猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

記憶にございません!

2022-12-09 22:12:18 | 日記
2019年の日本映画「記憶にございません!」。

国民からは史上最悪の嫌われ総理と呼ばれた総理大臣の黒田啓介(中井貴一)
は、演説中に一般市民の投げた石が頭に当たり、記憶を失くしてしまう。各
大臣の顔や名前はもちろん、国会議事堂の本会議室の場所、自分の妻や息子
の名前すらもわからなくなってしまった啓介は、金と権力に目がくらんだ悪
徳政治家から善良な普通のおじさんに変貌してしまった。国民の混乱を避け
るため、啓介が記憶を失ったことは最高機密として隠され、啓介は首相秘書
官の井坂(ディーン・フジオカ)たちのサポートにより、何とか日々の公務を
こなしていった。

三谷幸喜監督・脚本のコメディ。暴言や傲慢な態度から史上最低の支持率を
叩き出した総理大臣の黒田啓介。演説中に一般市民から石を投げられ、頭に
当たって記憶喪失になってしまう。病院のベッドで目覚め、何が何だかわか
らない彼は、病院を抜け出してパジャマ姿で夜の街をうろつくが、突然車が
何台も停まり、秘書官を名乗る者たちから「お迎えにあがりました、総理」
と言われ、総理大臣官邸に連れ戻される。そして自分が記憶喪失であること
はトップシークレットであると告げられる。
啓介は昔のことは覚えているのだが、国会議員になってからの記憶を一切失
くし、当然自分の政策や妻子の名前や顔も思い出せない。こういうのって映
画や漫画などでよく見ると思う。昔のことは覚えているのに最近のことを忘
れてしまう、というもの。記憶喪失にはそういうタイプが多いのだろうか。
啓介が記憶喪失であることを知っているのはごく身近にいる数人だけ(妻子
も知らない)。とにかくいろんな公務を控えている状況で、議員たちにも知
られては困るのだった。
とてもおもしろい映画で、小ネタがちょこちょこあって笑える。総理大臣官
邸の料理人(斉藤由貴)を妻だと思って抱きつき、びっくりされて、事務秘書
官(小池栄子)から「奥様ではございません」と言われたり、「僕に総理なん
て無理だよ~」と困惑したり、「何でこんなに支持率が低いの!?」と驚い
たりと、とにかく笑える。生活に少し慣れてきて、妻と息子と一緒にレスト
ランへ行くが、息子の名前を何度も間違え、ワインを注文する時「未成年じ
ゃないよね?」と聞き、息子に「未成年です」と呆れられるシーンなんかと
てもおもしろい。優しく穏やかになった啓介に妻は恐怖を感じている。
啓介は次第に真摯に政治と向き合うようになってきて、本気でこの国を変え
たいと思い始める。私は三谷幸喜の映画はほとんど観ていないが、登場人物
がやたら多いイメージがある。この映画もやたら人が出てくるし、そしてキ
ャストの演技が皆とてもいい。中井貴一のコミカルな演技はもちろんだが、
冷静沈着で無表情のディーン・フジオカも良かった。ラストはちょっと感動
的だし、とてもおもしろい政界コメディだった。




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ツリー・オブ・ライフ

2022-12-05 22:05:05 | 日記
2011年のアメリカ映画「ツリー・オブ・ライフ」。

1950年代半ば、オブライエン夫妻はテキサスの田舎町で幸せに暮らして
いた。一家の大黒柱の父親(ブラット・ピット)は信仰に篤く3人の子供た
ちに対して厳しく、母親(ジェシカ・チャステイン)は父親と違って優しく
愛情を注ぎこんでいた。長男のジャックは父親と母親の板挟みになり、葛
藤する日々を送っていた。やがて大人になって実業家として成功したジャ
ック(ショーン・ペン)は、自分の人生や生き方の根源となった少年時代に
思いを馳せる。

テレンス・マリック監督によるヒューマン・ドラマ。第64回カンヌ国際
映画祭でパルム・ドールを受賞。ジャックは両親と弟2人と暮らしており、
一家は騒がしくも幸せな日々を過ごしていた。オブライエンは敬虔なキリ
スト教徒で、厳格な父親だった。子供たちは口答えも許されず、父親の命
令は絶対だと教えられる。母親は父親とは教育方針が違い、朗らかに優し
く子供たちを育てた。そのことで夫婦の間では口論になることもあった。
父親は男の子には力と知恵が必要だと考えており、長男のジャックには特
に厳しく接した。ジャックは次第に父親に反発を覚えるようになる。
宗教的というか哲学的な映画で、私はあまりおもしろくなかった。宗教は
ともかく哲学があまり好きではないので。とにかく冗長で退屈な感じで、
「そのシーン、いる?」と思うようなシーンが多かった。これがパルム・
ドール?と思ったが、ネットのレビューを読んでも評価は分かれているの
で、合う人には合うのだろう。ジャックたち兄弟の父親はとにかく厳しく、
自分に逆らうことを許さない。でも彼は子供たちを深く愛している。ただ
そういう「口答えをするな」というような態度で幼い子供たちに愛情が伝
わるかは少し疑問に思う。
子供たちは父親の前では遠慮がちでビクビクしているように見える。父親
が出張に行った時、とてものびのびと楽しそうに遊んでいた。私は自分の
子供の頃のことを思い出してしまった。父は帰りが遅いことが多かったが、
たまに早く帰宅して一緒に夕食を食べることになると、すごく嫌だった。
食卓の雰囲気が重たいのだ。ジャックはやがて「パパが死にますように」
と神に祈るようになる。父親はジャックに自分の人生を話したことがある。
彼の夢は音楽家になることだったが、意志が弱かったため音楽家になれず、
今は工場で働いているのだと。そして自分のようになるな、と。
やがて父親の工場が閉鎖することになり、新しい仕事に就くために一家は
住み慣れた家を離れなければならなくなる。更にその後次男が19歳で亡
くなるという不幸にも見舞われる(死因の説明はない)。そして現在、中年
になったジャックは父親に電話をかける、という最初の方のシーンに戻る
のだ。確かに感動的な映画ではあるのだが、退屈で仕方なかった。ブラッ
ド・ピットとショーン・ペンが出演していてこのおもしろくなさは何なん
だ、と思った(ショーン・ペンの出番は少ない)。私には合わなかったよう
だ。




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シャッター アイランド

2022-12-01 22:01:05 | 日記
2010年のアメリカ映画「シャッター アイランド」。

1954年、連邦保安官テディ・ダニエルズ(レオナルド・ディカプリオ)と相棒
のチャック・オール(マーク・ラファロ)は、孤島(シャッターアイランド)にあ
る精神異常の犯罪者ばかりを収容しているアッシュクリフ精神病院を訪れる。
この島でレイチェル(エミリー・モーティマー)という患者が謎のメッセージを
残して失踪した。捜査を進めていく中でテディとチャックは、島に謎が多すぎ
ることに不信感を強めていく。

マーティン・スコセッシ監督によるミステリー。孤島にあるアッシュクリフ精
神病院は精神疾患を持つ犯罪者ばかりが収容されている。孤島であるため本土
とは行き来が難しい環境であるにも関わらず、レイチェルという犯罪者が行方
不明になる。そして連邦保安官であるテディとチャックが捜査のために派遣さ
れる。レイチェルは自分の子供3人を殺害して逮捕されたが、この病院は自宅
であり、子供たちと今も暮らしていると思い込んでいた。そんな中テディはレ
イチェルの主治医であるシーアン医師が休暇を取っていると聞かされる。自分
の患者が行方不明なのに休暇を取るのはおかしいと思い、シーアン医師に連絡
を取るよう言うが、嵐のためできないと言われる。
前半は少し退屈な感じなのだが、だんだんおもしろくなっていく。何がどうな
っているのか、自分の頭もおかしくなりそうな気になる。やっぱりアメリカ映
画はこういう精神を病んでいる系の映画はおもしろいなあと思う。テディとチ
ャックは医師たちや患者たちに聞き取り調査を行うが、どうも皆何かを隠して
いるように思える。発言がつじつまが合わないことばかりなのだ。この物語は
舞台が1954年だというところがポイントになっている。戦後まだ数年しか経
っていない。テディは戦争中出征し、ナチスの行為を見てトラウマを抱えてい
る。
終盤のどんでん返しがとてもよく、びっくりさせられる。そして過去のシーン
を色々思い出して、あああれはそういうことだったのか、と合点がいく。匂わ
せているシーンが多かったことに気づく。おもしろいだけでなくとても重たい
映画である。精神を病む、精神が崩壊するという物語はやはり観ていて辛くな
るものがある。テディの「モンスターのまま生きるのと、善人のまま死ぬのと
どっちがいいかな」というセリフは本当に重たい。レオナルド・ディカプリオ
の演技と医師の1人であるマックス・フォン・シドーの存在感はさすが。ラス
トシーンは悲しい。


良かったらこちらもどうぞ。マーティン・スコセッシ監督作品です。
ウルフ・オブ・ウォールストリート


ささやかなクリスマスの飾りです(笑)

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