであるかどうかはともかく、終生つくりつくられた銀幕のスターであり続けようとした高倉健に対して、菅原文太は生身の現実社会の中で、最後は映画自体を拒否して社会活動家になろうとした。そういう意味で二人は全くの対極にあったと言うことは出来よう。
 高倉健が死ぬまで謙虚で寡黙な芸名である高倉健を演じ続け、死んで後にまで健康食品の宣伝を続けたのに対し、本名である菅原文太は、時にインタビューにさえ広島弁を使って演技をしながら、実はヒーローであることなどかなぐり捨ててでも、大人としての責任をとろうとしていた。
 ぼく自身の個人的な体験から言えば、ぼくは高倉健の映画を封切りで見たことがないが、菅原文太の「トラック野郎」の第一作は公開時に見た記憶がある。今となってそれは、ぼく自身の中である種の象徴的な出来事のように感じる。
 テレビドラマ版の「幸せの黄色いハンカチ」を監督した栗山富夫は、テレビショーのインタビューに答えて、何を考えているか分からない高倉健に対して、菅原文太は強いライバル心を持っていたはずだと語った。
 どちらが偉いとか、どちらが素晴らしいなどと比べるようなことではないが、高倉健が死んで世の中が健さん一色に染まっていたその時、まるで映画のラストのどんでん返しのように菅原文太が登場し、最後をみんなかっさらっていってしまったところは、最後の最後に文太アニイの勝ちだったのかもしれないなと思ったりもするのである。

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