ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

トラブゾン狂騒曲~小さな村の大きなゴミ騒動~

2013-08-15 21:27:52 | た行

酷い……。
だからこそ「これじゃいかん!」を強く感じます。

**********************


「トラブゾン狂騒曲~小さな村の大きなゴミ騒動~」73点★★★★


**********************

「そして、私たちは愛に帰る」「ソウル・キッチン」の
ファティ・アキン監督が

巨大なゴミ捨て場にされた
トルコの小さな村の悲劇を記録し続けたドキュメンタリー。

監督の祖父母がこの村の出身だったそうで、
05年に初めてこの村を訪れ、
その美しさに感嘆していたら

「ここに巨大ゴミ処理場ができるんだよ……」と聞かされて、
それ以降、カメラを回し続けた記録なんだそうです。


村の状況は、
酷い!とにかく酷い!につきます。

ゴミ処理場に反対した市長は政府に訴えられ
「標的の村」と同じ手口じゃん!)
あっ、という間もなく処理場が、稼働をはじめてしまう。

処理場っていったって
巨大な穴にゴミを投げ込んでいくだけなので、
猛烈な悪臭が漂い汚水が川に流れ込んでいく。

ゴミをあさる野犬は500頭にもなり(可哀想だ……)
大量の鳥たちのフンが、名産の茶葉に降り注いで収穫も台なし。

住民たちは必死に抗議をするんだけど

なにより酷いのが
視察にくる知事やら役人やらが
みな惨状を前に「でも、何処かに捨てなきゃならないから」って言うことですよ。

それってすなわちゴミだけじゃなく
日本の基地問題も、原発問題だって同じなわけです。

「誰かが犠牲にならなきゃいけないから」という
政府や権力の思考のありかたに問題がある!

だからこそ、怒りも共有できるし、
観るべき作品だと思います。

しかも問題はまだ
何も解決もしていないそうですから……。酷い!

しかし
ファティ・アキン監督らしいのは
悲惨な風景のなかに、
ちょっとしたユーモアがあったりする点。

働き者の女性たちと働かない男たち(失笑)など
トルコの人々の民族性や暮らしぶりを
垣間見るような楽しさもありました。


★8/17(土)からシアター・イメージフォーラムで公開。ほか全国順次公開。

「トラブゾン狂騒曲~小さな村の大きなゴミ騒動~」公式サイト
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする