猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

砂の器

2014-09-29 03:23:06 | 日記
1974年の日本映画「砂の器」。
6月24日の早朝、国鉄蒲田操車場内で、男の殺害遺体が発見された。被害者の身元が
わからず、捜査は難航を極めた。警視庁の今西刑事(丹波哲郎)と、西蒲田署の吉村刑事
(森田健作)らの必死の聞き込みによって、前日の深夜、蒲田駅近くのバーで、被害者と
連れの男が話し込んでいたことが判明する。被害者の方は東北訛りのズーズー弁で話し、
また2人は「カメダ」の名前を話題にしていたという。人の姓の連想によって、東北各県より
64名の亀田姓が洗い出されたが、その該当者はいなかった。しかし今西は「秋田県・亀田」
という土地名を洗い、吉村とともに亀田に飛ぶが、手掛かりは発見できなかった。その帰路、
2人は列車内で音楽家の和賀英良(加藤剛)と会う。和賀は公演旅行の帰りらしかった。
8月4日、西蒲田署の捜査本部は解散し、以後は警視庁の継続捜査に移った。

松本清張原作のミステリーの映画化である。ドキュメンタリー風のストーリーは、推理小説
を1冊読んだ気分になる。ミステリーだが、悲しい物語でもある。
この物語は「カメダ」という人名とも土地名ともわからない言葉が、大きなポイントになって
いる。警察はまずその「カメダ」が何なのかの割り出しに苦労する。その過程がじっくりと
描かれていて、とてもおもしろい。やがて「カメダ」の正体がわかり、そこへ出向く2人の
刑事たちだが、そこには犯人の出生の秘密があったことを知ることになる。それは現代では
有り得ない、悲しいものだった。
俳優たちがいい。丹波哲郎、加藤剛、森田健作…この人たちってこんなに演技がうまかったん
だな、と再認識させられる。
ラスト近くの和賀の演奏と、それに伴う事件の解明、これがまた感動的だ。和賀の人生とは
何だったのか。最愛の父親に会うこともできず、父親もまた息子を知らない人だと言う。
真面目で実直で思いやり深かったがために、殺されてしまう男。かわいそうな人が何人も
登場し、やるせない。
和賀の作曲した「宿命」は、彼の人生の集大成だったのか。その曲はあまりにも悲しい。
松本清張作品としても、映画としても、傑作である。



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コメント
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