ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

マーウェン

2019-07-18 23:52:53 | ま行

これは良品!

 

「マーウェン」73点★★★★

 

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第二次世界大戦中、勇敢なパイロット(スティーヴ・カレル)は

不時着したベルギーの田舎で

ドイツ兵に囲まれ、大ピンチに陥る。

が、そこになぜか美女軍団が登場して

ドイツ兵を一掃し、パイロットを助けた!

 

――と、これはすべて

アーティスト、マーク・ホーガンキャンプ(スティーヴ・カレル)による

写真作品の一部。

 

マークはG.I.ジョーやバービー人形をセッティングし、ストーリーに沿って動かし

映画のワンシーンのような写真を撮るアーティストだ。

 

高い技で、多くの人を魅了するマーク。

だが、彼にはそれをしなければならない理由があった――。

 

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「バック・トゥ・ザ・フューチャー」などで知られる

名匠ロバート・ゼメキス監督が

「これは描かねば!」と挑んだという作品。

予想以上に、すてきな良品でした。

 

なーんにも知らずに観ても

十分におもしろいと思う。

でも、この人物が実在し、内容も相当に現実と知ると

また感銘が深いと思います。

 

主人公マーク・ホーガンキャンプは

2000年、バーで居合わせた男たちに「ハイヒールを履くのが好きなんだ」と話し、

その帰り道に男たちに囲まれ、瀕死の重傷を負わされてしまう。

つまり「キモイやつ!」というだけが理由の

ヘイトクライム(憎悪犯罪)の犠牲になったわけです。

 

 

瀕死の重傷を負ったマークは、脳を損傷し

事件のフラッシュバックに悩まされながらも

フィギュアを使ってリアルな写真を撮ることを始める。

そしてその写真が評判となり、個展が開催されたり

2010年にはドキュメンタリー映画も作られた。

 

そんな彼の物語に着手したのが

ロバート・ゼメキス監督なんですね。

 

PTSDに苦しみ、

さらに裁判で加害者と向き合わなければいけないことにも苦しむ

マークの実際の闘いをベースにしながら

監督は最先端の映像を駆使して

マジで実写と見まごうフィギュアを使ったCG画像と

実際の俳優の映像を合成し、

この物語を描いている。

 

この映像はおそらく

マークの写真世界の発展系であり

彼がやりたかったこと、表現したかった「思い」を

忠実に現していると思われ、

なによりこの映画、本人にとって最高の贈り物だろうな、と思いました。

 

ともすれば被害者側が「自分に落ち度があったのでは」となってしまう

ヘイトクライムの難しさや闇を告発してもいて、

 

監督がこの物語で

さまざまにつらい状況にある人々を

勇気づけようとしている意図が伝わるんです。

 

それに、単純にミニチュア好きにはたまらない!(笑)

ドールハウス的な美術や小道具、さらに

俳優本人に限りなくそっくりな人形の見事な動きも必見です。

 

「バック・トゥ・ザ〜」の名シーンを模した遊びなどもあって

ニヤリさせられました。

 

マークを演じるスティーブ・カレルも、

「ビューティフル・ボーイ」(18年)といい

老けて、よりいい感じになってきた!

 

★7/19(金)から全国で公開。

「マーウェン」公式サイト

コメント
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