ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ニューヨーク 親切なロシア料理店

2020-12-13 13:54:44 | な行

「17歳の肖像」監督にハズレなし!

 

「ニューヨーク 親切なロシア料理店」74点★★★★

 

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ニューヨーク。

早朝に車を飛ばし、幼い息子ふたりとこの街にやってきた

若き母親クララ(ゾーイ・カザン)。

旅行にきた、とクララは子どもたちに言うが

実は、DV夫から逃げてきていた。

 

泊まる場所もお金もなく、クララは車を老舗ロシア料理店の裏に止め、

そこで眠ることに。

 

そのころロシア料理店では

常連客のアリス(アンドレア・ライズボロー)が一人食事を取っていた。

別のテーブルには

ある事情で刑務所から出てきたばかりのマーク(タヒール・ラハム)がいる。

 

マークはひょんなことから料理店のオーナー(ビル・ナイ)に

マネージャーとしてスカウトされる。

 

それぞれワケを抱えた人々の糸が

少しずつ、つながっていく――。

 

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「17歳の肖像」(09年)「人生はシネマティック!」(16年)

のロネ・シェルフィグ監督作。

毎回言ってるけど、この人、うまいなあと思う。

 

DV夫から逃げてきた母と子と

それを見守り、そっと助ける人々の物語。

 

つながりそうでつながらない登場人物たちの糸が

「やっとつながった!」という喜びがじんわりとやってきます。

 

 

早朝、田舎から

NYにやってきた若い母親クララ(ゾーイ・カザン)と子どもたち。

 

大都会にワクワクする彼らは

実はDV夫から逃れてきているんだけど

 

夫は外面良し男らしく、誰もDVの事実を知らないし

しかも警官というのが始末に悪い。

あっという間に警官のネットワークで

追っ手がくる可能性があるんだもん。

 

で、母子は夫に見つからないようにするため

職にも就けず、カードも使えず、

どんどん苦しい状況になっていく。

 

でも

ヒロインは明るく軽く、なんとか乗り切ろうとする。

微妙な万引きやらで、食いつなごうとしたり(けっこう笑える)

あの「ニューヨーク公共図書館」で時間をつぶしたり。

 

そんな母子に、たまたま出会った人々が

救いの手を差し伸べてくれるんですが

 

すべてがそっと、自然に起こる。

助けてくれる手もさりげないし

逆に助けを拒む人だって非情な人物ではなく、ごく普通に思える。

 

そこがリアルなんですよね。

 

一歩の違いであっという間に苦境に陥る人生のあやうさ。

一見普通にみえる全ての人が、

なんらかの困難を抱えているかもしれないんだ、ということを

監督は、やわらかく教えてくれている気がする。

 

自分だっていつ助けられるかわからない。

「大丈夫ですか」と声をかけられる心を

持ち合わせていたいなあ(いられるかなあ)と、思ったりするのでした。

 

それにキャストのセンスが抜群。

ゾーイ・カザンに、「預言者」のタハール・ラヒム、

エセロシアなまりを披露するビル・ナイも笑えるし。

やっぱりビル・ナイ、好きだ!(笑)

 

★12/11(金)からシネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開。

「ニューヨーク 親切なロシア料理店」公式サイト

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