ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

最愛の大地

2013-08-07 23:29:43 | さ行

アンジェリーナ・ジョリー初監督・初脚本作品。
真剣で真摯な力作と感じました。


「最愛の大地」70点★★★★


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1992年、ボスニア・ヘルチェゴビナ。

多民族・多宗教の人々が共存するこの地で
ムスリム系の画家アイラ(ザーナ・マリアノヴィッチ)は
セルビア系の警官ダニエル(ゴラン・コスティック)と恋人同士だった。

が、4ヶ月後。

ボスニア紛争が勃発し、
ムスリム系の住民は強制的に連行される。

アイラもまた
女性ばかりを集めた収容所に行くことに。

そこは
セルビア兵士が収容された女性を好き勝手にレイプする
異常な環境だった――。

そこでアイラは、敵となってしまったダニエルに再会するが――。

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女優アンジェリーナ・ジョリーの初監督・初脚本。

ボスニア紛争をテーマにした作品というと
「サラエボ、希望の街角」(いい映画!)
などがありますが、

外部の、しかもハリウッドセレブが
このテーマを扱うとあって
監督は脅迫や相当嫌な目にあったそう。

それに屈せず、作りきった作品です。

アンジー、強ええ……。

セレブがちょっと手を出したとかとは
別次元にある、その本気っぷり。

ひれ伏すと同時に
ブラピもこれはついて行きたくなるよなあと思ったりもする(笑)

そして映画には
ロシアのニキータ・ミハルコフ監督とか、
欧州の戦争映画を思わせる光と空気の硬質さが徹底して感じられ、

何も知らずに観たとしても、
「誰の目をも、この現実に起こった悲劇から反らさせないぞ!」という迫力を
持っていると思います。

キツい流血などの描写なくても

紛争の悲惨さと深い悲しみ
想像を絶する当時の状況の緊張感を保っているのもいい。


まったくもって最近の出来事なのに
こんな痛ましいことが起こっていたのか――と改めて突きつけられ、
直視するのはやはりつらいですけどね(泣)

見なきゃならんでしょう。

真摯さ生真面目さが、ヒットにつながるとは限らないけど
応援したいと感じます。

あと、特に詳しい説明なしなので
ボスニア紛争について、多少の予習は必至かもしれません。


★8/10(土)から新宿ピカデリーほか全国で公開。

「最愛の大地」公式サイト
コメント
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