習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『天使と悪魔』

2009-05-31 21:38:58 | 映画
 今、この映画がナンバーワンヒットを飛ばしているらしい。こんな日本人にとってどうでもいいようなサスペンス映画よりも先日見た『チルドレン・オブ・ホワンシー』のほうがずっと我々にとっては意味のある映画だと思うのだが、現実はそうではない。『チルドレン~』は劇場公開すらされないし、『ウオー・ロード』は日本では不入りで上映は早々に終わっていく。  そんな中、『ダヴィンチコード』を見てあんなにがっかりさせら . . . 本文を読む
コメント

『たみおのしあわせ』

2009-05-30 00:09:39 | 映画
 どうしてこんなにもゆるい作り方をするのだろうか。しかもそれが見ていてあんまり心地よくない。ブラックユーモアというには、ちょっとゆるすぎて、こちらにまでは届かない。もちろん描きたいことは想像すれば充分わかる気もするけど、描かれていないものを勝手に解釈する気にもならないくらいのゆるさなのだ。何と受け止めても可、って感じ。  ラストで父(原田芳雄)と息子(オダギリジョー)が手に手をとって結婚式の行わ . . . 本文を読む
コメント

演劇ユニット 各駅特急1・2・3!『動乱の桜ヶ丘R・S』

2009-05-30 00:05:41 | 演劇
 レンタルスタジオを舞台として、ここでの3つのお話が並行して描かれるオムニバス長編。それぞれ別々のエピソードだが、全体を1本に再構成した。脚色・構成・演出はカンセイの法則の永冨義人さん。1本のお話にすることで統一感のある何かを見せることが出来たならいいのだが、各エピソードはあまりにたわいなさ過ぎて、しかも微妙に方向性がずれていて(別々の作家による作品だからしかたないし、それがこの芝居の本当のおもし . . . 本文を読む
コメント

万城目学 『プリンセス・トヨトミ』

2009-05-29 23:40:09 | その他
 大阪城の地下には、なんと大阪国会議事堂というものがある。大阪国200万の民が大阪城の集結。大阪全体の機能停止。プリンセスの失踪からドラマは怒濤のクライマックスに突入する。万城目学渾身の大作である。  こんなふうに書くとなんだか凄い超大作で、SFスペクタクル巨編に見えるのだが。だが、実際はそうではなくて、なんだかしょぼい話で、それが彼の狙いでもある。400年間の潜伏期間を経て日本対大阪の戦争が始 . . . 本文を読む
コメント

森見登美彦 『有頂天家族』

2009-05-29 23:20:05 | その他
 最初は「なんなんだ、これは?」と思った。読みながら、「ふん、ばかばかしい」と思った。だいたい天狗とか狸とかが出てきて、人間を化かしたり、そんなふざけた小説を読んでどうする?と思った。今までも充分バカだったけど、今回の森見はいつも以上にすごい。なんか、あほらしくてこんなものを読んでいる自分って、どこまでヒマ人なのだ、と反省しきり。本当は今、けっこう忙しいのに、こんなもので時間を使うなんてありえない . . . 本文を読む
コメント

劇団 乾杯 『街街』

2009-05-28 23:55:42 | 演劇
 この芝居自体が何かの『間違い』ではないのか、と思わせる。『街街』(まちがい、と読ませる)というふざけたタイトルがぴたりと嵌っている。ラストなんて唖然である。だって「この場所で公演をしてはならない」ということになったから、芝居も終わりますだなんて、本当なら納得いかないところだ。でも、収拾がつかなくなった芝居を無理から終わらせる、のではなく、いくらでも続けれる芝居を、きりがないから、このへんでやめて . . . 本文を読む
コメント

『ベルサイユの子』

2009-05-28 23:26:02 | 映画
 ベルサイユ宮殿にある広大な森の中で暮らすホームレスの青年 (ギョーム・ドパルデュー)のもとに、同じようにホームレスの若い女がやってくる。彼女は幼い息子を残してひとり去っていく。これは、残された5歳児といきなり子連れとなった男との物語である。(これって大阪城公園の中で暮らすホームレスと同じような感じか?)  映画はとても無口で、主人公たちももちろんほとんど喋らないし、監督( ピエール・ショレール . . . 本文を読む
コメント

せすん『白い墓』

2009-05-28 22:53:52 | 演劇
 げんだつばさんの仕掛けのいっぱいある台本と、三輪智津子さんのストレートな演出が、実に水と油なのに、なぜか2人の作り出す世界はおもしろい。この2年間、府職劇研の芝居を楽しませてもらったが、今回3度目にして初めて別の作者(高堂要)の作品を見せてもらった。  劇団名も「せすん」と改めての再スタートなのだが、あまりに台本がストレート過ぎて、それをいつもと同じようにストレートな三輪さんの演出で見せるから . . . 本文を読む
コメント

劇団 いちびり一家『鼠のね マダラシグナル』

2009-05-28 21:51:43 | 演劇
 独自のスタイルで不思議な感触の残る音楽劇を作る劇団いちびり一家の最新作。ハーメルンの笛吹き男をモチーフにした作品らしい。だが、見ていてあまりそんな風には思えなかった。そこに拘る必要はないだろう。作、演出の阪上洋光さんは自由な発想でこの迷宮のような芝居を作った。  子供たちのいなくなった町で主婦たちが夕暮れの中、子供たちの姿を追い求める姿を描く。だが、見ていてなんだか切実感がない。彼女たちはまる . . . 本文を読む
コメント

『チルドレン・オブ・ホアンシー』

2009-05-25 22:16:26 | 映画
 1937年上海。大きな戦争がアジアで起こっているのに、対岸の火事としか思わないアメリカから、ひとりのイギリス人青年(ジョナサン・リース・マイヤーズ)がやってきた。本当のことをみんなに知らせるために報道カメラマンとしてこの未開の大地にやってくる。  頭の中ではいろんなことをわかっているつもりだ。だが、それはただの知識でしかない。ハバード出の超エリートで、日本語も中国語も話せる。自分に自信があるし . . . 本文を読む
コメント

『鈍獣』

2009-05-23 08:38:08 | 映画
 前半は面白い。だが、あまりに同じパターンで何の変哲もない話を引っ張るからだんだん退屈してくる。なぜ、凸やん(浅野忠信)は死なないのか、ということをもっと突き詰めてもいいのではないか。話が進展しないことをわざと仕掛けたのだろうが、それだけでは退屈なのだ。どうしてもそうしたいのならば進展しないことを作品の力にするような演出が欲しい。面白い話であっても、くりかえしは飽きるし、どんな不気味さにも人はだん . . . 本文を読む
コメント

売込隊ビーム『星が降り、夜が来て』

2009-05-23 08:06:31 | 演劇
 何かが起きそうで、結局何も起きないまま、というこのなんともいいようもないもどかしさが、最初はとても気味が悪かった。なんでもない話だし、特別何かが起きるとは思わないが、それにしても当たり障りない話が続き、居心地悪い。だが、だんだんそれが何とも言いようのない快感に変わってくる。同じ場所、同じ人たち、同じ日。でも、時間は確実に過ぎていく。次の1年、またさらに次の1年と、時は経つ。そんな中で彼らを巡る状 . . . 本文を読む
コメント

『おと な り』

2009-05-23 07:19:13 | 映画
 最後はあまりに上手く出来過ぎで「ちょっとなぁ」なんて思わないでもないが、映画は夢を語るものだから、あれくらいの幸福を描いたって罰は当たらない。充分彼らは自分たちなりに頑張ってきたのだから、ちゃんとご褒美を与えてあげてもいいと思うのだ。この偶然に対して、彼らが感謝してくれたなら、いい。それは映画ならではの虚構(嘘)なんかではなく、人生を一生懸命に生きた人に対して贈られる宝物なのだ。そんな上手くいく . . . 本文を読む
コメント

『タクシデルミア ある剥製師の遺言』

2009-05-21 19:32:24 | 映画
 見終えてから知った。これはあの『ハックル』のパールフィ・ジョルジ監督の第2作なのだ。どうりでへんてこな映画だと思った。こんな異常な映画を作れる人は世界広しと言えども、2人といまい。あの人だけだ。映画を見ていてこれがハンガリー映画だということが判明した時から、なんだか怪しいなぁ、と思ったが、やはりそうだった。  それより何よりあまりの異常さに目を背けたくなる。あからさまにチンポが出てきて、とんで . . . 本文を読む
コメント

TBSイブニング・ファイブ編『余命1ヶ月の花嫁』

2009-05-21 18:50:53 | その他
 感情の流れがとてもリアルな映画版と比較すると、この書籍版は生活の描写がリアル。そのへんがメディアの違いだろうか。これはTV版のドキュメンタリー『余命1ヶ月の花嫁』を補足するノンフィクションだが、インタビューと、TVの取材班によるノベライズとを合わせたようなものだ。  これを読みながら、廣木監督のアプローチの見事さを改めて実感した。事実の記録であるTV局の取材では描けない真実を映画は示す。だが、 . . . 本文を読む
コメント