猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

黒い眼のオペラ

2020-07-07 22:46:43 | 日記
2006年の台湾・マレーシア・フランス・オーストリア合作映画「黒い眼のオペ
ラ」。

マレーシアの首都、クアラルンプール。怪しげな賭け事に手を出したシャオカン
(リー・カンション)は暴行を受け、瀕死の状態で行き倒れる。彼を助けたのは大
きなマットレスを運搬中の労働者の青年ラワン(ノーマン・アトン)だった。シャ
オカンの看護をするうち、ラワンは次第に彼に惹かれていく。一方、食堂で働く
女性シャンチー(チェン・シャンチー)は、女主人の寝たきりの息子(リー・カン
ション2役)の世話をさせられるなど、こき使われている。ある日、シャオカンと
シャンチーは運命的な出会いをする。

ツァイ・ミンリャン監督作品。マレーシアを舞台に男性2人女性1人の人間模様
を描いている。職業がはっきりしないシャオカン(ホームレス?)は怪しげな賭け
事に手を出し、数人の男たちに暴行を受ける。労働者の青年ラワンはシャオカン
を助け、献身的に世話をし、シャオカンは回復していく。そのうちにラワンはシ
ャオカンに惹かれていく。食堂で働くシャンチーは女主人のほぼ植物状態の息子
の世話までさせられ、空しい日々を送っている。そしてある日シャオカンとシャ
ンチーは出会い、惹かれ合っていく。
セリフが極端に少なく、長回しのシーンが多いので、少し退屈な感じもするが、
好きなタイプの映画だった。冒頭の賭け事のシーンで男たちがしゃべっていたが、
それ以降セリフあったっけ?というくらいである。ツァイ・ミンリャンの映画を
観るのは「郊遊〈ピクニック〉」以来2作目だが、この人はこういう作風のよう
だ。セリフがとても少なく、ストーリーやシーンに説明がないので、観ている側
が想像するしかない。でも難解というタイプの映画ではない。ひたすら静かな映
画だが、その中に動のエネルギーを感じるのだ。マレーシアの暑さ、湿気、下町
の不衛生さが画面から伝わってくる。
シャオカンを助けたラワンは彼に惹かれていき、シャオカンとシャンチーもまた
惹かれ合う。孤独な者同士がつながっていく。近隣国で森林火災が発生し、噴煙
が流れ込んでくるシーンは印象的だ。町中が煙に覆われている中、シャオカンと
シャンチーはカップ麺の容器をマスク代わりに口に当て、廃墟で密会をしている。
2人はそこでお互いの孤独を埋め合っているのか。
シャンチーが世話をさせられている寝たきりの男も印象深い。体は麻痺していて
全く動かず、表情もない。意識はないのだろう。シャオカン役のリー・カンショ
ンが2役しているこの男の顔が度々アップで写されるのだが、登場人物たちの孤
独をこの男が表現している気がする。淋しいけれど、生きていたい。温もりを求
めたい、という気持ち。ラストのファンタジックなシーンは美しい。




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