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映画・演劇のレビュー

『新聞記者』

2022-01-31 14:32:08 | 映画
藤井道人監督がネットフリックス映画として新たに作ったもうひとつの『新聞記者』を見た。森友学園問題を正面から扱う意欲作で、全6話約6時間に及ぶ大作で、とても面白かった。最初の2話までを見た時には、これって報道された事実そのままで、今更こういう形で映像化することに意味があるのか、と少し首をひねらざる得なかったけど、当然のことだが、これはただの豪華版再現ドラマには堕さない。吉岡秀隆演じる財務局職員が自殺 . . . 本文を読む
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ルサンチカ『GOOD WAR』

2022-01-31 13:49:41 | 演劇
初めてルサンチカを見に行く予定だったのだが、コロナの蔓延から予定していた公演が変更され、音声だけの上演となった。残念でならないけど、音声だけでの公演っていったいどういうことになるのだろうかと、怖いもの見たさで見に行く。想像もつかない。わけではないけど、そんなことで、公演が可能なのか。 もともとこの集団の作品は普通の演劇とはスタイルを異にしているようだ。チラシにある「扱うテキストは既成戯曲、小説、 . . . 本文を読む
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『フレンチ・ディスパッチ』

2022-01-31 13:01:58 | 映画
ウェス・アンダーソン監督の最新作だ。なんとこれが10本目の記念作品になる。めでたい。毎回彼が何をしてくれるのか興味津々で楽しみだった。そして今回はなんと映画なのに、「雑誌」を作るというまさかの映画に挑戦する。映画で作る雑誌っていったいなんだ、想像もつかない。 そして、出来上がった映画は期待通りの作品である。楽しくて、不思議で、驚きと、興奮の107分間だ。雑誌のページをめくるようにして、映画は展開 . . . 本文を読む
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『ノイズ』

2022-01-31 12:33:31 | 映画
廣木隆一監督がこんな作品を作るなんて、驚きだ。上質のサスペンス・ミステリーに仕上がっていている。先の読めない展開で、2時間強、最後まで一気に引っ張られていく。思いもしない犯人にもあっと驚く。思い起こせば『デスノート』のふたりである。藤原竜也と松山ケンイチ。あの映画の頃と今とではいろんなことがありすぎてこの二人の競演が『デスノート』以来だったなんて、思いもしなかった。さまざまな作品であまりにいろんな . . . 本文を読む
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『春原さんのうた』

2022-01-31 12:07:22 | 映画
東直子の第1歌集「春原さんのリコーダー」の表題歌「転居先不明の判を見つめつつ春原さんの吹くリコーダー」を基にした映画であるらしい。短歌の映画化なんて初めてではないか。たった31音を2時間の映画にしてしまうだなんて、あり得ない挑戦だ。杉田協士監督はその前作でも短歌を題材にしたらしい。僕は東直子の寡黙な小説が大好きで彼女な作品が映画化されるというそれだけの理由でこの映画を見ることにしたのだけど、思いも . . . 本文を読む
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空の驛舎『コクゴのジカン』

2022-01-31 11:24:46 | 演劇
百貨店の従業員食堂兼休憩室が舞台になる。そこにやってくる従業員たちのドラマが描かれる。そこから生じる群像劇、かと思った。だけど、群像劇ではない。彼らは個々にここにいて必要以上には他者と関わらない。静かに時を過ごす。そして、仕事に戻る。会話がないわけではないけど、それが1本のお話としてつながっていくわけではない。では、短編連作スタイルなのか、と言われるとそうでもない。もっと淡いのだ。小さなお話の連鎖 . . . 本文を読む
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山家望『birth』

2022-01-31 10:55:14 | その他
久々に震えるような小説を読んだ。この手の純文学は今は嫌かな、と少し敬遠気味だったけど、気取ったつまらない小説ではなく、これは純粋文学作品(純文学ね)だから、いい。2歳で棄てられて、施設で育った少女が18歳になり、高校を卒業し施設から出なくてはならなくなり、仕方なく自立して暮らし始める。だけど、定職は持てず、臨時職員の採用しかない。20代になり、今も臨時雇用で地域振興課の職員として働いている。あと3 . . . 本文を読む
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『マザー!』

2022-01-28 15:06:09 | 映画
ダーレン・アロノフスキー監督の2017年製作作品で日本では劇場未公開。数年前からレンタルでも配信でも公開されていたけど、なかなか手を出せなかった。空前絶後の愚作とかいう評判をどこかで聞いた。豪華キャスト(ジェニファー・ローレンスとハビエル・バルデムが主人公の夫婦を演じる)でこんなにもおぞましい映画を作れるのは、彼の実績があればこそなんだろうけど、それにしても不快で、僕には何がしたいのかもわからない . . . 本文を読む
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『真夜中乙女戦争』

2022-01-28 09:10:44 | 映画
こんな映画があっていいのだろうか。あまりに説明不足。しかもお話に説得力はない。なんなんだ、これは、と唾棄してもいい。まぁ、取りあえずは主人公の青年(永瀬廉)の見た甘美な悪夢ということで、理解したらいいのだろうけど、それだけのことに113分も付き合わされるのが苦痛という人も多々いるはず。リアルなお話ではないけど、こんな気分になる気持ちはわからないでもない、というところで受け止めれると一応は腹は立たな . . . 本文を読む
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『ユンヒへ』

2022-01-28 08:40:05 | 映画
大阪では、たった3週間、しかも1日1回のみ。その上、昼間の上映で週によって時間もバラバラでの上映というなんだか無茶苦茶なスケジュールで公開された。どうしようかと思ったけど、最終日に見に行ってきた。ウィークデーのお昼前という微妙な時間だったけど、15人くらいお客が入っていた。まだ若い監督が岩井俊二の『love letter』に影響された作品というところに興味を惹かれた。 ユンヒへの自分では出せなか . . . 本文を読む
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乗代雄介『皆のあらばしり』

2022-01-28 08:26:13 | その他
前作『旅する練習』でコロナ禍の旅を描いた乗代雄介の新作は今回も旅のお話。少女と彼女の叔父さんによる徒歩での鹿島までの旅を淡々としたタッチで描いたあの作品はなんだか不思議な無力感に溢れていた。旅の途上で出会う女性との3人旅になったり、再び彼女がいなくなってふたりになったり、サッカーボールでのリフティング、鹿島スタジアム、以前そこでした忘れもの。小さなこだわりの数々に何も意味はない。確固とした目的もな . . . 本文を読む
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『さがす』

2022-01-26 11:06:43 | 映画
『岬の兄妹』の片山慎三監督の商業映画デビュー作だ。強烈で鮮烈なデビューとなった『岬の兄妹』のテイストを保持したまま、商業映画としてエンタメ的な見せ方もちゃんと施した上て、堂々たる2時間の映画を作り上げた。立派だ。伊藤蒼は前作『空白』の万引き少女から、今回は万引きする父親の引き取りに行く娘を演じる。たまたまだろうけど、2作品連続で映画の冒頭でスーパーでの万引きって、どうよ、と思う。笑うところではない . . . 本文を読む
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椅子の階『行き止まりの遁走曲+』

2022-01-26 10:05:23 | 演劇
昨年末にまる1日かけて見た椅子の階の4作品一挙公演(上映)の中で、唯一50分間だけ見落としていた部分の演劇パートを映像で見る機会を頂いた。本編である映像部分はオリジナルの公演を見ているので、これでとりあえず全編を見たことになる。 それにしてもあの日は不思議な体験だった。朝から1本見た後、昼食後、2本目であるこの作品を1時間だけ見て、他の芝居を見に行くという強行スケジュールとなった。戻ってきて残り . . . 本文を読む
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『弟とアンドロイドと僕』

2022-01-26 09:23:50 | 映画
公開後すぐ見に行きたかったのだけど、上映回数が少なく、後回しにしていたら、この週末で上映が終わると告知があり、大急ぎで見に行く。公開3週で上映終了という不当な扱いで、今週はお昼の1回のみの上映だった。阪本順治監督の久々の新作なのに。プライベートな小さな映画なのだが、ふつうの商業映画とは違うアプローチだ。こんなにも地味でシンプルすぎるタイトルと内容には戸惑うばかりだ。 映画の中ではずっと雨が降って . . . 本文を読む
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下鴨車窓『微熱ガーデン』

2022-01-24 11:17:45 | 演劇
2年前に見て感心した作品の再演。作、演出の田辺剛さんはレパートリー・シアターとして今後もいろんなところで、何度でも上演していく予定らしい。自信作を、新作と並行して同じように繰り返し上演していくって、凄い。平田オリザはずっとそうやっているけど、ふつうなかなかできることではない。しかも、台本をアレンジするのではなく、そのまま変えずに上演する。演出は少し変えても、本は変えないみたいなのだ。それって凄い自 . . . 本文を読む
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