ジーン・ウールの不思議な旅

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東電賠償「上限なし」は誤り 原子力産業全体を損なう

2011-05-12 17:58:09 | 石平チャイナ・政治・経済
東電賠償「上限なし」は誤り

日経新聞 ジョン・ハムレ米戦略研究所長寄稿 2011/5/12
(米上院軍事委員会専門スタッフなどを経て、1997年にクリントン政権で国防副長官に就任。2000年から現職。核管理問題での提言も多い。60歳。)


 米戦略国際問題研究所(CSIS)のジョン・ハムレ所長は11日、東京電力の福島第1原子力発電所事故を受けて日本経済新聞に寄稿した。

同所長は東電の賠償責任(補償)に上限を設けないのは「誤った政策」と指摘。
原子力分野での世界における日本の主導的な地位も失うことになると警鐘を鳴らした


★ 信用崩壊の恐れ

 福島第一原発で発生した事故を巡り、日本の市民や政治家らが抱いている憤りは十二分に理解できる。
一方で、この問題で間違った政策対応をとった場合、より長期的な損害を生み出すことを忘れてはならない。
現在、日本で原子力による損害を補償する枠組み創設のための立法措置が議論されている。
その骨子は原発を運営する企業に対して、被害者に上限を設けないものだと理解している。

 東電や他の電力事業会社に無限の責任を負わせることは政治的には良いことかもしれない。
 しかし、(原子力)政策としては誤りと言わざるを得ない。電力会社の信用格付けを日本だけでなく、世界でも著しく損なう。いかなる投資家も上限のない責任制度に伴うリスクには耐えられない。

 東電の信用は崩れ落ちる。それだけではなく、日本の原子力産業全体の信用も消し飛んでしまう。
世界の原子力関連市場において、日本は中核技術・部品供給において、世界的に鍵となる供給源となっている。その主導的な地位も失うだろう。

 日本には原子力エネルギーに対する新しい包括的なアプローチが求められている。
これには既存の原子力施設に対する強固で独立した規制や、確固たる資金面での義務と免責、そして原子力に対する安全性と信頼性を高める確かな努力が伴わなければならない。

★ 包括計画作成を

 事故を受けて、誤った政策を遂行し、原子力産業全体を損なう事態になれば、日本は「第2の災害」とも呼ぶべき事態に陥る。
今、必要なのは事を急ぐような立法措置ではなく、考えを重ねたうえでの行動だ。
日本政府は国際的に認められた(原子力技術に関する)リーダーらで構成する「委員会」を創設し、包括的な計画を作成すべきだ。

 この計画にはもちろん、損害に対する賠償制度もふくまれなければならない。
いくつかの参考モデルもある。米国が導入した原子力損害賠償制度「プライス・アンダーソン法」もその一つだ。原子力産業に極めて高い「安全と信頼の文化」を求めると同時に、投資家が恐れをなして電力事業への投資から逃げ出すことがないようバランスを取る必要がある。

 原発事故に日本がどのように対応するかについて、米国も大きな関心を持っている。
米国では「原子力ルネサンス」とも呼ばれる新しい動きに期待が集まっている。
一方で今回の悲劇は米国の反核感情に再び火をつけようともしている。
危機を日本がどのように乗り越えていくかは米国にも直接、かつ即効性のあるインパクトをもたらす。

 日本では今、まだ原発事故に対する怒りが収まっていないと思う。
そうした中で行動を起こすべきではない。
事態をよく観察し、これ以上、物事を悪化させずに様々な問題の解決方法を見つける必要がある。        


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