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映画・演劇のレビュー

『運び屋』

2019-03-31 20:34:00 | 映画
  イーストウッド『グラントリノ』以来の監督、主演作。もう「あれが最後だ」と思われたのに、ここに至ってもう1本、彼の雄姿が見られるなんて夢のようだ、とみんなが思った。今年一番の期待作。期待を見事に裏切る快作。このB級感覚が半端じゃない。こういう映画を90歳近くになろうとも作れるのだ。この映画の軽さがいい。これが『グラントリノ』の続編のような映画だったならがっかりしただろう。でも、そうじ . . . 本文を読む
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『まく子』

2019-03-31 19:20:47 | 映画
西加奈子の小説の映画化なのだが、この不思議なお話をこんなにも自然なタッチで映画にしたのは驚きだ。阪本順治の『団地』のように日常の中に宇宙人が出てくるお話なのだが、それをファンタジーなのにファンタジーにはしないで、子供たちの目線で彼らの日々のスケッチとして綴っていく。 小学5年の3学期に転校してきた美少女。彼女に心惹かれる少年、というよくある図式なのだが、映画はそんな定番から限りなく遠い。温泉町の . . . 本文を読む
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金蘭会高校『恋の話、宇宙の子供たち』

2019-03-28 20:37:51 | 演劇
先日の3年生引退公演からまだ2週間くらいしか経たないのにもう春公演。しかも今回は2本立て公演を実施。例年のことながらこのスケジュールでよくやるよ、と感心する。この時期学校はとてつもなく忙しいにも関わらず、キンランは(というか、山本先生は)毎年3月に2作品をほぼ連続で上演する。すごいエネルギーだ。 今回、真正面から青春の光と影を描く2作品をぶつけてくる。若いってすごいな、と思う。この1時間ほどの中 . . . 本文を読む
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Fの階『なにごともなかったかのように再び始まるまで』

2019-03-28 19:51:42 | 演劇
映画を巡るお芝居を映画館で公演する。KAVCのシアターで上演する。今は常設で映画を上映しているけど、もともとはここで芝居もしていたから、ここで芝居をするという事は不思議ではない。だけど、作、演出の久野那美さんはとことんこだわってこの空間を演出する。地階に降りていく階段からもう芝居が始まっていく。体験型演劇。マニアックなこだわりは限定1部のパンフレットに凝縮されている。彼女がでっちあげた6本の映画の . . . 本文を読む
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浪花グランドロマン『夜明け前の闇の中で』

2019-03-28 18:02:37 | 演劇
2月の本公演に続いて2ヵ月連続の公演となる。今回はホームグランドである船場ユシェット座(劇団のアトリエ)での上演。作、演出は本阿弥拾得。だから番外公演という感じ。当然の話だが、普段の浦部喜行作品とは全くテイストが違う。キャストもつげともこと本阿弥拾得以外のふたりは外部から呼んだ。NGRの作品というより、完全に本阿弥拾得の趣味によるプロデュース作品だ。 久々の舞台復帰となるみのべなおこが素敵だ。そ . . . 本文を読む
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『君は月夜に光り輝く』

2019-03-24 23:28:45 | 映画
続々と新作を発表しキャリアを重ねる月川翔監督の最新作だ。昨年の『となりの怪物くん』と『響』は素晴らしかった。今、青春映画というフィールドでは断トツで才能を発揮している。この道のトップランナー三木孝浩と人気も実力も二分する勢いだ。そんな彼が今回はなんと正統派の「純愛もの」に挑戦した。発光病という設定はあるけど、これはSFではない。しかも、その設定自体だって別になくても構わないくらいに淡い作りだ。さら . . . 本文を読む
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劇団大阪シニア大学3次生『煙が目にしみる』

2019-03-19 23:27:51 | 演劇
  シニア劇団は元気だ。劇団大阪は彼らを組織して増殖していく。劇団内に、いくつもの集団をシニアで作るつもりか。卒業して終わり、ではなく、そこをスタート点として本格的に劇団として活動していく。さらには年度ごとの集団でも交流する。今回も2次生である豊麗線のメンバーがサポートしている。もちろん、劇団大阪自身のサポートもある。   とても丁寧に作られてある。ただのシニアの発表会で . . . 本文を読む
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『女王陛下のお気に入り』

2019-03-19 23:26:08 | 映画
  この変な映画は「ロブスター」「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」で注目を集めたギリシャの鬼才ヨルゴス・ランティモスの新作だ。先の2先品と比べるとその変さ加減は少し抑え気味だけど、これでもこの手の映画とは思えないほどの異常度だろう。王室を舞台にしたきらびやかな絵巻物を期待したら手痛い目に遭う。まぁ、彼の映画にそんなものを期待するわけはないけど。   . . . 本文を読む
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『さよなら、僕のマンハッタン』

2019-03-19 23:23:58 | 映画
  こういう小さな映画が好きだ。マーク・ウェブは最初の『(500)日のサマー』が素晴らしかったのに、大作『スパイダーマン ホームカミング』を任されてバランス欠いた作品を作ってしまう。でも、あれはあれでチャーミングだったけど、きっと世の中の期待には添わなかったはずだ。『ギフテッド』も悪くはなかったけど、彼にはこういう青春映画が似合う。この自画像のような作品は誰もが感じる「生きていくことの . . . 本文を読む
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『21世紀の女の子』

2019-03-13 21:22:34 | 映画
15人の女性監督たちによる短編連作。5分ほど(8分以内、というしばりらしい)という短さの中で、女の子の微妙な生理のようなものが、浮き彫りにされていく。なまなましいものもあり、けっこうドキドキする映画だ。それぞれのエピソードが説明的ではないから、よくわからないまま、提示されるものもあり、そこもいい。   わかりやすいものなんかいらない。わかりにくいものを、投げ出すようにして、そこにごろ . . . 本文を読む
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プロジェクトKUTO-10『ふるえて眠れ』

2019-03-13 20:50:01 | 演劇
たぶん台本の遅れのせいであろう。役者たちは台本を手にしたまま演じる(芝居をする)というスタイルになったことによって、芝居自体が結果的に内向きのものになる。会話劇なのだが、台本を待つことで動きが制限され、視線も相手に対してではなく、うつむいて言葉を発する場面が多くなる。 テキストを離したなら彼らの関係性がもっと前面に出てくるはずではないか。でも、このもどかしさがなんだか、とても面白い。夫と妻、夫の . . . 本文を読む
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㐧2劇場『AIとまこと -完全版-』

2019-03-13 20:29:54 | 演劇
  AIが人間の姿になってやってくるというバカバカしい設定なのだが、それでは結果的にただのレプリカントじゃないか、と思う。一応彼女はホログラムみたいなもので、実態はない、ということにしているけど、芝居だから役者が演じます。なんだか、デジタルな芝居を目指したはずが、とんでもなくアナログな、アナクロ芝居で、おやおや、と思う。でも、そこがこの芝居のねらいだ。とことん、バカをする。 タイトル . . . 本文を読む
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金蘭会高校演劇部 高3卒業公演『鎖骨に天使が眠っている』

2019-03-13 20:21:47 | 演劇
  こんな難しい芝居を彼女たちは卒業公演として取り上げる。もちろんそれはこのお話が難しいということではない。これを立ち上げることが困難なのだ。これは地味で暗い。女子高生たちがこれをする。淡々としたタッチで緊張を持続させながらそこに微妙なニュアンスを表現できなくては成立しない芝居である。困難を極めることは必至だ。だけど、彼女たちは物怖じせずにこれをやりたい、と手を上げた。(のだろう) . . . 本文を読む
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『盆唄』

2019-03-13 19:35:53 | 映画
帰るべき場所を失ってしまったら、どうするか。自分たちの住んでいた場所に帰れなくなり、地域の祭りも失われる。でも、何とかして、伝統を残したい、引き継ぎたい、という想いが、彼らを被災地からなんとハワイにまで向かわせることになる。映画はその着地点を明確にしないまま、思いもしない方向へと舵を切る。100年の時間がこの唄と踊りを作った。伝えた。だから、それを失くすわけにはいかない。そのための戦いが描かれる。 . . . 本文を読む
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劇団大阪新撰組『短編まつり2 屋根裏EXPO2019』

2019-03-07 22:21:05 | 演劇
  オムニバス・スタイルで作られた長編というのはよくあるけど、これほど見事な作品はめったにない。しかも、ちゃんと3つのお話はそれぞれが別のお題を持ち、もともとは別々の作家によって書かれた独立した短編なのである。しかも、観客からもらった3つのお題(「SNS」「屋根裏」「EXPO」)からお話を発想した。そんな恣意的なものが、なぜかひとつの大きな物語になっているのだ。全体の構成が見事で、その . . . 本文を読む
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