ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

Girl/ガール

2019-07-01 22:59:46 | か行

この主演の子は誰?と釘付け。

 

「Girl/ガール」75点★★★★

 

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ベルギーに暮らすララ(ビクトール・ポルスター)は

バレリーナを目指す15歳。

 

その才能から

国内有数のバレエ学校への入学を認められ、

理解ある父(アリエ・ワルトアルテ)と6歳の弟(オリバー・ポダル)と

バレエ学校に通える地へと引っ越してきた。

 

シングルファザーである父のもと

母親代わりに弟の面倒を見るララは

まさにお母さんであり、よきお姉さん。

 

が、実はララは男性の体をもって生まれてきた

トランスジェンダーだった。

 

手術を受けるにはまだ年若すぎる彼女は

まずはホルモン療法で

女性らしい体になるステップを踏もうとしている。

 

家でもバレエ学校でも

どこから見ても完ぺきに「女の子」なララだが

実は毎朝、入念に股間をテーピングし、

レッスンの間にトイレにも行けず

人一倍の苦しみを抱えていた。

 

が、そんなことをおくびにも出さず

ララは夢に向かって

努力を重ねていたのだが――?

 

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この主演の子は誰なのだろう?

どうやって見つけてきたのだろう?と、

まずはそればかりに心を奪われてしまった。

 

実在のトランスジェンダーのバレリーナがモデルと聞いていたので

ドキュメンタリー?いや

本人が自身の人生を振り返って演じているのかなあと

信じ切って105分を観ましたw

 

で、見終わって、男性ダンサーの挑戦だったと知り、

いまだ信じられません!

それほどに、主人公ララが素晴らしい。

 

そのたたずまいも、ありようも

身を切るほどに痛ましく、美しいのだ。

 

不在の母に変わり、まだ幼い6歳の弟の面倒をみる

その横顔には母性が溢れ出ているし

日々、丁寧に美しく身を整える彼女に

背筋が伸びる思いがする。

 

心と相容れない身体は

どんなにか憎くいまいましいだろうに、

彼女はそんな身体を大切にし、

ホルモン治療での少しの変化を期待しながら、愛しんでもいる。

彼女のそんな丁寧な所作に、

自分の体をあまりに雑に扱っている自分を恥じてしまうほどです。

 

そして念願のバレエ学校に通い、

文字通り血のにじむようなレッスンに耐え

同級生たちの、受け入れているようで微妙な視線やいじめにも耐える。

 

全てを内に隠し、秘め、

外に出そうとしない彼女の身を切る想いが伝わり、

張り裂けそうになりながら、見守ってしまうんですねえ!

 

本物のダンサーが演じているだけあって

バレエのレッスンシーンも丹念だし

 

 

そして

これだけ理解ある父や周囲に囲まれていても、

なお、彼女は苦しむんです。

その痛みが我が身のことのように苦しい・・・。

衝撃的なラスト、そして、その先の光、と

ぜひ見極めていただきたいです!

 

★7/5(金)から新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamura ル・シネマほか全国で公開。

「Girl/ガール」公式サイト

コメント (2)
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